H5.CIA研修報告(続き)

 
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投稿者 野田敬生 日時 2000 年 5 月 29 日 11:14:27:

           情報分析研修に対する所見及び感想
                               公安調査庁研修所教頭
                                            小島 龍郎
  CIA情報分析研修は、米国現地での1週間の研修であったが、今後仕事をして行く上での数多くの貴重な知識や手掛かりを与えてくれた。
1  情報の分析及びその取りまとめ方
   CIA流の、多忙を極める大統領や国の政策決定者の必要に応えるために、情報を分析し、その結果を非常にコンパクトに取りまとめる方法を学ぶことが、今回の研修の中心的内容であった。
   情報の分析自体は、我々の方法と余り変わりはないと思われたが、1頁(どんなに長くても3〜4頁)に情報を圧縮するという経験はなく、その圧縮比に反比例する大変な努力を要するものであった。
   しかし、DIの分析官は、実際に、1頁にその情報の最も重要な部分と将来の予測ばかりか論拠の展開まで書くために常に大変な努力を傾注しているのだそうである。
   当庁も40年の歴史があり、取りまとめのスタイルにも独自の合理性があるであろうから、全面的にスタイルを変える必要もないだろうが、是非取り入れてみたい優れた取りまとめ法であると強く感じた。
2  CIAの情報収集と分析の分業体制
   これまで、当庁は情報収集部門と分析部門を持った我が国でも最もCIAに似た組織であると思ってきたが、研修の中で情報分析局(DI)に関する説明を聞いているうちに、本庁の調査部門は作戦局(DO)の分析部門に過ぎず、当庁は情報の収集部門と分析部門との間にCIAのように明確な分業体制を取っていないことに気付かざるを得なかった。
   DIは、「手」としてのDOとは全く切り離された、多くの優秀な人材を集めたCIAの「頭」とも言える組織で、DIで、DOからの非公然情報や衛星情報のほか公然情報などすべての情報を分析していることが、DIの分析官の誇りを高めているばかりか、CIAの米国の政策決定者への強い影響力の基になっているように思われる。参考までに、次に、DIの人事管理を紹介してみたい。
   先ず、DIの職員の多くは、広範な専門分野について修士または博士号を持つ人たちで、DOとの制度としての、人事交流はない。彼らは、定年までワシントンDCで勤務し、2〜3の専門分野を担当する。
   また、DI職員の研修制度は、私たちが受けた研修(これは採用後4〜5年の人たちが対象)以外にも盛り沢山で、語学研修、他省庁の研修への派遣、大学院での学位取得及びOJTなどがある。やはり、OJTを最も重視しているそうだが、職員が学ぶことへの支援は全く惜しまないとのことであった。
   さらに、その人事評価制度の特色は、民主的なことにあり、評価対象の一部を職員側で項目として決定できる上、管理者側の評価を見せてもらえることになっている。これらは、DI職員の働く意欲を引き出すには、人事管理・評価を民主的にやることが重要であるという認識に基づいている。
   当庁の場合、本庁の調査部は職員の採用または配置に特段の配慮をしておらず、現場との人事交流は当然のこととされているだけでなく、本庁職員を対象とした研修さえないことなどからみて、DIに当たる組織があるとは言えないのはもちろん、庁全体としての情報収集と分析の間の分業体制も明確ではないと考える。
   しかし、収集と分析とでは全く機能及び内容が異なるだけでなく、冷戦後の複雑かつ不透明な内外情勢の下で専門家の判断がますます必要の度を増していることを考慮すれば、当庁のような小規模な役所こそ、組織の効率的運営のために一層、CIA流の「手」と「頭」の分業体制を導入することが必要なのではないだろうか。
   当庁の場合、DIに当たる組織を新たに作ることまでは必要ないと思われるが、本庁の調査部が「頭」としての機能をフルに発揮できるように、現場との分業体制を明確にした上で、本庁職員に対する研修の創設、専門家を育てられる本庁独自の人事採用・評価法など、運用面で出来るだけ多くDI流の人事管理法を導入すべきであると考える。
3  円高を利用した駐在員及び語学研修員のワシントンDCへの派遣
   米国現地での生活を体験して、初めて現行の為替レートの意味が実感できた。現地での円の実際の購買力は優に200円はあり、円は我々の気が付かないうちに大変な力をもっていたということであろう。
   したがって、現行の為替水準の下では、外務省並の手厚い補助がなくても、日本で支給されている給与を支給し、それをドルに交換するだけで、米国滞在は可能である。現に、特別な手当て等を支給せずに、多くの日本企業が職員を教育するため米国大学へ派遣したり、私立大学の教員が米国の大学・研究所の客員研究員(無給)として派遣されている例も少なくない。
   こうした状況下では、当庁も、米国への駐在員や語学研修員等の派遣をより現実的な問題として検討する必要が増していると言えるのではないだろうか。
   ワシントンDCは米国だけでなく世界の政治の中心地であるので、そこに職員が駐在員、客員研究員または語学研修員として派遣され、当庁のために情報を収集し、日本へ送付する場合のする効果は想像以上に大きなものがあろう。同時に、これは、個人レベルで本人の能力向上に寄与するだけでなく、各分野の本格的な専門家を育成する端緒にもなり得るなど、多重的な効果が期待できるのである。
以 上




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