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「光を300倍に加速」米NEC研…英紙
【ロンドン4日=芝田裕一】四日付の英日曜紙サンデー・タイムズは、米東部ニュージャージー州プリンストンにあるNEC(日本電気)の研究所が、光を通常の三百倍まで加速するのに成功した、と報じた。事実なら現代物理学の常識を覆す実験となる。
同紙によると、NEC研究員のリュン・ワン博士らが、セシウム・ガスで満たした実験装置内に光のパルスを通す実験を行ったところ、光が、入力とほぼ同時に反対側の端に現れたという。ワン博士は、この光のパルスが、光速(秒速約三十万キロ)の三百倍の速度で装置内を通過したと計算している。
ワン博士らは、論文を権威ある英科学誌「ネイチャー」に投稿中のため、詳細を明らかにできないとしているが、実験の真偽と解釈をめぐり、英米の物理学者の間で大きな論議を巻き起こしているという。
二十世紀を代表する物理学者アルバート・アインシュタインが唱えた特殊相対性理論によると、真空中の光の速度は光源の速度などの条件によらず一定で、秒速約三十万キロより速く移動できるものはない。
また光が何かの媒質の中を通る時には通常、真空中の速度より遅くなるため、セシウム・ガスの中を通過させた今回の実験では、光は秒速三十万キロより遅くなると考えるのが“常識”だ。今回の実験データが本当だとすれば、新たな理論の枠組みが必要となる。
同紙のインタビューに対し、ケンブリッジ大のニール・ツロク教授は「この実験が、物理学の基本法則に対するわれわれの考え方を変えるかどうかは疑わしい」と述べ、「光速の三百倍で光が動いた」とするワン博士の解釈に疑問を呈している。
(読売新聞 6月4日21:16)