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●ZDNet日本語版から、最近掲載された興味深い記事を転載して紹介します。
●NASDAQの株価暴落以来、米国ではインターネット関連産業についてクールな観察を行なう記事が増えているようです。しかし日本では、「携帯電話でIT革命」という阿呆なスローガンをいまだに信奉していて、その分別のなさを見るにつけ、願望と現実の見境がつかなくなった厨房クン的な産業界とタイコ持ちマスコミの醜態に痛々しさを感じるばかりです。
●今回はいくつかの傾向の異なる記事をアラカルトのてんこ盛りにしているので、あらかじめ記事のタイトルを列挙しておきます。
1.誇張されたサイバーストーカー問題の実態
2.次に破綻するドットコム企業は?
3.「アンチ・ネット族」の証言
4.料金4割増し? カラー液晶携帯電話の落とし穴
5.やはりつながりにくい携帯電話のネット接続サービス
6.「10大セキュリティホール」のリスト公表
――いずれ企業のセキュリティを測る尺度に?
●3と4は日本の携帯電話の「IT革命のインフラ」に使うにはあまりにもお寒い現状を報じた記事ですが、モバイル情報通信の主要端末として位置づけるなら、確実につながり、通信費がリーズナブルな範囲で収まることが不可欠ですし、加入者のプライバシーを社員が名簿屋に売るなんて以ての外だと思うのですが、そうした基礎の基礎さえ全然できていないのですから、先が思いやられます……。
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2000年5月31日
●1、●●誇張されたサイバーストーカー問題の実態●●
http://www.zdnet.co.jp/news/0005/31/koch.html
Lewis Z. Koch, ZDNet/USA
「常識的に言って,それに間接的な証拠が増えていることからも,サイバーストーカー行為は大きな問題になっていると言える」。米司法省でサイバー犯罪とサイバーストーカー問題を担当するJohn Bentivoglio副司法長官補佐はこう言った。この言葉を聞いて,私の頭の中で警報ベルが鳴り響いた。
30年以上前,私が駆け出しの記者としてシカゴのローカルニュース局で働きはじめて3日目のこと,格幅がよく威圧的で,身なりを気にしないArnold Dornfeldという編集主任がドスドスとやって来て,「母親はおまえを愛しているか」と尋ねた。
「ええ」と私は力を込めて答えた。
「どうしてわかる」
私は神経質にせきばらいをして,つぶやいた。「あたりまえでしょう」
「電話して確認しろ」。笑いながら言っているのかとその顔を見たが,笑みはなかった。主任は顔を寄せてきて,こう言った。「電話しろ。さもないとクビだ」
私は急いで母親に電話して質問し,イエスとの答えをもらって電話を切り,主任のほうを向いた。「私を愛していると言いました」
Dornfeldは,私の目をじっと覗きこみながら,ユーモアのかけらもなく言った。「これで,わかったな」
はたして,司法省のBentivoglio氏は,この「電話して確認」をやったのだろうか。
サイバーストーカー行為は疫病であり国際的な脅威なのか,それとも稀な犯罪なのだろうか。
インターネットには問題がある。本物の問題もあり,極めて小さい問題もあり,多くは仮想の問題だ。ネット上では犯罪的な株取引が行われ,幼児ポルノが流れ,幼児に性的いたずらをする人間や麻薬取引業者,テロリストもいる。実際の人生と同じだ。これが現実であり,時には冷酷で醜悪で絶望的だ。
しかし,サイバーストーカー行為の場合,ヒステリックに騒ぎ立てる正当な理由はほとんどない。
デラウェア大学社会学部のJoel Best学部長は,徹底的な調査に基づいて,非常に読みやすくてすばらしい著書,『Random Violence:How We Talk About New Crimes and New Victims(無差別暴力:新しい犯罪と新しい犠牲者の語られ方)』を著した。この中で,同氏はストーカー問題の実情を確認し,それが極めて誇張されているとの結論に達した。
Best氏の分析では,ニュースメディアは絶えず,興味をひく目新しい話題,新しい犯罪の急増や脅威の存在を必要としている。この種のジャーナリズムは,次のようなBest氏が言うところの「鉄の四角形」の一角を占めるにすぎない。
第1面――センセーション売り 熱狂とメロドラマは,記者や編集者のまさに生活の糧である。これによって新聞や雑誌が売れ,TVの視聴率が上がり,世間に警告が発せられる。
第2面――こびる政治屋 選挙で選出された政治家が公聴会を開催し,「怒りに燃えた」スピーチとインタビューをこなし,新しい法律の制定を求める。この新法は,無論,自分たちの給料の裏付けとなり,再選を保証してくれる。官僚は,あくせく働くビーバーのように報告書を次々と発表する。
第3面――トレンディな学者,専門家,問題解決屋 「問題」が存在すれば,その問題を「研究」する学者がやがて必要になる。一方,発言が引用されるような「専門家と問題解決屋」は,学者が定義した問題の解決に取り組むために予算増と人員増を要求する。
第4面――新たな課題を探す活動家 インターネット中毒になったりインターネットの犠牲になったりする可能性のある人はほとんど無限に存在する。みな何らかの手当てが必要になる。活動家とプロの擁護者は,犠牲者という新しい市場に自らを売り込む。
この鉄の四角形はすでに現実の世界を人質にとっている。次に目指すのは,インターネットだ。
●●鉄の四角形に囚われたサイバーストーカー問題●●
