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CIA情報分析研修を終了して
関東公安調査局調査第二部第二課
上席調査官 川田秀樹
1 当庁が果たすべき機能とは?
CIAは、米国の数ある情報機関の中において確固たる地位を占めており、中央情報局との名前通り情報サークルの中心的存在である。米国では情報機関が国家に対し果たすべき役割が「政策決定者への必要な情報の提供」として確立されており、CIAはその中でも最も重要な責務を負っている。
CIAはその重大な責務を負っているが故に世界中から必要な情報を収集し分析を行っている。CIAの職員も国の政策決定に大きく関与していることに誇りをもっており、極めて優秀な人材が他にもっと有利な職業があるにもかかわらずCIAへの就職を選択し、困難な業務と苛酷な労働条件にも係わらず高いモラールを維持し勤務している。
国家行政機関としての責務・権限と実行能力そして能力のある人材の確保の関係は、勿論前者が先行し決定するものではあるが、その後の行政機関の実際の能力は互いの相乗効果により高められていくのであろう。
翻って考えてみると、当庁への情報機関としての認知とニーズは公式には認められていないのが実情である。また、我が国においては未だ国家における情報機関の必要性すら公式に認められていないのも現実である。しかし、国際情勢の変化と日本の立場の変化により、今後日本には自国の政策を決定するために早く正確で十分な情報が死活問題として必要となりそのために情報機関としての能力を持つ国の機関が必要となるのは昨今の現状を見ても必然的であると言えよう。
今回の研修機関中、CIAの日本担当職員等とも交流を持ったが彼らの中にも「日本が国際社会で独自の政策を自らの責任で決定する必要があり、そのためにも独自の情報機関が必要である。」との見解を持つものが多かった。
従って、当庁は現在の許される条件の中において情報機関としての機能を高め時に応じて政府の必要とする情報を提供すると同時に、今後本来の情報機関に必要な人材の確保と育成に努めるべきであると考える。将来当庁自体が国の機関の情報機関として正式に認知されればそれは責任重大であると共に組織としては好都合である。また、仮に新たな情報機関を創設することとなるならばその際に当庁が中心となれば良いだろうし、そうでなくとも場合によっては必要な人材を提供することによって、総体として我が国の安全と国益を確保することに大きく寄与できると信じる。
2 要望
当庁では未だ確立していない本庁調査部における「情報分析官」の地位と機能を明確にし、責任と評価を与えるべきと考える。「情報分析」と言う言葉が単に情報と資料の取りまとめではないことが、今回の研修で実感された。当庁でも従前からの発想でない新たな情報分析の考え方から本当に有用な情報価値の創造を可能にしていくべきであると思う。
本庁の分析部門で現在でも利用可能な商業用データベースを導入し情報分析の際に自由に利用できるようにすべきであると思う。CIAにおけるコンピュータートデータベースの利用は第一次情報としてそれら商業用の情報を極めて有効に利用しておりこの点については、我が国の商業用データベースの現状を見ても当庁においても現段階で早急に導入できるものとの印象を受けた。
3 感想
研修の講義以外に何人かのCIA職員と交流し彼らが極めて高い能力と同時に使命感をもって業務に取り組んでいることを知り感動すら覚えた。彼らは今回の研修を機会として当庁とCIAとの友好関係が増す増す強化されることを望んでおり、それがCIAの利益になることは勿論計算しているだろうが、それ以上に当庁の利益、そして日米両国の将来の利益につながることを心から信じているようであった。
今回は、公安局の現場の調査官としてこの情報分析研修に参加したが特に研修内容について問題や理解できない点はなかったと思う。当庁が現場の調査官と本庁の分析担当官を完全に分離し人事的交流が無くならない限り今後もこのような形で、現場の調査官が参加することも有意義であると思う。
しかし、現在の自分自身の観点から言うと、今後はCIAのオペレーション分野の研修も実施できれば当庁にとってより有意義ではないかと思う。
以 上