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難燃剤として家具や家電製品に使われている「臭素化難燃剤」の健康被害が世界的に懸念されてい
るが、ハマチなど近海魚が高い濃度の臭素化難燃剤で汚染され、魚を多く食べる人の母乳にも含まれ
ていることが、太田壮一・摂南大薬学部助教授らの研究で分かった。二十日から札幌市で始まる日本
環境化学会で発表される。
優れた難燃剤として世界で年間五万トン以上生産されている臭化ビフェニルエーテルは、動物実験
では、甲状腺(せん)ホルモンの働きをかく乱したり、胎児期や新生児期に摂取すると知能低下をも
たらす――などが明らかになっており、環境汚染対策が求められそうだ。
太田助教授らは、市販魚介類と、初産婦六人の母乳の汚染実態を調査。最も高濃度に蓄積していた
のは近海のハマチで、一グラム当たり千六百三十ピコ・グラム(ピコは一兆分の一)。次いでブリや
サケが高く、遠洋のマグロ(二十一・五ピコ・グラム)は低かった。魚類の汚染はダイオキシン類の
濃度の百〜二百倍に達していた。
また、魚を週四日以上食べる人の母乳に含まれる同物質は、一グラム当たり千百六十〜千四百八十
ピコ・グラムで、週一、二回しか食べない人の母乳(約七百ピコ・グラム)に比べて高かった。
太田助教授は「この濃度でどんな影響があるのかはわからないが、臭素化難燃剤は身の回りのあら
ゆる所に大量に使われており、早急に対策を考える必要がある」と話している。環境庁では、臭化ビ
フェニル類を「環境ホルモン作用の疑いがある物質」に登録し、「健康影響を調査中」(環境リスク
評価室)としている。