鉄の四角形が機能している完璧な例が,サイバーストーカーの推定値だ。サイバーストーカー問題はどれほど深刻なのだろうか。米国内のストーカーは20万人と言われる。この数字は8年間も流布されているが,1992年に最初にこの数字を書いた記者は,情報源を正確に思い出せない。Oprah Winfrey氏とSally Jessy Raphael氏が,同年,この数字を取り上げた。カリフォルニア州では実際にストーカー殺人事件が1件発生し,1992年にストーカー対策法が制定された。その年,すぐに他の29州も追随し,似たような法律を制定している。1993年には,さらに18州とコロンビア特別区が続いた。これは,米国内でさらに2件のストーカー殺人事件が発生したのがきっかけだったようだ。
全部合わせて3件の事件。確かに悲劇ではある。しかし,人口が2億7000万人の国で3件だ。ところが,活動家たちはただち にストーカー行為を「女性に対する暴力,家庭内暴力」と同一視し,悪性伝染病並みの数が語られるようになった。CyberAngelsというグループが,世界中のインターネット・ストーカーは6万3000人,被害者は47万4000人という数字をはじき出したのもこの手法による。だがこの数字は,Bentivoglio氏の『1999 Report on Cyberstalking:A New Challenge for Law Enforcement and Industry(サイバーストーカー行為に関する1999年報告書:司法と業界にとっての新たな課題)』の中でさえ,「情報源が不明の統計」との注釈が付いている。この報告書で引用しているサイバーストーカー事件は,わずか6件だ。
●●サイバースペースでは相手が誰かわからない●●
私はBentivoglio氏に,そのストーカー調査で収集された統計の誤りが証明されれば,問題の広がりに関する報告書の推定も間違っていることになるのではないかと質問した。「確かに」と同氏は認めている。
報告書には,「動向」や「証拠」という言葉がいたるところに出てくるが,事実の裏付けがあるものはほとんどない。すべてがたった1つの調査に基づいている。この調査とは,報告書によれば,「シンシナティ大学の研究者が実施した女子大生の性的被害に関する大規模な調査」。全米の2年制または4年制の大学に通っている女性から無作為抽出した4446人を対象に,電話で聞き取りを行ったものだ。
この調査でいうストーカー行為の定義とは,「誰かに繰り返し後をつけられたり,監視されたり,電話されたり,手紙や電子メールを送りつけられたり,または別の執拗と思われる方法で付きまとわれたことで,不安を感じたり,身の安全が脅かされたと感じたことはありますか」という質問に対し,「イエス」と答えた場合というものだ。不快行為と広範な反応を交ぜ合わせた紛れもなくフルーツサラダのような定義だが,これは脇に置いておこう。
この調査では,ストーカーに遭ったことがあると答えた13.1%のうち,「24.7%が電子メールによるストーカーに遭った」とされている。その結果,Bentivoglio氏は,「女子大生の受けたストーカー被害のうち25%が,サイバーストーカー関連に分類できる」と結論付けている。
これは真実ではない。少なくとも,この調査を実施した研究者の1人であるシンシナティ大学のFrancis T. Cullen研究教授はそう指摘する。同氏は,Justice Quarterly誌とJournal of Crime and Justice誌で評判が高かった元編集者であり,Academy of Criminal Justice Sciences(犯罪法科学学会)の元会長でもある。
Cullen氏によると,このストーカー問題調査は,サイバー的な側面を調べたものではないという。「サイバーストーカーの分野」に関係する「2つの質問」が含まれていただけであり,その質問も「具体的なものではなかった」と同氏。しかもその「2つの質問」では脅迫的な電子メールの実例は収集しておらず,質問は「一般的なレベル」のものだったといい,この調査は「サイバーストーカーそのものに関する調査ではない」。しかも,「あいにくなことに」,この調査は「何かが起きたということ以外,具体的な内容はほとんどわからない」というレベルで実施されたものだと同氏は言う。
残ったのは,疑わしい統計上の憶測と,ほとんど存在しない,驚くほど根拠の薄いサイバーストーカーに関する調査,それも,そもそもサイバーストーカーそのものに関する調査でさえなかったものだ。もし私がこんな報告書をDornfeld編集主任に手渡したら,主任は報告書を破り捨てて,こう言うだろう。「おまえ,確認しろよ。今度は,事実をもってこい」
[Lewis Z. Koch, ZDNet/USA]
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2000年6月2日
●2.●●次に破綻するドットコム企業は?●●
http://www.zdnet.co.jp/news/0006/02/berst1.html
Jesse Berst, ZDNet/USA
ドットコム企業の破綻が続いている。
私が知っている限りでも,近づかないほうがいいと思われる企業が5社ある。
昨年は,インターネットが大きな発展を遂げた年だった。ベンチャーキャピタルが殺到し,あらゆる事業計画に資金が集まった。しかし,2000年に入り,高級品販売業者のBoo.comが破綻し,広帯域市場の寵児であったDigital Entertainment Networkが資金不足に陥った。次に破綻するのはどこだろう?
