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Compiled: Tue May 16 11:00:42 JST 2000
英国の通信傍受法修正案早分かり
(The Three Minute Guide to RIPより: 著者の許可を得ない無断翻訳)
こんな状況を想像してみてください。ある真っ暗な夜、ATMでいくばくかの現金を下ろそうとしています。突然、背後に制服を着た人影に気が付きました。あわてて暗証番号を打ち間違えてしまいます。 ATMが再入力を要求し、その通りにして ―― お金を引き出すことができました。
すると、例の人影があなたの肩に手をかけました。あなたは彼が警官であることに気が付きました。大きな無愛想な警官です。彼はあなたがよからぬことを企んでいると疑うだけの理由がある、暗証番号を言ってみろと言います。あなたは拒否するか、混乱して思い出せなかったとします。
なにが起きたかわからないうちに、あなたは逮捕され、判事の前に立っています。容疑は? 正式に認められた人に暗証番号を言わなかったということ。思い出せなかったと言ってもどうにもなりません。そうではないということを証明できなければ、あなたがよからぬことをたくらんでいるとみなされるのです。あなたは数年間の刑務所暮しということになります。
信じられませんか? この自由な民主主義の社会でそんなことが? よろしい。ひとつ、ニュースを聞かせてあげましょう。
先週、新しい労働党の内務大臣ジャック・ストローが、ある法案を下院に提出しました。それはデータの暗号化に関して、上の例と似たような状況を生みかねないものです。暗証番号は、電子メールの、あるいはハードディスクの極秘ファイルをのぞかれないように守る暗号鍵のようなものです。「調査権法案(The Regulation of Investigatory Powers Bill)」はミスター・ストローにいつでもデータの暗号解読ができる力を与えるものです。暗号鍵を渡さなければ、最高2年の禁固刑に値する犯罪行為となり、犯罪を計画しているものとみなされます。疑われた人は、鍵を持っていないことを何とかして証明しなければなりません。どこかに置き忘れたとか忘れてしまったと言っても許してはもらえないのです。
そしてもし、この法律による誤判決について、公に訴えようと決心すると、「リベラルジャック」は彼の袖に隠したもう一枚のカードを出してきて ―― あなたは5年以上、ムショ暮しをすることになりかねないのです!
ところで、幼児性愛者と犯罪者がひどい写真をディスクや電子メールで本当に持っていれば、当然だまっているでしょう。そして、解読の要求を拒否したという理由で2年の刑務所送りになります。でも、これは本当に重大な犯罪で5年から10年の刑務所暮しをするより割のいいやりかたです。
まだあります。
この法案は、イギリスのインターネットプロバイダーに、ストロー大臣と彼が正式に認めたイヌどもに、加入者の通信を追跡する装置を設置することを要求します。つまり、送信された電子メールはすべて、そして受け取った返信、および訪問したすべてのウェブサイト、Amazonで買ったすべての本、購入したすべての航空券、ダウンロードしたソフトの数々が追跡されるのです。そしてもし、あなたが通信を暗号化していたら ―― そう、前述の通りです。
いったいどうすれば、内務大臣がこんなひどいプライバシーの侵害を正当化できるのでしょうか。法案のセクション20にはこう書いてあります。国家の保安 (言うまでもなく、これはきちんと定義されてません)、犯罪の防止・発見、騒乱の防止、公衆の安全、公衆衛生の保全。
あーあ、そしてミスター・ストローは大英帝国の経済的安寧のために、合法的に電子のノゾキがができるのです。
最後のことを合法化すれば、イギリスで電子商取引を始めようかと考えている外国の企業がどうするかを考えてもみてください。そして、2002年までにイギリスをヨーロッパで最も電子親和性の高い国にするという公式な方針についてよく考えてみてください。
ところで、アイルランド政府は、インターネットのトラフィックを覗くことを不法化するという立法を進めています。するとこの法案が法令集に載れば、わたしたちはアイルランドのISPに移動することもできるでしょう。
ストロー大臣がそんなことをするのだろうかと疑問に思います。
Reproduced with permission from the author.
john.naughton@observer.co.uk
For links and background see John's footnotes.
For STAND's more detailed (read: geeky) analysis, see our RIP Notes