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【モスクワ31日=高木桂一】
ロシアの有力日刊紙「コメルサント」は三十一日、チェチェン武装勢力を支援しているとされるアフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンの軍事基地への空爆の準備を進めているロシア軍の司令官グループがすでにアフガン領内に入り、反タリバン勢力と軍事協力をめぐる協議を行ったとし、六月八−十日にも対タリバン軍事作戦を開始すると伝えた。「反イスラム原理主義」を掲げるロシア側は、後には引かない構えで、緊迫感がにわかに高まりつつある。
同紙は「ロシア高官によるアフガン空爆の示唆は、空疎な威嚇ではなく、反イスラム原理主義勢力に関する国際世論に基づく現実味のあるものだ」と指摘し、五月下旬にロシア連邦軍の十六人の司令官がアフガニスタン領内で、反タリバン勢力「イスラム協会」のアハマド・シャー・マスード司令官(元国防相)やラバニ大統領と、武器供与など軍事協力に関する協議を行ったという。
マスード司令官の情報によると、ロシア軍によるタリバンの軍事基地への空爆をはじめとする軍事作戦には空軍機のほか、旧ソ連国家保安委員会(KGB)の後継組織である連邦保安局(FSB)の特殊部隊や、軍参謀本部情報総局の偵察部隊、FSBに所属する“伝説”の機密部隊「アルファ」が参加する。
作戦の狙いの一つに、昨年キルギスで日本人技師拉致(らち)事件を首謀し、現在アフガン領内に潜伏しているとされる「ウズベキスタン・イスラム復興運動」のナマンガニ、タヒル・ヨルダシェフ両野戦司令官の抹殺があるとしている。
コメルサント紙は、ロシアの特殊部隊の情報として、ナマンガニ司令官らは今夏、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン三国にまたがる「イスラム国家」建設に向けた新たなテロ行動を起こす計画を立てている−と指摘。「クレムリンはこれをロシアと中央アジアの同盟国の安全保障に対する致命的な脅威とみなしている」とし、「予防措置」としてのロシア軍のアフガン領内での軍事作戦の正当性を強調している。