現時点で,支出の引き締めや事業計画の変更といった対策を講じなければ倒産すると思われるオンライン企業は,私の知る限り5つだ。
●●問題の兆候●●
しかし,これらの企業が投資家のお金を短期間で使い切ってしまったことが問題なのか? ノーだ。
新興企業が短期間に多額の資金を使ったところで,少なくとも,さらに多くの資金が流入し,株価が上がり続けている限り,問題とはならない。しかし,以下に挙げる企業では,この条件が失われてしまった。各社とも,株価が下落し,資金調達コストは上昇した。これは,悪循環であり,破綻につながる道だ。
●●次に危ない会社●●
●Ask Jeeves:このQ&Aサービス会社は,売上は伸びているが赤字も増えている。先週にはTed Briscore社長が辞任し,ストリーミングメディア企業に移ってしまった。これは,同社の行く末を示す重要な兆候だ。今年3月に出たBarron's Pegasus Research Internationalの調査によると,10月まで事業を継続する資金はあるという。昨日の時点で,Jeevesの株価は21ドル前後で,これはこの52週間で4番目に低い。
●EarthWeb:この会社は,ITプロフェッショナルを対象としたWebベースのニュースレターを17種類出しており,最近「強力な競争相手のいない」ブラジルとメキシコの市場に参入する計画を発表した。IT情報市場は巨大だが,EarthWebは売上の4分の3をマーケティングにつぎ込んでおり,さらに多くの金を投入する必要に迫られている(注記:EarthWebはZDNetの親会社であるZiff-Davisの競合企業)。
●Buy.com:消費者向けの商品だけを販売しているオンライン小売り業者の中で今後も生き残ってい けるのはごく少数だということが明らかになっている。この先市場再編を経て生き残ることができるのは,各分野でほんの数社だろう。Buy.comが生き残る可能性も低い。実際同社は,金を貸してくれる銀行を見つけられずにおり,来年半ばには資金が底をつく見通しだ。
●FTD.com:伝統的な小売り業者も,大きな期待感の消滅で破綻に至るという筋書きから無縁ではない。FTDと聞いて花を連想しない人がいるだろうか。しかし,オンラインビジネスに関しては,株価を下げ続けている。かつて12ドル9/16だったFTDの株価は,昨日の時点で2ドルを下回った。同社は,運転資金払底の瀬戸際にいる。
●AutoWeb.com:オンラインで自動車を物色する人は多いが,実際に購入する人はほとんどいない。JD Power-LMCによるとその割合は4%であり,事業者が満足できる数字ではない。Goldman Sack'sの電子商取引アナリスト,Anthony Noto氏は先日,年内に資金調達ができなければ破綻する可能性の高いオンライン小売り業者のリストにAutoWebを加えた。
ネット新興企業とその出資者に対する警告:資金がいつでも調達できる時代は終わった。これからは,どうやってもとをとるかを明確にしないと破綻することになる。
[Jesse Berst, ZDNet/USA]
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2000年5月30日
●3.●●「アンチ・ネット族」の証言●●
【米国発】 2000.5.22――
(1/6)
インターネットに対する風当たりが強くなっているようだ。インターネットにまつわる恐怖や批判的な見方が語られる機会が増えている。
数年にわたって「真のグローバルデモクラシー」だ「ニューエコノミーの基盤」だ,あるいは「フリーマーケットを保証するもの」だとあらゆる誇大ビジョンをかき立てた後,現在この巨大ネットワークは,ユーザーと非ユーザーの両方に広がりつつある不満について,矢面に立たされることのほうが多くなっている。
そうした反応の一部は,米国のリビングルームに突然現れたこの巨大ゴリラに,捧げられるべくして捧げられているものだと言える。インターネットの成長を加速させた燃料には,常に大量の誇大宣伝が含まれていた。そして今,その誇大宣伝をもとに急成長した業界が代償を支払わされているわけだが,その代価は必ずしも犯した罪に見合ったものと言えない場合もある。
ニュースメディアはインターネットに対する大きな期待をさらに煽りながら,それに応えられないといって激しく非難する。一方,あらゆる層の米国人が,株式市場の調整,業界の騒動,ハッカーの攻撃,あまりにも若い億万長者に大きく動揺しているように見える。
インターネットは多くの人にとってあまりに巨大で重要,かつ迅速で騒々しいものになったため,まるで「あらゆる悪夢が見えるロールシャッハテスト」のような存在になっている。
テクノロジーニュースレターRelease 1.0のエディター,Kevin Werbach氏はこう語る。「“インターネットは社会的に重要だ”という認識に対して反発が強まっている。インターネットに限らず,地核変動を伴うすべての社会的/技術的/産業的な変化は,なんらかの副産物,分裂,亀裂を生む」
さらに,と同氏は付け加える。「インターネットとニューエコノミーの旗手たちにはある種の絶対信仰心が見て取れる。これがさらに抵抗感や反感をかき立てていると私は見ている。分裂や亀裂など,どこにも起きていないかのように,『清涼飲料を飲みながらこのボートに乗っているだけで誰でも億万長者になれる』といったことが語られるからだ」
テレビや一般の雑誌に登場するドットコム企業広告の数から考えて,きっと全米国民がバスに乗り遅れまいとしているのだろうとあなたは思っているかもしれない。だが,全員がバスに乗りたいと考えているわけではない。
Cyber Dialogueの調査では,昨年秋の時点で「インターネットを利用するつもりはない」と答えた米国成人の数は1億800万人を超えている。その3分の2は理由として,「単に必要がない」ことを挙げている。この点では,インターネットのマーケティングは必ずしも成功していない。新しいオンラインユーザーも増え続けているかもしれないが,Cyber Dialogueの調査によると,「インターネットは必要ない」という米国の成人の数も1997年春の6320万人から,1999年秋には6470万人へと確実に増えている。
●●インターネットの落ちこぼれ●●
