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物質の構成単位である原子核を、壊れにくく安定な状態にする陽子と中性子の数「魔法数(マジックナンバー)」に、「16」という新しい数字があることを、理化学研究所(理研)の研究グループが発見し、三十日、国の原子力委員会に報告した。
新しい魔法数は、自然界に存在する原子核ではなく、加速器によって人工的に作り出された原子核で発見されたもので、これまで2、8、20など七種類が固定のものと考えられていた魔法数の定説を、約五十年ぶりに覆した。原子核の構造や宇宙の元素のなりたちに全く新しい考え方を示すものとして、注目を集めている。研究成果は来月十二日発行の米物理学専門誌「フィジカル・レビュー・レターズ」に発表される。
理研の谷畑勇夫主任研究官らのグループでは、加速器施設を使って、人工的に中性子の数を増やした原子核を作り出し、原子核の安定性を確かめた。中性子の数が増えると原子核は崩壊しやすくなるが、中性子数16のところで、ほかの中性子数の時の約十倍も原子核の結合状態が安定的になることが確認された。
新たな「魔法数16」は、マイヤーとイエンセンが四九年に発見し、魔法数は七つあることを示した「殻構造」理論(一九六三年にノーベル物理学賞受賞)の一部を書き換える発見。
メモ 原子核は、核を構成する陽子と中性子の数で安定性が大きく異なり、陽子や中性子が魔法数を持った時に、特に安定する性質がある。例えば、陽子二個、中性子二個を持つ魔法数2の元素は、極めて安定した物質として知られるヘリウムで、ほかに8の酸素、20のカルシウムなど、人間の生活にも重要なものが多い。
(5月30日23:19)