Tweet |
百歩譲って140例を事故死の「うちの」不審死からの抽出と仮定しても、約2%という数字は...
2000年5月25日(毎日新聞)
特報・子どもの脳死:
虐待のケースも 移植法の論議に波紋
--------------------------------------------------------------------------------
厚生省研究班が昨年の調査で把握した過去10年間の6歳未満の小児の脳死患者140例のうち3例と、調査以外の1例の計4例が、親の虐待で脳死に陥ったケースだったことが、毎日新聞の調べで分かった。虐待による小児の脳死の具体例が判明したのは初めて。この中には親などが当初、事故を装い虐待を隠そうとしたものもある。今年秋に始まる臓器移植法見直しでは、小児からの臓器提供を「親の同意」だけで可能とするかが論議となる見込みだが、虐待では親が加害者で、こうした場合の扱いが焦点のひとつとなりそうだ。 【金田健、張智彦】
厚生省研究班に報告された子供の脳死患者のうち、名古屋第二赤十字病院(名古屋市昭和区)で1993年と96年に扱った各1例と東京都内の病院の98年の1例の少なくとも計3例が虐待が原因だったことが、関係者の説明などで分かった。研究班に報告されていないが、北九州市立八幡病院(同市八幡東区)で95年にあった1例も虐待だった。患者は1〜4歳で、脳波などの検査で医師が「脳死の状態」と診断した。
名古屋の93年の事例では、子供を運んだ母親は当初、「遊んでいて浴槽に落ちた」と説明したが、医師が事情を聴き続けるうちに、「育児が大変で、発作的に水に漬けてしまった」と話した。96年には「乗っていたテーブルから落ちた」という子供が搬入されたが、体に数カ所の不審な打撲跡があり、虐待が発覚した。
東京の事例は、治療の途中に母親が「首を締めた」と虐待をうかがわせる告白を始めた。北九州のケースも、母親は「けいれんがあり、ぐったりした」と症状を説明しただけで、その後の捜査で内縁の夫の暴行が判明した。
東京の事例で司法解剖にあたった杏林大の佐藤喜宣教授(法医学)は「単純な事故に思える事例でも、よく調べれば虐待が疑われることがある。医療現場全体の日々の取り組みが重要だが、日本ではまだ虐待に関心が薄い医師が多い」と話す。八幡病院の市川光太郎小児科部長も「ほかにも最後まで虐待の疑いが捨てきれなかったケースがある」と話し、4例が氷山の一角である可能性を指摘する。
厚生省研究班は、6歳未満の脳死判定基準作成のために、全国の病院から脳死事例を集めたが、原因関連で「虐待」についてまでは質問していなかった。
現行の臓器移植法は、運用指針で臓器提供の意思表示が可能な年齢を15歳以上と定め、15歳未満の提供は認めていない。患者、家族などからは「親の同意のみで小児から提供ができる制度を作ってほしい」という声が上がっている。