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熱波が北米のIT産業拠点を襲う
●インターネットは、元来、核戦争による軍事通信寸断の危険性を克服する方法として考案されたものでした。 つまり冷戦のさなかに、熱戦を想定して開発された通信技術だったわけです。 しかし本当に核戦争になれば、核爆発で強力な電磁パルスが発生し、金属線で構成された電気回路の内部には瞬間的に高電圧が生じるので、あらゆる電気回路は焼けこげてしまう。 そういうわけで金属線を使わない通信伝導手段、つまり光ケーブル通信の開発に軍事予算が注ぎ込まれました。 こうした事情で80年代には日本のガラス会社が「国防上の理由」で米国政府の発注事業から閉め出されたりもしたものでした。
●IT技術の原動力である“電気”は、大部分が、火を燃やしたり核分裂を起こして「熱エネルギー」を作り、この熱で蒸気を起こしてタービンを回し、タービンに連結しているコイルを回転させて「電気エネルギー」を作るという段取りを踏んでいます。 つまり「熱エネルギー → 運動エネルギー → 電気エネルギー」という、すこぶる効率の悪い方法に頼っているわけ。 しかも僻地に発電所を建てて、そこで起こした電気を消費地(都市部)まで引っ張ってくると、電線の中に高電圧の電気を通すわけなので、かなりの「電気エネルギー」は送電の途中で「熱エネルギー」に変わり、逃げて行ってしまいます。 つまり、現在のような発電・送電体制のもとでは、電気の消費量が増えるほど、それに輪をかけて熱の生産量と環境放出量が増えて、結果的に「地球の温暖化」を助長するというわけ。
●社会経済構造をIT技術中心へと改造していけば「省エネ社会」が実現してエネルギー問題や環境汚染問題が解決できる、などと“バラ色の妄想”を語る痴呆症の連中もいるようですが、「オフィス・オートメーション」の進展によって「ペーパーレス社会」が来る、などと言っていたほんの20年ばかり前の“予言”がどうなっているか、現実を眺めてみれば、妄想を彩る“バラ色”が単なる酒酔いによるものであることは明らかでしょう。
●そのIT革命の拠点として宣伝されてきた北米西海岸の産業地帯が、猛烈な熱波に襲われ、深刻な危機感を持つに至っています。 熱核爆弾や熱戦を克服できると喧伝されてきたIT社会のインフラが、ちょっとした熱波には脆[もろ]かったというのは、道徳の教科書に出てくるイソップ童話みたいで、皮肉な教訓をまぶしたエェ話やなぃかぃな〜。
●以下は WIRED NEWS日本版に掲載された記事の引用です。
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北カリフォルニアのハイテク地域、熱波による停電で被害
http://www.hotwired.co.jp/news/news/20000619303.html
Y. Peter Kang
2000年6月15日 12:40pm PDT シリコンバレーと『マルチメディア・ガルチ(峡谷)』はテクノロジー界の2大「ホットスポット」かもしれないが、実際の熱にはあまり強くないようだ。
サンフランシスコ、ベイエリアの一部が14日(米国時間)、停電に見舞われた。当地はこの日、前日に続いて厳しい熱波に見舞われており、送電網の電力供給が需要に追いつかなかったのだ。
サンフランシスコでは同日、摂氏39.4度という史上最高記録に並んだ。80キロ南のサンノゼでは温度計の表示が42.8度まで跳ね上がり、史上最高記録を更新した。
カリフォルニア州の電力システム運営の大部分を監督している非営利団体カリフォルニア・インディペンデント・システム・オペレーター( http://www.caiso.com/ )の発表では、米パシフィック・ガス&エレクトリック(PG&E) 社が停電の拡大を避けようと、サンフランシスコの東部と南部の利用者へのサービスを順番に止めたという。
停電に見舞われた地域の1つ、サンフランシスコのサウス・オブ・マーケット地区にあるマルチメディア・ガルチには、多数のハイテク企業が集中している。さらに南にあるシリコンバレーの複数の企業に対し、PG&E社は、自発的に電力消費量を減らすよう依頼する要請書を多数発行した。
翌15日も暑かったが、気温はやや下がった。それでもなお、懸念は続く――インターネットのインフラはこの熱に耐えられるのだろうか?