Cyber Dialogueの調査では,過去1年の間に一度はインターネットを利用しながら,その後利用をやめた成人の数が約2800万に上っていることも明らかになった。その理由として,4人に1人は「最初から一時的にしか利用しないつもり」だったと回答。また,「興味がない」「料金が高い」「学校や職場からアクセスできなくなった」という理由はそれぞれ1桁台になっている。しかし,ほとんどのドロップアウト組が選択したのは,細分化されていない「その他の理由」だ。
インターネットに対する敵意は新しいものではないし,これまで語られることがなかったわけでもない。たとえば1995年,「TG」というカナダの若者向けオンラインマガジンの寄稿者,Kim Bond氏は,「遠隔教育によって学生同士の対話が“むき出しの,無味乾燥な事実”に取って替わられた」と断定し,インターネットは史上最もエリート主義傾向の強いテクノロジーだと批判。「いま宇宙を支配している悪魔は,人間のインターネット狂いだ」と同氏は綴っている。
だが,この数カ月間に起きた出来事から,人々は改めてインターネットに恐怖心と嫌悪感を抱くようになった。休日前の広告は,消費者にドットコムの誇大宣伝を浴びせかける。高い所から大声で呼びかけるインターネット限定の商売は,非ユーザーにはいい迷惑だ。自己規制の名の下に,デリケートな個人情報を密かに収集/操作/売買する業者が腕を上げ,積極的になるにつれ,オンラインのプライバシー侵害に対する懸念はかつてないほど高まっている。
「アンチ・ネット族」の証言
(2/6)
Microsoftの独禁法訴訟やAmerica Online(AOL)によるTime Warnerの買収劇は,直接的にせよ間接的にせよ,巨大企業の不安を浮き彫りにした。一方,ハッカーやフリーソフトウェアの愛好家たちは,テクノロジーの過度の商業化,そして企業が他社だけでなくアーティストや一般市民まで囲い込もうとするのを見て,不満を口にするようになっている。
さらに,インターネット企業の株価は不安定だ。思惑にあおられた熱狂的な楽観主義によって株価は最高値を更新。にわか長者となった 企業関係者や外部の投資家に対するやっかみも急上昇した。狂気とも言えるような高値を前に,投資の基本などはすっかり忘れられた。その後,株式相場は下げに転じ,株価が突然暴落したために,高額の給料や休暇をもらう代わりにストックオプションを選んだドットコム企業の社員らの熱気に水をさした。思惑買いに走った投資家たちは,オンライン商取引会社が予告もなく資産を売りに出し,ときにはそれによってさらに損失が拡大するのを,なすすべもなく見守るしかなかった。
インターネット経済によって,サンフランシスコ地域は一気に上流階級の居住地域へと変化したが,ドットコム起業家は,住宅価格を富裕層以外には手の届かないところまで押し上げているとして大いに非難されている。シリコンバレーの範囲は急激に北方に広がっており,サンフランシスコの商業用地の賃貸料は,元々そこにいた企業が,以前は手頃な賃貸料だったその場所に居続けられなくなるほど急上昇している。オースティン,テキサス,シアトルなどその他のハイテク中心地も同様だ。
反ネット主義が台頭する?
Trends Research Instituteを経営するGerald Celente氏は,インターネットにはこの反動を乗り越えるだけの勢いがあり,規模も価値も引き続き伸び続けていると指摘する。しかしCelente氏は同時に,インターネットが「この新しい経済における持てる者と持たざる者との格差の拡大」につながっていることは認めている。経済上の大きな反動は避けがたいにもかかわらず,社会的な安全策がなおざりにされたままインターネットは隆盛している,と同氏。
今後,社会主義的な変革が起きるだろうとして,同氏は次のように予測している。「自由経済を原則とする資本主義を脅かしたような,新たな『主義』が台頭してくると考えるべきだ」
「アンチ・ネット族」の証言
(3/6)
●ケース1:沈み行く船
Arthur Hotaling氏は,国際的な情報革命の突破口を自らの手で切り拓いた。そのアイデアがひらめいたのは1904年,セントルイスで開かれたWorld's Fairでのこと。ここにいるのはすべて,全米各地から集まってきた人々であり,この街にいる間,自分の地元で何が起こっているのか,まったく知る術がないのだと思い至った。
そこでHotaling氏は,自分のホームタウンであるニューヨーク市に思いをめぐらし,今,このビッグ・アップルにとって必要なのは,人種のるつぼと言われるこの街の住民が,全米,全世界の新聞を手に入れられる店だという結論に達した。翌1905年,早速Hotaling's News Agencyを設立する。売上は飛躍的に伸び,ほぼ1世紀にわたってHotalings家3世代が受け継ぐビジネスとなっていった。
●●そしてインターネットが登場した。●●
ローワー・ミッドタウンからスタートしたHotaling'sは,その後ニューヨーク・タイムズ・ビルに移り,さらに1945年にはタイムズスクエアに移転するなど,着実に成長を遂げた。そして同社は最近になって再び本社を移転した。ただ,今回はより良いロケーションを求めて,というわけではない。初代Hotaling氏の孫にあたるArthur Hotaling氏(50)の話では,同社は「ダウンサイジングを余儀なくされた」という。
彗星のごとく登場したインターネットにより,1999年までの3〜4年間で,このタイムズスクエアのニューススタンドで売られる新聞の部数は減少の一途を辿っているという。
Hotaling氏は言う。「1980年代には,月曜の朝だけでも日曜版を4000ドルも売り上げたものだ。ドアの外まで行列ができて,そのコーナーだけでも3人がかりで切り盛りしていたくらいだ。それが去年は1500ドルにまで落ち込んでしまった」
インターネットが登場する前と比較して,半分以上も減ってしまったわけだ。
Hotaling氏は売上が激減した理由として,ニューススタンドまで足を運ばなくても,市外の新聞を読める時代になったことを挙げる。
PCにログオンすれば,どんな情報でも即座に手に入るからだ。
「当社はニューヨーク以外の地域の地元紙や海外の新聞だけを扱ってきた。一種のニッチ市場というわけだ。お客さんは,案内広告や職探し,引越し先の不動産情報などを求めて買ってくれた。だが,インターネットの登場で,こういう情報はオンラインで簡単に手に入れられ,しかも安上がりになった。これじゃ商売あがったりだ」
ビジネス環境の変化はあっという間だった。最初,Hotaling氏は売上の減少は設備の改善で持ち直せると考えていた。店舗を改装し,仕入れる新聞を変えたり,コンピュータシステムをアップデートしたりと,いろいろ策を講じた。「これだけやれば好転すると思っていたが,どれ1つとして助けにはならなかった」と同氏。
