投稿者 佐藤雅彦 日時 2000 年 7 月 14 日 21:25:21:
英国『ニューサイエンティスト』誌から興味深い記事3連発
●最新の研究成果から、興味深いものを3つ紹介します。
●最初は、重力が生物の細胞形成に決定的な影響を及ぼしているので、宇宙植民の夢は破綻しそうだというレポート。 しかし遠い銀河の彼方に旅立つときにはヒトの姿形をあきらめて癌組織みたいな格好になるのを覚悟すれば、宇宙旅行が可能になるかも(……なんて、なるわけネエな。 生体の構造が機能を規定しているのだから……。)
ちなみに生物学でも重力による生化学反応への影響は「静電気や熱よりもはるかに微弱」だという理由で、解明が遅れてきたし、学者が無視する傾向があったようです。(はっきりした成果の出にくい領域の研究は敬遠されますからね。) ところが細胞の形態形成に、重力が決定的な影響を及ぼしていることが判った、というのがこの記事のニュース価値だというわけ。
これは2通りの教訓を我々に与えてくれている。 第一に、目下の「阿修羅」への記事投稿でも知ることができるように、地殻変動に、遠くの星からの重力が、無視できない影響を及ぼしていることが、遅まきながら理解され始めていること。 第二はこれと全く逆の観点からですが、重力のような微弱な力でさえ細胞の形態形成に決定的な影響を及ぼしているとすれば、電磁波や放射線などの形で、我々がヒトの進化史において「異常」な水準のエネルギーにさらされているとすれば、長期的な影響が――今は解明できなくても――現われる危険性も高いということ。
●2番目は軽度のアルツハイマー症患者は、運転の危険性だけ見れば、重症患者よりも危険だという話。 でもご安心あれ(?)。 ガキや、ちょっと一杯ひっかけ運転くらいしか危険性はないそうだから。
●3番目は、女の子が体重のことでくよくよ悩むだけで、そうした心理状態が将来「骨そそう症」の引き金になる危険性がある(?)らしい。 となると、エステ産業は「骨そそう症」患者予備軍を大量生産している“製造業”だということになりますな。 しかしご心配なく。 毎日大量に牛乳のんでいれば……骨そそう症で足腰が立たなくなる心配は無くなるかも知れない。 だって、それまで生きられないだろうから【これブラックジョークですから……】。
●業務連絡。 陰謀王子さま、翻訳書についてのお問い合わせと、ついでに尿療法についてのコメントを「空耳の丘8SR208――エイズによるアフリカ人口激減説をどう読むか - 2000/7/12 」に書いたのですが、これメールで配信されていないかも知れません。 あなたのご投稿はいつも拝読し、参考にさせていただいております。(*^_^*)
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●●なんという落胆であろうか!
我々は宇宙植民地の夢をあきらめねばならないかもしれない
http://www.newscientist.com/news/news.jsp?id=ns224734
生きている細胞の内部には“骨格”が存在している。ところがフランスの研究者たちによれば無重力状態ではこの“細胞骨格”は充分に形成されない恐れがあるという。 この知見は、少なくても人工重力の下での宇宙生活という人類の野望をくじく可能性がある。 彼らの研究によれば、これまでの通念とは正反対に、重力が化学反応にも影響を与えているという。
大部分の細胞は、微小管によって形成された細胞骨格を有しているが、細胞骨格はチューブリンというタンパク質から形成された繊維だ。 グルノーブルにあるフランス原子力委員会の研究所に勤めるジェームズ・タボニー らの研究チームは、ほ乳類のチューブリンの冷却溶液と、エネルギーを放出する働きがあるGTP(グアノシン5 '-三リン酸)を体温にまで温め、6分間放置したところ、微小管は、はっきりと帯状の物体を形成したのである。
驚くことに、この帯状物体は、重力と直角の方向に形成され、回転している環境の中では、遠心力と諸学の方向に形成された。 重力が帯状物体の形成に決定的な影響を与えていることを証明するために、この研究チームはチューブリンを欧州宇宙機関(ESA)のロケットに搭載し、13分間にわたって無重力実験を行った。 この決定的な6分間のあいだ、一方のチューブリン標本は微小重力の中で温め、もう一方は遠心分離機で回転させて遠心力を与えた。 遠心力を与えた微小管は通常通りの帯状物体を形成したが、微小重力だけにさらした微小管は無定形に伸びていった。 「この結果から、重力が形態形成の引き金を引いていることが判明した」とタボニーは語る。
「物理学者たちは、こうした研究には価値がないと主張してきました。その理由は重力が極めて弱いもので、分子に与える影響としては静電気や温度にもかなわないし、だから化学反応に重力が影響を及ぼすなんてありえない、というものだったのです」とESAの欧州宇宙技術研究センター(オランダのノールトウィック)の生命科学部長であるディリエ・シュミット氏は語る。 「しかし、そうした通念は間違っていたことが実証されたのです。」策初。」
