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【ワシントン12日=大塚隆一】
世界保健機関(WHO)は十二日、抗生物質などの薬剤が効かない病原体が世界中で次々と出現していると警告する報告書を発表した。
日本を含む先進国では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの耐性菌による院内感染が深刻な問題になっているが、報告書は途上国でも薬剤耐性を持つマラリア、赤痢、結核などの病原体が広まっていると指摘。国際的な対策を急がなければ、「抗生物質が生まれる前の時代に逆戻りしかねない」と警鐘を鳴らしている。
報告書によると、年間百万人以上の命を奪っているマラリアの場合、感染者が多い国のうち約80%で、代表的な治療薬だったクロロキンがすでに効かなくなっている。また、多くの細菌性疾患の治療に使われてきた抗生物質ペニシリンの威力も薄れ始め、東南アジアでは淋(りん)病の98%がペニシリンで治すことができなくなっている。
先進国で耐性菌がはびこる背景には抗生物質の使い過ぎがあるが、途上国では逆に、薬剤不足で治療が中途半端になることが、耐性菌を生み出す大きな要因になっているという。
(6月13日00:31)