Hotaling氏は昨年8月,この有名なニューススタンドをタイムズスクエアの喧騒から遠くかけ離れたウェスト・サイドのウォーターフロント近くの倉庫に移すことにした。もちろん,苦渋の選択だった。
「長年親しんできた場を去るのは苦しい決断だった。だが,いつまでも沈んでいく船の船長ではいられない」とHotaling氏は話し,こう続ける。「以前はそれなりに裕福だったし,自分なりのやり方を確立してきた。それら何もかもが変わってしまったことに怒りを覚えた。それによってライフスタイルが完全に破壊された」
Hotaling氏は結局時流に従うことにし,事業の比重を小売りから卸売りに移した。しかし,まだ小売りの落ち込みを補えるほどにはなっていない。
移転先の良いところは,「駐車場に悩まなくてすむことだ。ときどきオフィスの窓から外の公園や木々を眺めている。前より収入は減ったが,それ以外の面では気楽になった」と同氏は言う。
Hotaling'sは,情報経済の申し子とも言える多数の企業が軒を連ねるモール型のビル,タイムズスクエア・インフォメーションセンターの片隅に,今も小さなキオスクを構えている。
「キオスクでは国内外の新聞を売っている。Yahoo!のディスプレイのすぐ隣だ。Yahoo!には10台のコンピュータがあって,いろんな人たちが友人に電子メールや写真を送っているようだ。それを目当てにセンターにやってくる人も多い」(Hotaling氏)
「アンチ・ネット族」の証言
(4/6)
●ケース2:社会的対話の欠如
John Zerzan氏(56)は,車もなければクレジットカードやコンピュータさえ所有してない。ただ,長年の知り合いであり思想を共にするTheodore Kaczynski(別名「ユナボマー」=米国の爆弾テロリスト)と違って,電話と冷蔵庫だけは持っている。Zerzan氏自身,このことに「少しばかり偽善的な恥ずかしさを覚える」と告白している。
Zerzan氏は,オレゴン州ユージーンに拠点を構える若くて活動的な数百人の無政府主義者集団の「知の案内役 」――「リーダー」と呼ぶべきではない――だ。この集団は昨年,シアトルで開かれた世界貿易機関(WTO)の閣僚会議に反対するデモを組織したことで一躍名を上げた。遅咲きの活動家であるZerzan氏自身もデモに加わったという。だが,「顔をバンダナで隠して警官隊に物を投げたりも?」との質問を向けると,ただ苦笑いするだけだった。
同氏はスタンフォード大とサンフランシスコ州立大で歴史の学位を取得し,南カリフォルニア大では3年間,博士号を目指して学んでいた。生活費は,住宅組合のメンバーとして子供たちの面倒を見ることでなんとか賄っているという。
同氏は原始無政府主義の支持者,および機械化革命反対論者を自認する。また,Kaczynskiの社会批判とも思想を同じくするという。Kaczynskiの爆弾テロを支持するつもりはないが,一般大衆をターゲットにする上で彼が選別を行ったことは擁護すると付け加えた。ハッキングなどの単発的なテロ行為では,世界を根本から変革するために必要な社会的「対話」を促進させることはできないとZerzan氏は言う。
Zerzan氏はインターネットを使っていない。インターネットを利用すれば,他のどんな媒体よりも自分の思想を広く伝えられることは認めている。だが,同氏はいくつかの調査結果,特に「ハイテクの要塞」であるカーネギー・メロン大学から出された「ごく少量のインターネット利用でも,孤立感,疎外感,抑鬱感をもたらす」という調査結果を引き合いに出している。
「インターネットは人と人を結び付け,コミュニケーションを円滑にすると盛んに言われるが,それは真っ赤な嘘だ。テクノロジーはいつもそうだった。『もう少しテクノロジーが進歩すればこの問題は解決するはず』と言われてきたが,私の目には,テクノロジーはさらなる問題を招き,事態を悪化させるだけに見える」(Zerzan氏)
Zerzan氏によれば,問題の根源は工業化の夜明け前,昔の労働の分配にまで遡る。インターネットは虫が好かないものの,かといってインターネットを主要な標的にする気持ちもないという。コンピュータ化と同様,インターネットは企業の取引をスピードアップさせるという目的には適っている。だが,新世代のビジネス指導者たちがやっているように,あたかもインターネットが宇宙の中心でもあるかのような世界観で称賛する気はさらさらないと同氏。インターネットには確かにメリットもあるだろうが,社会的問題の方がずっと多いとの考えだ。
「お互いに顔を合わせていた時代はどうなったのか? 近所付き合いはどこに行ってしまったのか?」とZerzan氏は問いかけ,こう続ける。「現代の生活は不思議な生き方を強いられている。人と人を結ぶツールは増えたにもかかわらず,逆に孤立感は募るばかりだ。6歳の子供が銃を撃ったり,2歳児が麻薬中毒になったりする世の中だ」。つまり,インターネットは電話と同様,時代が産んだ醜悪な道具にほかならないというのが,同氏の持論だ。
「別にインターネットだけを問題視しているわけではない。今後もさまざまなテクノロジーが開発されるだろうが,特定のテクノロジーだけを取り上げて問題視するつもりはない。それがどのような形を取って現れるかだけを問題にしていたのでは,論理や道筋の理解には結びつかない」とZerzan氏。
つまり,同氏がこの主張に関して友人や仲間とともに大がかりな騒動を演じたのは,このシステムの経済組織の側,つまりWTO側のメカニズムに匹敵するものであるというわけだ。
「アンチ・ネット族」の証言
(5/6)
●ケース3:盗まれた個人情報
昨年冬,インディアナ州セントジョーンズに住む女性,Patricia Ruberryさん(61)の自宅に,4つの銀行から電話がかかってきた。銀行からの電話は別に珍しくもないが,彼女にとってショックだったのは,その内容だ。誰かがWebで彼女をつけ回し,この一人暮らしの女性の社会保障番号や個人情報を盗んだあげく,その名を語ってクレジットカードを申し込んでいたというのだ。
銀行から電話がくるたびにショックを受けたものの,さすがに2回目,3回目になると最初よりショックは小さかったという。最初の銀行に「カードを申請した覚えはない」と告げたところ,その銀行は,大手の信用調査機関に連絡して,彼女の名前で登録されているクレジットカードをすぐに凍結するようアドバイスしてくれた。彼女はこれに従った。2本目,3本目の銀行からの電話は,彼女の個人情報の窃盗未遂があったことを警告する内容だった。
