Tweet |
情報分析研修に関する所感
調査第二部国際情報室
金 勇徳
今回の研修は、内容的に、@CIAの分析資料作成の基本的考え方の習得、A政策立案者に対する警告の仕方、B同機関の分析担当官の処遇問題など人事管理についての説明、C本部オペレーション・センターの見学及びD本部での各種問題に関する意見交換、などに大別することができる。
私は、国際情報室でロシア問題の分析の任にあたっているという立場にあることから、本研修の主題であります「分析資料作成にあたってのCIAの基本的考え方」について若干の感想を述べたい。
まず最初に、私がこの研修で感心したことを紹介したい。CIAでは、我々が通常呼んでいる”分析”のことをanalysis(分析)とはいわず、synthesis(統合)と呼んでいる。「”分析”とはある事象を細分化しながらある結論を出す手法である。CIAでは個々の様々な情報を積み上げていくことによってある結論を導き出す。したがって、我々が行っているのは”分析”ではない」というのである。なにやら”へりくつ”のようにも思えたが、これがCIAの情報分析に対する基本的考え方の一端を表しているようである。
我々に講義をしてくれた上級インストラクターによると、分析官の最大の使命は、「如何にして多忙を極める政策立案者の注意を引き、読ませる分析資料を書くか」であるという。分析資料の作成様式は、@コントラクト(タイトル)、Aシンセシス(メイン・アイデアあるいは分析官が最も主張したい結論)、B根拠(evidence)、C原因、D展望、E米国がとるべき政策の示唆などであるが、多忙な読み手が分厚い資料に目を向けるはずもなく、したがって分析官はAシンセシスの3〜5行に自分の主張を凝縮し、政策立案者の注目を引く分析を書くことに努力を傾注しているという。分析資料の分量は長くとも最大4ページ程度であるとの説明であった。
わが庁とCIAの分析手法と比較すると、私の個人的意見では、「個々の事象からある特定の結論を導き出す」という分析スタイルにそれほど違いはないと考える。しかし、読み手の注意、すなわち「この資料を読みたい」と思わせるために分析資料の冒頭に分析官の結論をもってくるという手法はわが庁の各部署で採用されているとは言い難いようである。少なくとも、国際情報室の分析資料についていえば、全体として分量的に厚めであり、分析官の言わんとすることを理解するには最後まで読まなければならないことも否定できない。
一方、わが国の政策立案者はもとより、当庁幹部も多忙を極めていることも事実であり、まさにStop reading(即読)が求められているのが現実であると考える。CIAの分析手法をそのまま当庁に導入することが適当か否かはともかく、その長所を採り入れるべく検討してみる必要があるのではないかと痛感した次第である。