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(WebMD) インターネットの使いすぎは、ギャンブルと共通した危険がある――そんな研究
結果が数多く報告されている。いずれも、社会からの孤独感、うつ状態、仕事や勉強への怠慢、と
いった症状につながる可能性があるためだ。「インターネット中毒」になると、結婚生活やキャリアが
破綻しかねないというから、ご用心を。
まずは、あなたの危険度をチェックしてみよう。きょうは何時間スクリーンに向かっているだろう
か。マウスやキーボードを使う時間が長くなったか。インターネットのほかに、やることがないか。
心理学者によれば、こうした状況をよく考えてみると、自分の精神状態がよくわかるという。
昨年8月、米国心理学協会の総会で発表された調査によると、インターネット・ユーザーの6パー
セントは「ネット中毒」だった。つまり、オンラインする前には緊張感を持ち、インターネットにつな
ぐと落ち着き、気分にムラがあり、どんちゃん騒ぎをする、といった行動がみられるという。
調査を行ったのは、ペンシルベニア州のオンライン中毒センター理事長、キムベリー・S・ヤング
博士。ポルノサイトを見る人が多い現状について、ヤング博士はこうため息をこぼす。「ピューリタン
のわが国で、検閲されていない表現物がこれほど氾濫しているのは、歴史上初めてだ。ちょっとキー
ボードを打っただけで、きわめていかがわしいサイトにアクセスできるし、うっかり入ってしまうこ
ともあるからだ。いったん見てしまえば、そこを抜け出すのは難しい」。
ポルノサイトへのアクセスで、離婚訴訟が不利に
中西部出身の中年男性で、完全主義的な強迫性人格異常タイプの仕事中毒だと自称するダン・ムー
アさん(仮名)は、「インターネットで人生をめちゃくちゃにされた」と語る。現在、9年間連れ添っ
た妻との離婚手続き中で、ダンさんがセックス・サイトにはまっているという理由から、2人の子供
に面会する権利を拒否されている。妻の主張によれば、ダンさんが定期的にログ・オンしている「ソフ
トポルノ」は未成年者を使っているからだ。「私が子供ポルノに夢中になっていると、妻は思い込んで
いる。2人の子供たちにみだらな行為をしているとすら、訴えてきた」(ダンさん)という状況だ。
ダンさんは妻の主張を真っ向から否定するが、ポルノサイトには女性の写真がごまんとあるため、
年齢を特定するのが不可能だと認める。「山ほとあるアダルト・ビデオを、無料で見られるようなも
の。つい、そそられてしまう」とダンさん。
最近になって、ダンさんはインターネット中毒の専門家の治療を受け始めた。抗うつ剤を服用し、
家からパソコンとモデムも取り外した。「インターネットがいかに、私の人生に影響を与えていたかが
わかった。もう、パソコンを壊して窓から投げ捨てたいくらいだった。今では、自分自身や家族を理
解したい気持ちでいっぱいだ」という。
インターネットではヒーローになれる?
インターネット中毒の引き金になるのは、ポルノだけではない。アリゾナ州の中毒患者カウンセ
ラー、ポール・ガラント氏によれば、新たな自分のアイデンティティーを作り出すことに魅せられる
人もいれば、オンラインでギャンブルをしたり、オークションや株取引にはまる人もいる。「本当の人
生はつまらなくても、インターネットではヒーローになれるからだ」とガラント氏。
インターネットでは無限に情報を得られるため、素朴な好奇心ですら、のめり込む原因となる。「例えば、おもしろいサイトを見つけると、さらに別のすばらしいサイトにリンクしている。もっと知
りたくなり、かなりの情報を得たら6時間も経っていたりする」(ガラント氏)。
インターネットが精神面に与える影響について、あらゆる角度から専門家は議論している。ニュー
メディアの擁護派は、社会的恩恵のほうが危険よりも大きいと言う。例えば、学会誌「アメリカン・サ
イコロジスト」2000年2月号によれば、無記名で病気の症状について話し合うことで、安心感を得
られる人は多い。
その一方で、インターネットの使いすぎと重い精神障害には強い関連がある、とした研究もある。
「情緒障害ジャーナル」2000年3月号によると、ダンさんのようにインターネットで人生が混乱し
た20人をインタビューしたところ、ほぼ全員がそううつ病など重症な精神疾患と診断された。睡眠
時間を削って、職場以外から週30時間以上インターネットにつないでいる人も多かった。
ネット接続時間と交際範囲は反比例
ところで、インターネットが精神疾患につながるのか、精神疾患の患者がインターネットにはまる
のか。1998年の調査では、これまで家でインターネットにアクセスできなかった人に、家でネッ
トに接続できるようにしたところ、ネットに接続している時間が長くなるほど、家族と過ごす時間は
減り、交際範囲も狭くなり、結果的にうつ状態や孤独を感じるようになったという。「中毒的な自覚症
状はなくても、インターネットにははまりやすいものだ」とヤング博士は話す。
インターネットの乱用を認める心理学者の間でも、「中毒」という言葉をためらう人は多い。フロリ
ダ大学の心理学者、ネイサン・シャピラ博士は「インターネット・マニア」という用語を使っている
が、どんな呼称を使うのであれ、この問題にはもっと注意をする必要がある、と主張する。「ハイテク
には多額の投資が行われているが、それが人間に与える影響については理解が深まっていない。それ
では問題を先送りするだけだ」とシャピラ博士は警告している。