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2000年6月4日 北國新聞 社説
子孫にツケ残さぬ知恵
原発から出る高レベル放射性廃棄物の処分の枠組みを定めた特定放射性廃棄物最終処分法が成立した。実際に処分が始まるのは、三、四十年先であるが、今秋には最終処分の実施主体が設立される。これにより日本は世界に先駆けて一万年以上も放射能を出し続ける再処理後の高レベル廃棄物の処分事業に取り組むことになる。子孫に原子力利用の後始末というツケを残さぬよう、世界に誇れる知恵を結集したい。
同法は▽実施主体の原子力発電環境整備機構を電力各社が共同で設立する▽廃棄物は地下深くに埋めて最終処分する▽最終処分地の選定手続きでは地元の意見を尊重する▽処分費用は電力各社が積み立てる―などを明記している。
原子力政策の基本である核燃料サイクルは、高レベル廃棄物という「核のごみ」の後始末を終えて完結する。この確立をうたった「原子力開発利用長期計画」は実施主体を「二〇〇〇年を目安に設立する」と定めているが、最終処分法の成立でその道筋は一応ついた。しかし、その実現の道のりは多難だ。
最大の課題は最終処分地の決定である。日本の高レベル廃棄物はガラスと混ぜてガラス固化体にし、まず地上で約五十年間中間貯蔵し放射能や発熱を低下させ、その後地下深い地層に処分する計画になっている。火山活動の活発な列島に活断層や地下水脈を避けてその候補地を探さなければならない。
現在、核燃料サイクル開発機構(旧動燃)は、北海道、茨城県、岐阜県に地層研究所を計画、候補地決定の基礎データの調査にあたろうとしている。これらが最終処分の候補地となるのかどうか不透明だが、決定で地元の理解を得るには納得できる公平な選定になるよう幅広い調査が必要である。そのデータを基に最終処分地の在り方について論議すべきである。
処分施設立地の安全規制の確保も課題である。施設の安全規制について最終処分法は「別途、法律で定める」と先送りしている。施設立地の論議の前提となるものであり、具体像を早く示すべきである。
同時に、技術の進歩をにらみ、サイクル開発機構は地層処分以外の方法も検討すべきではないか。たとえばフランスで本格的に研究されている長寿命の放射性物質の消滅を図る処分法なども選択肢として残したい。