アラバマ大学(アラバマ州ハンツビル)のマリアン・ルイスの研究によれば、重力は、生きている細胞内部の微小管の形成方向を決める助けをしているらしい。 彼女は宇宙航行中のスペースシャトル内でヒトの白血球を浮遊させた。 「通常、微小管は細胞膜に向かって、長くまっすぐな繊維状の形態を作り出していきます」とルイスはいう。 ところがスペースシャトルの軌道周回飛行の1日目にして、微小管は勝手な方向に伸び出したという。 ただし、この形態形成の攪乱[かくらん]が微小重力のせいなのか振動によって起きたのかは、まだはっきりしていない。
とはいえ、この知見によって、宇宙空間で暮らす人々が免疫機能の低下など数々の健康問題にかかる理由が、説明できるかもしれない。 「きわめて長い時間、つまり何世代ものあいだ、こうした状態が続くのは、われわれにとって健康だと決して言えないでしょうね」とタボニーは語る。
タボニー は、微小管によるこうした帯状物体の形成は、環境中の極めて小さな“ひずみ”がきっかけとなって化学反応が起き、その結果自発的に一定のパターンが“形態形成”されるという「生物学的な自己組織化」を実験手続きで作り出した史上初の模範的事例であると語っている。 これはアラン・チューリングが1950年代、さらに生物物理学者のイリヤ・プリゴジーヌ (ノーベル賞受賞者)ものちに予言していた現dしょうに他ならない。
デボラ・マッケンジー 記者
『ニューサイエンティスト』誌 (New Scientist、2000年7月15日号)
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●●アルツハイマー病と交通事故
http://www.newscientist.com/news/news.jsp?id=ns224740
軽いアルツハイマー病にかかった人々の運転は、10代の青少年や、法定限度を超えない酒量を飲んだ酔っ払いのものと変わりがないことが、カンザス大学医療センター(カンザスシティー) のリチャード・ドゥビンスキーの研究で明らかになった(Neurology, vol 5, p 2205).。 「この危険性は、われわれの社会が(運転を)認めていない他の集団と全く変わらない」と彼は言う。 軽度のアルツハイマー病患者を注意深く観察すると、アルツハイマー病の重症患者よりも最大で7倍も多くの交通事故を引き起こしているという。
『ニューサイエンティスト』誌 (2000年7月15日号)
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●●もっと別のことを心配したら?
http://www.newscientist.com/news/news.jsp?id=ns224739
少女たちがケイト・モス (Kate Moss) のようなやせっぽちのモデルに憧れただけで、文字どおり足腰がガタガタに衰えてしまう危険性があるらしい。
悪質なダイエットや摂食障害が、少女たちの骨を弱めてしまうことは、すでに知られている。 ところが、体重のことをくよくよ心配するだけでも、骨を弱めてしまうホルモンが分泌される恐れがあるのだ。
カナダのバンクーバーにあるブリティッシュ・コロンビア大学のスーザン・バーとジュリリン・プライアーは、摂食障害にかかっていない思春期直前(10−12歳)の少女たち51人に、体重についての悩みがあるかどうかは質問を行った。 そしてこの少女たちの骨に含まれているミネラルの量を低線量のX線を使って測定した。 驚いたことに、体重のことをくよくよ悩んでいる少女たちは、骨密度が平均値よりも顕著に低いことが分かった。
バー博士によれば、骨の充実具合いを決定付けている最大の要因は遺伝であるが、その次に決定的なのは身長だという。 ところが今回、研究者たちは、骨密度の顕著な違いの原因のうちの8%が、こうした悩みからきていることを知ったのである。 この割合は、思春期の少女たちを調べても同じであった。
この数字は圧倒的多数といえるものではないが、50歳以上の女性の3人に1人が骨粗鬆症または骨密度の低下に苦しんでいるという現実を考えれば、たとえ小さな要因でも公衆衛生上、甚大な影響を与えうると、この研究チームは警告している。 「人の一生という尺度で考えれば、少女時代に体重についてくよくよ悩むか悩まないかで、後に骨粗鬆症になるかならないかが決まってくる恐れがある」とバー博士は言う。
英国骨粗鬆症学会の研究者であるニコラ・キーイは。「この研究成果は決定的に重要な問題を提起している」と述べている。 「ストレスが骨粗鬆症の原因になっていることは確かだと思います。」
バーやプライアーの共同研究者でもあるジュディー・マクリーンは、あまりにもクヨクヨしすぎる女子大生の場合、尿中に排出されるコルチゾールの量が異常に多いことが分かっているが、コルチゾールは骨の発達に悪影響を及ぼすストレスホルモンである、と指摘している。 バー博士は、こうした知見を思春期直前の子供にまで当てはめて考えるのは「ちょっと飛躍のしすぎ」かもしれないとしながらも、体重についてくよくよ悩むことで全く同じ悪影響が出てくる可能性があると指摘している。
先進国の大部分の女性は、体重やボーイフレンドや仕事のことでクヨクヨ悩んだ経験があるに違いない。ところが今回の研究によって、こうして悩むこと自体が、新たな“悩みのタネ”を生み出しかねないことが判明した。 女は悩むことで成長するのだろうか? それとも悩まない方が成長するのだろうか??
ニコラ・ジョーンズ
『ニューサイエンティスト』誌(2000年7月15日号)
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