「ベイエリアはここ10年間で、驚異的な成長と拡大を目の当たりにしている」とPG&E社のトム・コリンズ氏は言う。「シリコンバレーからサンフランシスコのイーストベイにかけて、人口と企業数は驚異的な成長を遂げており、それに並行して電力消費も記録的な伸びを見せている」
ネットインフラの専門家で『コンピュータ関連のリスク』の著者、ピーター・ニューマン氏は、14日の電力供給不足を起こした移動性の停電が、ネットインフラにおける情報の流れに大きな影響を与えることはないだろうと思う、と語る。ただし、余剰電力の欠如が原因で重大な損害が生じる可能性はあるという。
「コンピューター・システムは今もなお脆弱かもしれない。非常用発電機を用意している人々も若干いるが、彼らにしても長期間の使用を想定して準備をしているわけではない」
ニューマン氏はさらに、「規制撤廃後の送電網には余剰電力がほとんどない」と付け加えた。「今後、広範囲にわたる停電が起これば、2年前の大停電のときのような深刻な影響があるかもしれない」
ニューマン氏が言及した1998年の事故では、副発電所での過失によってベイエリアの37万5000戸の利用者が停電の被害を受けた。
米チェリーヒル・ソフトウェア社のダニエル・ノートン社長は、14日の停電はベイエリアのハイテク企業にとって警鐘となるはずだ、と語る。
「今回の出来事は、人々に信頼性の高いバックアップシステムや対処法の重要性を思い出させ、また現行システムがいかなる危険をはらんでいるかを思い出させるだろう」
ノートン社長の予想では、たいていの企業は、24時間以上続く停電に対処できるような準備をしておらず、また高いコストを嫌って、このようなトラブルを想定した対処法も導入していないという。
「バックアップシステムを複数箇所に配置している企業でさえ、個々の欠陥を見落としてスムーズな送電を妨げてしまうことが多い。これは、電子メール、ウェブ、データベースなどのサービスが、複数のシステムやネットワークを経由して提供される複雑なネットワークにとっては、とりわけ困難な問題だ」とノートン社長。
PG&E社は、14日の停電はあくまで前例のない熱波によって起こされた一時的な混乱だと主張している。同社は、この種の状況に備えた大規模な復旧プランを用意していると述べた。
同社のコリンズ氏によれば、PG&E社がハイテク企業に対し、従業員を帰宅させるよう要請したという一部報道は事実ではなく、ただ各社の電力使用を抑制するよう依頼しただけだという。
「顧客に電力使用の抑制を依頼するという、われわれが採った方法は、あくまで緊急のものだ。途方もない熱波が高負荷を引き起こしたためだ」
コリンズ氏はさらに、PG&E社は各企業に対し、使用していないコンピューターと電気機器の電源を切り、エアコンを控えめにして、「節約に協力する」よう要請したと付け加えた。
コリンズ氏によれば、ほとんどの企業がこれに応じ、また顧客企業の多くはPG&E社との間で、14日の熱波のような出来事が起きた場合、電力使用の制限に応じれば割引サービスを受けられる、という契約を交わしているという。
マルチメディア・ガルチに本拠を置く、男性のライフスタイルを提唱するウェブサイトを運営している米ザ・マン・コム(TheMan.com)社のサイトサポート・エンジニア、ショーン・グールド氏は、同社は約1時間にわたって停電状態だったと語る。
「停電はいわばゲームみたいなものだ。電気がないと、うちはもうメチャクチャだった。停電の間どこにもログインできず、やっと電気が戻った時も、(停電のせいで)ネットワークに問題が発生した」とグールド氏。
しかしながら、ザ・マン・コム社が14日に掲載するはずだった内容を見たいというネットサーファーがいれば、現在も同サイトを訪問することが可能だ、とグールド氏は語る。
「メインサーバーは、(中断されていない電力供給によって)稼動中だ」とグールド氏。
機能停止に追い込まれる可能性が最も高いのは、電力供給を複数持たない――少なくとも基本サーバーだけでも複数の供給があれば望ましいのだが――企業だ、と語るのは、ベイエリアにあるインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)のネットワーク・アナリスト、ジョエル・ベーカー氏。
「オフサイトのバックアップ設備や自家発電装置を持たない企業は、機能が停止する」とベイカー氏。「しかし(われわれの)対顧客サービスは、バッテリーと発電機によるバックアップ電力を備えた設備に収容されているので、影響を受けないはずだ」
ネットインフラ専門家のニューマン氏は、現在のインフラは長期間に及ぶ停電に対処できるように正しく準備されていないと指摘し、多くのシステムが崩壊する可能性があると述べた。
「移動性の停電は、起こりうる問題の一部にすぎない。『重要インフラの保護に関する大統領委員会』は、電力と通信(を含む)すべてのインフラがどれほど脆弱であるかを指摘している」とニューマン氏は述べた。
同委員会はネットインフラの弱点として、ハッカーの攻撃に加え、停電を挙げている。
[日本語版:高森郁哉/高橋朋子]
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WIRED NEWS原文(English)
http://www.wired.com/news/technology/0,1282,37012,00.html