だが,4本目にかかってきたProvidian Bankからの電話は違っていた。この銀行はアグレッシブなマーケティングで知られ,オンラインで申請すればすぐにでもカードを承認することを売りにしている。犯人はこの銀行で,Ruberryさんの名義で2500ドルという大金をいとも簡単にせしめてしまった。申請フォームの名前にスペスミスがあったにもかかわらず。また,病院のギフトショップでボランティアをしている自分の収入が,6万5000ドルと記載されていたと銀行から聞かされたRuberryさんは,「あのときは驚いた。本当にそれだけの収入があれば,私だって嬉しいけれど」と振り返る。
Ruberryさんは,自分の個人情報が盗まれたのは,洋服屋でインスタントクレジットを申請したときではないかとの疑いを持っている。オンライン書店のBarnes & Noble,電話会社のGTE,JC Penneyなど,オンライン上で過去にどれだけ多くの詐欺が横行してきたか,彼女は知らない。しかし申請した覚えもないのにProvidian銀行が信用調査機関に自分の信用情報を照会し,その問題が6カ月たっても解決していないのは,電子商取引が原因だと言う。「インターネットのせいだと思う。高齢者は信用調査をクリアしやすいので,食い物にされやすい」
インターネットを利用したクレジット詐欺はRuberryさんに大きなショックを与えたが,さらにショックだったのは,警察の対応,というよりまったく関心を示さない姿勢だったことだ。Ruberryさんは最初の銀行から連絡を受けてすぐ,地元の警察に駆け込んだ。そして申請に使われていた偽の住所と電話番号を警察に届けたものの,警察はまったく動いてくれなかったそうだ。Ruberryさんは憤慨した面持ちで語る。「『犯罪じゃないから警察としては何もできない』というのが警察の言い分だった。犯罪じゃないとはどういうことかしら。私の個人情報が盗まれたというのに!」
Ruberryさんは連邦取引委員会(FTC),米財務省検察局の偽造摘発部門,そして地元の連邦議会議員事務所も訪ねた。そのまま放っておくわけにはいかなかったからだ。
申請書に記載されていたホバートという町に自ら出向き,現地の警察にも相談した。だが,ここの刑事はさらに無関心だった。ホバートの警察が事件として捜査を開始するためには,まずRuberryさんがセントジョーンズの警察に戻って召喚状を発行してもらわなければならないというのがこ の刑事の答えだったという。すでにセントジョーンズの警察で冷たくあしらわれていた彼女は,もうどんなに努力しても誰も助けてくれないのでは,という不安を抱き始めた。しかし,ホバート警察のこの刑事は,申請書に書かれていた住所の所在地――Ruberryさんによると指圧師1人,従業員1人のカイロプラクターの事務所――に電話をかけてくれた。そしてこの問題は二度と起こらなかったそうだ。
とはいえ,Ruberryさんは問題が永久に解決されたとは思っていない。「自分の情報がすべて使われてしまった。なんだか自分の人生が完全にこの馬鹿げたインターネットに載せられているような気がしている。社会保障番号も知られてしまったし。電子商取引はあまりうれしいものではない。確かに便利だけれど,ある程度の規則があってしかるべきだと思う」(Ruberry氏)
「アンチ・ネット族」の証言
(6/6)
●ケース4:ネット企業の「年齢差別」
1996年,Alan Ezer氏(47)は4年間神経科学を学んだ大学院を辞めざるを得なくなった。貯金が底を尽いたからだ。そこで,ソフトウェアプログラマーの労働市場に再び身を置くことになった。
しかしEzer氏はRip Van Winkleのようなものだった。大学院に入るまでの10年間使っていたCOBOLやFortranといった言語は,もはや古代語と化していた。同氏は失われた時間を取り戻すため,新世代の言語,Javaを学び,雇用主の目に留まるようにとWebにアプレットを掲載した。こうして2年にわたって「これはと思う求人広告に180通の履歴書を送った」ものの,2度の面接は失敗,そしてインターネットという最先端の業界で仕事を見つけることに絶望した。
「いわゆるホットなインターネット業界でJava分野の仕事を得るという夢を捨てたことで,やっと仕事にありつけた。業界でプログラマー不足だとか言っているのはたわごとにすぎないと悟った」と同氏は苦笑する。
Ezer氏は,自分は年齢差別の犠牲になったのではないかと強く疑っている。同氏によると,面接官は2人とも20代だった。「能力的に問題がないことは分かってもらえたはずだ。デモも行ったが,2人は目もくれなかった。どうでもよかったのだ。採用されなかったのは,自分の経験が豊富すぎるのか,年を取りすぎているかのどちらかだと思わざるを得ない」(Ezer氏)
Ezer氏は今でも,自分の経験が一部,職探しに関連付けられた可能性があることに不満を抱いている。ヘルプデスクの職に応募したときの面接官は,「5年後の自分はどうなっていると思いますか?」と聞いてきたそうだ。
「このときはまともに答えれられなかった。あまりにも間抜けな質問だと思えて,言葉に詰まってしまった。もう1年以上も前から失業しているのに,5年後のことなんて考えられるはずもないだろう。結局,私の技術的なスキルは考慮されず,面接官に好かれるキャラクターではなかったということだろう」(Ezer氏)
民間企業の扱いが不公平だったことは,もっと客観的な雇用プロセスに目を向けたことで実証された。ニューヨーク州の公務員試験を受けたEzer氏は,プログラミングテストで満点を取り,10人の面接官を引きつけるのにも時間はかからなかった。同氏は今,ニューヨーク州の不動産局でアソシエートプログラマー/アナリストとして,PowerBuilderとSQLを使ってオブジェクト指向プログラミングの仕事に携わっている。
Ezer氏は自身の経験から,インターネット業界をこう総括する。「インターネット企業は別にクリエイティブな人材など求めてはいない。求められているのは,都合のいい時だけ利用して捨てられるチープなプログラミングの道具だ」
業界は移住者を積極的に活用しようとしているが,それは「ソフトウェア開発業界全体を外国人の契約召し使いで埋めようという,合理的だが冷たい計画でしかない。これによって,大学生や高校生など,未来ある優秀な人材さえ,本来もらえるはずの給料が得られなくなりかねない」と同氏は言う。
