投稿者 佐藤雅彦 日時 2000 年 7 月 12 日 03:00:13:
今や欧米の海底を一匹の妖怪が徘徊しているが……
●WIRED NEWSが物騒なニュースを伝えています。 欧州で作り出されたミュータント・ジャイアントケルプが米国に進出してきたとのこと。 もともとは水族館の観賞用に作出した「見た目は美しい」藻だそうですが、繁殖した一帯を“死の海”に変えてしまうとか。
●いつ日本の海を襲うのか、心配ですねえ。 ひょっとすると、気づいていないだけで、どこかで繁殖が始まっているのかも知れない。
●大阪の「花と緑の博覧会」からちょうど10年たちましたが、あの博覧会の時、「植物検疫がイベント準備の妨げになる」という理由で、検疫を省略したんですよね。 で、そのせいかどうか知らないが――おそらくそのせいなんだろうけど――大阪湾にいつのまにか舶来の毒グモが繁殖していた。 こういう阿呆な原因で、環境破壊の怪物を知らずに持ち込むことだけは、勘弁してほしいものです。
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●●有毒藻、南カリフォルニアへ進出
エンバイロンメント・ニュース・サービス
http://www.hotwired.co.jp/news/news/20000711306.html
2000年7月7日 7:00am PDT カリフォルニア州サンディエゴ――地中海で多くの海洋生物を殺した変異種の藻が、サンディエゴ沖へ進出してきた。この藻は海の動植物を窒息させ、多くの小生物の卵をも殺してしまう毒素を放出する。
移植したアマモの発育を観察していたダイバーたちが6月12日(米国時間)、キャブリロ発電所1号基に近い潟でこの藻を発見した。同発電所は今年、サンディエゴから約30キロメートル北のカリフォルニア州カールズバッド沖で海洋生物の生息環境を回復させることを約束したのだ。
米海洋漁業局の南カリフォルニア環境コーディネーターのロバート・ホフマン氏は「この藻はケルプ[大型の褐藻]の藻場(もば)を破壊し、この海域の動植物相に甚大な危険を与える」と述べている。
『Caulerpa taxifolia』という名のこの藻は、地中海のフランス、スペイン、モナコ、イタリア各国沖で、約40平方キロメートル以上にもおよぶ面積の海底環境を破壊した。1980年代に同水域でこの藻の群生区域がいくつか発見されたが、即座に駆除されなかったために、急速に増え、広がった。オーストラリアのシドニー沖にも見つかっている。
南米・北米沿岸でこの藻が発見されたのは今回が初めて。これまでのところ藻が確認されたのはアグア・ヘディオンダ潟のみだが、最大の群生は約20メートル×10メートルもの広さに広がっている。ほかにもっと小さな9つの群生区域も発見されている。科学者たちは藻を駆除するため迅速に行動している。
天然のCaulerpa taxifoliaは、カリブ海、インド洋、太平洋の熱帯海域に自生する種だが、急速に増えているこの有毒な変種――進出する先々で環境を荒らし、生物多様性を著しく損なっている亜種――は、人間の介入によってできたものだと考えられている。
研究者たちの考えでは、この有毒藻はドイツのシュトゥットガルト動物園の水族館で、生物学者たちが水槽用植物として開発したものだという。他の水族館も、この鮮やかな緑色をしたシダのような藻を、人工の海底を覆うものとして採用した。1984年、どうやらモナコ海洋学博物館がこの藻をいくらか地中海に投棄したらしく、1992年には藻の生息面積は4平方キロメートルになり、1999年にはそれが40平方キロメートル以上まで広がった。
「見かけは美しい」とサンディエゴにあるカリフォルニア地域水質管理委員会の環境専門家、グレッグ・ピーターズ氏は話す。「おそらく地中海の人々はそれにだまされて即座に行動を起こさなかったのだ」
この藻は海底を覆い、水中の酸素を消費し尽くして、ほとんどの海洋生物を追い払ってしまう。養魚場や貝類の養殖場の海底を覆って、魚などが海底の泥の中にいる無脊椎動物を食べられないようにしてしまうこともある。サンゴ、海綿動物、海草は、この藻の進出によってすべて呑み込まれてしまう。その毒素はほとんどの海洋食物連鎖の底辺をなす海洋微生物を殺し、海洋動物の卵にも悪影響を及ぼす。
1999年、クリントン米大統領は連邦法のもと、この藻の輸入と販売を禁止した。しかし、それでも愛好家は飼育業者から藻を購入することが可能だと、ホフマン氏は警告する。こうした愛好家が水槽を掃除する際、海水とともに中身を下水管に捨てれば、藻は海にまで広がることになる。
こうした脅威に危機感を抱いた約100名の環境科学者が政府に書簡を送り、それがクリントン大統領がこの藻に対する大統領令を出すきっかけになった。1998年のブルース・バビット米内務長官宛ての書簡で科学者たちは、この環境適応力の強い藻は、水深100メートルの海でも、海底が岩であろうと砂であろうと、周囲を囲まれた入り江や潟でも繁茂する可能性がある、と警告している。
また科学者たちは次のように記している。「この生物の地中海への放出を許したことは環境管理上の失敗であり、きわめて貴重な海洋生態系が、劇的な変化と生物の多様性の喪失という脅威にさらされることになった」
いよいよCaulerpaは米国にやってきた。当局は一刻を争って藻の拡散を防がなければならない。
「沿岸部での漁業あるいは娯楽としての釣りにも深刻な影響を及ぼすことになる」とホフマン氏。「この生物は急速に繁殖する」
カリフォルニア州の潟に繁茂した群生は、単純に掘り取ればすむというものではない。この藻は各々の小さな一片が新しい全体を再生する『砕片分離』という増殖法を繰り返して広がっている。各々の茎は3メートル近くに成長し、最高で200枚の葉状体をつける。岸に打ち上げられても10日間も死なず、満潮時あるいは雨水に押し流されて海へ戻れば、生き返り、再生する。
アグア・ヘディオンダ潟でこの藻を発見した海洋生物学者のレーチェル・ウッドフィールド氏によれば、網、釣針、船のいかりといった漁具がこの藻の拡散を助けているという。「分離した藻の小さな一片でさえも新しく全体を再生する。物理的手法で藻を一掃することはほぼ不可能に近い」
連邦、州、民間の専門家はこの藻を駆除するためのさまざまな化学薬品をテストしている。藻が群生している9つの小さな区域を防水シートで覆い、塩素や硫酸銅を使ってシートの下のすべての生物を殺してしまうという計画も立てている。
より大きな群生は対応がもっと困難かもしれないが、ホフマン氏によれば、この科学者チームは今後2週間以内にすべての藻の駆除作業にかかる考えだ。一方、藻が侵入した潟の2000平方メートルほどの区域は、立ち入り禁止のロープ が張られ、24時間監視されている。
カリフォルニア沿岸でこの藻を発見した人は、カリフォルニア州漁狩猟局(Department of Fish and Game)に通報するよう要請されている。
「漁業、レジャー、そして絶滅危機種にかなりの影響をおよぼすおそれがある。まったく憂慮すべきニュースだ」とホフマン氏は語った。
(記事全文と画像はエンバイロンメント・ニュース・サービスサイトへ)
http://www.ens.lycos.com/ens/jul2000/2000L-07-06-06.html
[日本語版:多々良和臣/岩坂 彰]
日本語版関連記事
・21世紀には生物種の3分の2が絶滅する
http://www.hotwired.co.jp/news/news/Technology/story/2851.html
WIRED NEWS原文(English)
http://www.wired.com/news/technology/0,1282,37444,00.html
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