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愛知県豊明市の藤田保健衛生大学病院で七日、脳死からの臓器提供の意思を示す意思表示カードを持った同県内の六十代の女性患者が脳死と判定された。日本臓器移植ネットワーク(本部・東京)は移植患者の選定に入った。
しかし同病院は、一回目の脳死判定作業を二度も中断、三日間にわたり、一回目の判定を三回も繰り返すという不手際があった。中断は、治療のために使用した筋弛緩薬の影響が残っていたためだった。“迷走”の背景には、厚生省が昨年まとめた「脳死判定マニュアル」の記述が具体的でなく、薬剤の脳死判定への影響に関する判断が、現場の医師にまかされている現状があり、専門家からも「死の判定を巡る作業で、違いがあるのは好ましくない。厚生省は具体的な統一手順、指標を示すべきだ」との指摘があがっている。
この女性患者は脳卒中で同病院に入院。再度の脳動脈りゅう破裂を防ぐため、筋弛緩薬が投与された。容体が悪化し、一度目の脳死判定を五日午前九時から実施した。「筋弛緩薬の投与から十九時間たっており、その影響は消えていると判断した」(神野哲夫救命救急センター長)という。しかし、判定中の検査で影響が残っていることがわかり中断された。同日午後六時過ぎからの二度目の判定では、判定前の刺激検査では消失していたが、判定中に影響が残っていることがわかり中止された。
神野センター長は七日夜の記者会見で「最初に十分に薬物の影響を検査すべきで、今では順序が逆だったと思う」と述べた。
結局、この女性間はは六日深夜から七日昼過ぎまでに実施した二度の判定で、脳死と確認された。
厚生省の「脳死判定マニュアル」には、筋弛緩薬などを投与した事例では、その薬剤の影響が消える時間を見計らって判定に入るのが「望ましい」、などとしているが、具体的な薬剤名、基準となる濃度、効果消失までの時間の目安などは記述されておらず、病院により判断に差が出ることが専門家の間で懸念されていた。この点に関し、厚生省エイズ疾病対策課の麦谷真里課長は七日の記者会見で「具体的事項すべてをマニュアルに書くことは不可能。現場の判断にまかせている。今後の専門家による検証にゆだねたい」と述べるにとどまった。
今回、脳死移植が実施されれば、臓器移植法にもとづく移植は八例目となる。