「しかし最も割を食うのは,経験豊富で高齢なプログラマーだ。われわれは豊かな経験があるだけでなく,雇用主のイエスマンにならないという面もある。アメリカの市民であれば,雇用主の脅しや圧力に負けて悲惨な条件で働いたりはしない」(同氏)
Ezer氏に言わせれば,業界が議会やホワイトハウスに顔が利くことも「一般の米国人を犠牲にして,シリコンバレーの大手企業から多額の政治資金を得ようとする政治家の貪欲さを裏付けている」。このような状況は「本当にいやしむべきことだ」とEzer氏は評している。
[Louis Trager, ZDNet/USA]
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2000年5月26日
●4.●●料金4割増し? カラー液晶携帯電話の落とし穴●●
携帯電話関連の出展が話題を集めた「ビジネスシヨウ 2000 TOKYO」。NTTドコモ,KDDI,J-フォンといった事業者のブースには,夏以降に出荷される新製品が大量に並んでいたのだから,それも当然だ。各社の展示内容を見ると,今後はカラー液晶を搭載した携帯電話が続々と発表されそうだが,使い方に気を付けないと,カラー端末には思わぬ落とし穴が待ち受けている。
●●続々登場するカラー端末●●
KDDIがauブランドで発売するカラー対応携帯電話(左)と,J-フォンのカラー液晶搭載第2弾「J-SH03」
カラー液晶を搭載する携帯電話は,現在,NTTドコモが2機種,J-フォンが1機種とごくわずかだが,J-フォンは5月26日より「J-SH03」(新規ユーザーのみ)を,NTTドコモはスーパードッチーモ「SH821i」(同)を6月1日より発売するなど,各社カラー端末の拡充に向けて本格的に動き出している。また,「au」ブランドのKDDIでも,7月をメドにカラー対応機を出荷する予定だ。
ただ,カラー液晶を採用した携帯電話は,店頭での人気が非常に高く,常に品薄状態となっている。さらに,iモード端末などで使われている半透過型STN液晶モジュール自体が供給不足のため,しばらくは入手困難な状態が続くかもしれない。
使いすぎにはご用心
携帯電話からインターネットに接続するサービスを利用していると,画像を閲覧する機会が多い。特に,個人売買や出会い系のサイトでは,カラー画像があれば楽しみは倍増するだろう。ただ,カラーコンテンツの閲覧にあたっては,利用料のことを常に頭に入れておくのが懸命だ。
iモード,EZサービス,J-スカイといったサービスでは,通話時間による従量制ではなく,データ伝送量に応じて課金されるパケット通信方式を採用している。各サービスの1パ ケット(128バイト)ごとの料金を比較してみると,iモードが0.3円/パケット,EZサービスが0.27円/パケット,J-スカイが最も安い0.25円/パケットとなっている。
モノクロ(左)と256色のgif画像。ダウンロードした場合の料金は,モノクロが40〜48円,256色が56〜67.2円になる
具体的な料金シミュレーションをしてみると,例えば,サイズが100×118ピクセルで,ファイルサイズは20Kバイトのgif形式のモノクロ画像をダウンロードした場合,料金は160パケット分で40〜48円。同じ画像を256色表示でダウンロードするとファイルサイズは28Kバイトになり,料金は224パケット分で56〜67.2円。モノクロとカラー画像では,料金に約16〜20円の差が発生することになる。
この差が大きいか小さいかは微妙なところだが,これはあくまで1枚の画像をダウンロードしたと想定したもの。極端な例を挙げれば,カラー画像のダウンロードだけに携帯電話を利用した場合,モノクロ端末の時の4割増しの請求書が届くことになる。くれぐれも使いすぎにはご用心を。
[中村琢磨, ZDNet/JAPAN]
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2000年5月31日
●5。●●やはりつながりにくい携帯電話のネット接続サービス●●
携帯電話でのインターネット接続サービスは,どうやらつながりにくいことが前提のようだ。
IDOが提供するパケット通信サービス「PacketOne」ならびに,携帯電話からのインターネット接続サービス「EZaccess」において,22時から翌1時にかけて首都圏を中心につながりにくい状態となっている。
アクセスの集中による輻輳が原因と見られ,IDOでは同社サイト上で,「7月末をメドに順次データ通信系のサービスを増強する」と説明している。「アクセスが集中することで,つながりにくい状態が発生するのは,ある程度しかたがない」(同社広報)
IDOでは,4月末に埼玉県を中心とする首都圏エリアの設備を強化したばかり。しかし,急増するユーザー数に設備が追いついていないようだ(EZサービス加入者は5月19日に200万人を突破)。
●●サービスは正常化したが……●●
一方,iモードサービスの正常化にともなって対応端末の出荷制限を解禁(5月24日の記事参照)したはずのNTTドコモも,iモード対応の携帯電話「スーパードッチーモ」の新聞広告では,「深夜0時前後はつながりにくくなる場合がある」という主旨の注意書きを掲載している。
これについてNTTドコモでは,「iモードセンターのトラブルは完全に解消されている」と断ったうえで,「“おやすみメール”などが集中する時間帯は,やはり,輻輳現象でつながりにくい状況が発生することがある。当面はこのような文章を広告に挿入する予定」と話す。
要するに,iモードのサービスは正常化したが,それは「サーバの不具合が解消された」という意味であり,「つながりにくい状態が全く発生しない」ことを意味するものではないというわけだ。
なお3月末から4月末にかけて発生したトラブルとの違いは,輻輳の場合は何度かアクセスしてみれば,つながる場合もある点。サーバがダウンしている場合は,当然,何回アクセスを試みても接続することができない。
EZaccessにしても,iモードにしても,全く使えなくなるわけではない。だが,有料サービスの利用者にしてみれば,「しかたがない」ですまされる問題ではないだろう。
[中村琢磨, ZDNet/JAPAN]
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●6.●●「10大セキュリティホール」のリスト公表●●
――いずれ企業のセキュリティを測る尺度に?
