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パリ(ロイター) 経済協力開発機構(OECD)は20日までに、各国の政府に許可された遺伝子
組み替え作物は、他の作物と同じ様に安全性には問題はない、とする2種類の報告書を、インター
ネットを通じて発表した。一方、報告書は、2世代目以降の遺伝子組み替え作物の状態は1世代目よ
りも複雑、と指摘している。報告書は7月の九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)に提出されると
いう。
この報告書は、昨年のG8サミット(主要国首脳会議)が、「遺伝子組み替え作物のバイオテクノ
ロジー(生物工学)や人体への影響に関しては今後の研究が必要」として、OECDに研究委託したこと
を受けて、2つの研究グループが作成したもの。研究の監督に当たったピーター・ケアンズ氏は16
日、ロイター通信の取材に対して、「報告書を作成した専門家は、各国によって許可された遺伝子組
み替え作物は大部分において安全、と自信を持っている」と話した。
2世代目以降の対策も必要
一方で、ケアンズ氏は、「現在世界に出回っているのは1世代目の遺伝子組み替え作物だが、次世
代の遺伝子組み替え作物はさらに進化するはず」と警告する。同氏は「OECDの報告書でも、2世代目
以降の作物はさらに複雑、と指摘している。政策担当者は今後、次世代作物をどうするか考慮する必
要がある」と話している。
また、遺伝子操作が環境に与える影響について述べた報告書には、予防的措置の問題についても言
及している、という。フランス政府が最近、誤って遺伝子操作された菜種の種をまいたとして、数百
ヘクタールの農地を破壊する命令を下したことを機に、予防的措置の問題が議題として浮上してい
る。
「OECD諸国の間でも、予防的措置に関する意識の差は大きいが、遺伝子操作に対する警戒がある
からこそ、安全性の評価システムが定着してきた」とケアンズ氏は指摘している。「OECD諸国のほと
んどが、すでになんらかの評価システムを持っているため、許可のない人間が遺伝子組み替え作物を
市場に出すことはできなくなった。これ自体が予防的なアプローチだ」とケアンズ氏は話している。
市民との対話は積極的に
さらに、報告書は、各国政府は遺伝子操作された作物の調査や評価に当たって、もっと積極的に市
民の参加や対話を促すべき、と注意を喚起している。ケアンズ氏も、各国の政府は遺伝子組替え作物
には綿密な調査・評価を行っても、市民にその経過や結果を説明することには慣れていない、と言
う。同氏は「政策担当者にとっては、うまく市民とコミュニケーションを取ることが、今後の課題
だ」と話している。