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【ハノイ27日=渡部恵子】
ベトナム戦争中の枯れ葉剤被害を調査していたベトナム政府報告書で、従来の推計を大幅に下回る三万人という被害者数が確認されていたことがわかった。ベトナムは米政府に「道義的責任による被害者救済」を求める圧力を強めていた矢先で、この数字に困惑を隠せない様子だ。
この報告書は、科学技術・環境省が現在開会中の国会に提出したもので、ベトナム紙「ティエンフォン」(ホーチミン共産青年団機関紙)が内容を報じた。ベトナムは、ベトナム戦争中に米軍が散布した猛毒ダイオキシンを含む枯れ葉剤で、がん患者増加や先天性障害児が多数生まれるなど深刻な被害を受けたとし、被害者数を多い時で二百万人と推計してきた。政府調査は九八年から二年がかりで実施され、これまで中部などの一部の省が五月雨式に結果を発表していた。
ベトナムはこれまで米政府に対し正式な被害補償要求を行っていない。しかし三月に米国防長官がベトナム戦争終結後初の訪越を行い、枯れ葉剤被害に関する「科学的調査」実施に協力を約束した際、ファン・バン・カイ首相は「戦争の惨禍、特に枯れ葉剤被害者救済に、より誠意ある態度を」と要求した。だがこの間、政府の被害調査結果は伏せられたままだった。
(5月28日00:29)