【米国発】 2000.6.1 5:23 PM PT――
http://www.zdnet.co.jp/news/0006/02/security.html
これはサイバーセキュリティの指名手配トップ10だ。
SANS(System Administration, Networking and Security)Instituteは6月1日,ネットワークサーバへの不法アクセスに使われる頻度が最も高いセキュリティホールのリスト(http://www.sans.org/topten.htm)を公表した。
「致命的なインターネットセキュリティの脅威トップ10」と題したこのSANS報告書は,システム管理者に参考にしてもらい,インターネットのこそ泥や悪人たちに,サーバへの容易な侵入経路として使われやすい入口をふさぐのに役立ててもらおうとの狙いで発行された。
「ここにリストアップされた弱点は有名なものばかりで,誰もが知っているようなものがほとんどだ」。この報告書に貢献した40人の1人で,カーネギーメロン大学のComputer Emergency Response Team(CERT)Coordination Centerでセキュリティホール対応チームを率いるSean Hernan氏はこう指摘する。
同氏によれば,こうしたセキュリティホールをふさぐことで,企業は「インターネット上の侵入者の大多数に対する守りを固めることになるだけでなく,最も拙い侵入者に対する守りも固められる」という。
SANS Instituteは今年2月,米国の著名8サイト以上をダウンさせたサービス拒否(DoS)攻撃(特集参照 http://www.zdnet.co.jp/news/special_siteattack.html)を受けて,セキュリティ専門家の協力を募り始めた。
このセキュリティホールのリストは,米国の国防総省や国家安全保障局など政府系機関や,民間企業,大学などの50人近い専門家のコンセンサスを得たもの。これを手始めに,システム管理者に自社のシステムの安全を高めることに目を向けてもらおうとの狙いだ。
「自社のシステムにセキュリティホールが存在することを認識しているシステム管理者は多い。しかし管理者は,毎日のように発せられる警告のあまりの多さに圧倒されている」。Network Associatesのセキュリティ研究マネジャーで,この報告書にも貢献したJim Magadych氏はこう話す。
SANS Instituteの研究ディレクターAlan Paller氏は,このトップ10リストによって,管理者が優先順位を付けられるようになるだろう とコメントしている。
「これは恐らくインターネット上で発生する攻撃の70%を占めている。多数に上る不正侵入経路のうち,(このリストに挙げられているのは)10にすぎないが,攻撃の大部分はこの手口によるものだ」とPaller氏。リストアップされたセキュリティホールには,それをふさぐための手段もそれぞれ添え書きされている。
しかしこの10のセキュリティホールをふさいだからといって,システム管理者の仕事はそれで終わりにはならないとPaller氏は言う。「大規模な組織がまずこの10大セキュリティホールへの対応を完了し次第,われわれは次の10大ホールをリリースする」
ナンバー1のセキュリティホールは「BIND」
10大インターネットセキュリティホールの第1位として挙げられたのは「BIND(Berkely Internet Name Domein)サービスの脆弱性」。これを導入しているうちの半分が影響を受けているという。
第2位は「CGIスクリプトの脆弱性」。CGIスクリプトはWebサイトに双方向性を持たせるよう設計されたもので,多くのWebサーバでは,サンプルCGIをデフォルトのまま導入することによって,サーバに不正侵入経路が作り出されている。
第3位が「リモートプロシージャコール(RPC)の脆弱性」。これは,あるコンピュータから別のコンピュータでプログラムを実行できるようにするもの。米国の軍事システムを襲った「Solar Sunrise」事件では,このRPCの脆弱性が利用されて軍のサーバ数百台が侵入された。4位以下には,メールサービスのセキュリティ上の欠陥,MicrosoftのWebソフトウェアの欠陥,さらには,管理者がパスワードの変更を忘れたり簡単に破られるパスワードを使っているなどの問題も挙げられている。
このリストは将来的に重要性を増すかもしれないとSANSのPaller氏は見る。企業がセキュリティ問題に真剣に取り組んでいるかを測る標準的な尺度になる可能性があるためだ。
例えば,企業がここにリストアップされたセキュリティホールを全てふさいでいるかどうかによって,保険料が設定されることになるかもしれない。
「保険業界は,企業が保険に入れるかどうかを審査する基準としてこのリストを利用するかもしれない」とPaller氏。
このような経済的影響が出ることにより,従来は「あとで考えればいい」ものとされがちだったセキュリティの優先度は高まるかもしれない。
[Robert Lemos, ZDNet/USA]