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<プルトニウム>スクラップに混入し溶解 英でずさん管理(毎日新聞)
英国の鉄鋼会社で、金属スクラップに核物質のプルトニウムが誤って混入し、そのまま溶解されていたことが9日、分かった。英国環境庁は、環境汚染や健康への影響はなかったとしているが、金属スクラップへのプルトニウム混入の報告は世界で初めて。英国では、原発に使うウラン燃料棒がスクラップ置き場から見つかる事例もあった。日本では製鉄所で、搬入金属スクラップから放射性物質が相次いで発見されており、放射性物質の管理のずさんさが世界的な問題であることが浮き彫りになった。
英国環境庁のホームぺージなどによると、プルトニウムの混入・溶解があったのは、英国中部のシェフィールド市にある鉄鋼会社。今年3月31日、ステンレス鋼の溶解作業を行ってサンプル検査をしたところ、プルトニウムと、その崩壊で生じるアメリシウムが検出された。工場敷地外の被ばく線量は1・3マイクロシーベルトト以下で、同国の年間被ばく限度(1000マイクロシーベルト、日本も同じ)よりも低いという。
プルトニウムは原子炉の中で生成し、化学反応による再処理で抽出される放射性物質。吸入した場合は、微量でも肺がんの原因となりうる。
同庁はどこから混入したか原因を調べているが、登録済みのプルトニウムの紛失はない。汚染した溶解物質は、工場内に置かれ、処分方法を検討中という。
一方、3月24日には、英国南部のスタッフォードシャー州のスクラップ業者の金属置き場から、原子炉に入れて燃やすウラン燃料棒が発見された。
スクラップへの放射性物質の混入例は、98年にスペインの製鉄所で溶解され、微粒子状になって放射性物質が拡散▽今年2月にタイで強い放射性物質の容器を開けたスクラップ業者3人が死亡――などがある。
日本鉄鋼連盟は98年から放射性物質の検知体制を強化。今年4月に和歌山市で、5月に神戸市で、いずれも製鉄所の搬入金属スクラップから放射性物質が発見された。 【大島 秀利】
京都大原子炉実験所の小林圭二・助手(原子核工学)の話 プルトニウムが検出できるような量で民間に出回った例は聞いたことがなく、大変異常な事態だ。放射性物質が使われ始めた当初に、規制が緩かったために安易に流通して、今になって手を焼いている点で日本の出来事と共通している。日本でもさらに検知体制を整えることが大切だ。
[毎日新聞6月10日] ( 2000-06-10-19:32 )