セラチア菌院内感染事件の闇?

 
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投稿者 佐藤雅彦 日時 2000 年 7 月 05 日 02:30:26:

        かつてセラチア菌は
         米軍が市街地での極秘生体実験で
           散布していたものだった!!

●沖縄サミットは政治闘争の格好の標的になるであろうが、その闘いの主役となるのは発展途上国への債務免除を求めるNPOやNGOである。政治的に考えて、このサミットをテロ攻撃する利点は、もちろんこうした団体には――現地に乗り込むスタッフも犠牲になる危険性が高いから――ないだろうし、米国政府がレッテル貼りしてきた「ごろつき国家」関係のテロが起きる危険性も考えにくい。……考えにくい、というよりも、そうした政治テロを理論的に正当化するのは、無理があるのだ。
●なのに防衛庁は、サミットを生物化学戦争の実地演習の場とでも考えているのか、陸自の化学防護隊を沖縄に派遣する予定らしい。
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   化学防護隊の派遣検討
      沖縄サミットで陸自

 防衛庁は三日までに、沖縄県名護市で開かれる主要国首脳会議(沖縄サミット)を狙った化学兵器を使用したテロなどに備え、陸上自衛隊化学防護隊を事前に派遣するかどうか検討を始めた。
 防衛庁は「不測の事態が発生した場合、自治体からの災害派遣要請を受けてから現地に向かうのでは間に合わない。消防、警察が対応できないテロや事故に備えて万全の態勢を取りたい」と話している。
 同庁によると、化学防護隊は地下鉄サリン事件や、東海村臨界事故の際にも出動。核・生物・化学(NBC)兵器による攻撃を受けた場所での活動を想定した化学防護車や除染車を配備している。
 同隊は全国の師団などに置かれているが、沖縄県の旅団にはない。部隊の規模などは今後、詰める考えだ。  (共同通信、07/03 17:48)
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●おいおい、化学防護隊のお膝元の埼玉や、関東中部一円は、目下、放射性物質の得体の知れない拡散と隠蔽と汚染で、大変なことになっているのに、そっちを放ったらかして、沖縄リゾートってのはオカシイんじゃないのか?
●BC戦防護の関心を沖縄に向けているあいだに、その隙をついて“放射能・病原体・毒物テロ”が首都圏などで起こる可能性だってあるわけだしさ。
●そういや春に口蹄疫[こうていえき]の散発的流行が起きた際には、防衛庁では「生物兵器かもしれない」なんてデマ流したよな。 (防衛庁がデマ流し、それを広めたのは産経新聞という、マンネリの猿芝居だったが。【笑】)
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   ウシや羊の「口蹄疫」発生、
    バイオテロの可能性が指摘される
       ――防衛庁も関心    (産経)

  ▼宮崎、韓国、モンゴル「口蹄疫」同時期発生、
    家畜のウィルス性伝染病

今年三月に宮崎県で国内では九十二年ぶりにウシやヒツジなど偶てい類のウイルス性伝染病である「口蹄疫(こうていえき)」が発生したが、その原因がいまだになぞにつつまれている。口蹄疫は一般的にはヒトには感染しないが、強力な伝染力をもっていることから、専門家はバイオ(生物)テロに転用される可能性を指摘している。ほぼ同時期に韓国でも発生しているほか、モンゴルでも四月末から発生していることが明らかになり、防衛庁は、人為的なウイルス混入の可能性があったのかどうかに関心を寄せている。

  ◎「なぞの感染源」防衛庁も関心

宮崎県は三月二十五日、宮崎市富吉の肉牛農家で飼育する肉牛十頭が口蹄疫に感染した疑いがあると発表。四月三日には、富吉地区の西約八キロの宮崎県高岡町大字五町の農家で九頭のウシが口蹄疫にかかった疑いのあることが判明し、同九日には、富吉地区の南西約三キロの高岡町大字下倉永の農家で十六頭のウシが口蹄疫に感染した疑いがあることが明らかになった。
これまでに、口蹄疫に感染したか、感染した疑いのあるウシ三十五頭が処分された。その後、ウシに対する検査なども進んだことから、「事態は沈静化に向かっている」(関係者)とされ、家畜の移動制限も解除された。
一方、農水省によ驍ニ、韓国では三月二十七日、京畿道坡州で乳牛十五頭が口蹄疫に感染した疑いがあることが公表されたのをはじめ、京畿道、忠清南道など三道六市郡の十五農場で肉牛六十二頭、乳牛十九頭が口蹄疫に感染した。拡大を防ぐためにウシなど二千二百二十三頭を処分、発生場所に近い農場の家畜に対するワクチン接種も行った。
農水省は日韓両国のウイルスが異なることを指摘、両国における感染を関連付けて考えることには否定的だが、感染経路はいずれも判明していない。
宮崎県は「(ほこり、くしゃみなど)空気伝染は考えにくく、人、車、飼料、家畜の出入りなどを介した伝播(でんぱ)の可能性を含め調査中」と発表したが、結論は得られていない。当初は、風で日本に運ばれた中国北西部の黄砂が感染源−との見方もあったが、国内での感染が宮崎県内の三カ所にとどまっていることから、「黄砂によるものであればもっと広い範囲に及ぶはずだ」(宮崎県)としている。
また、周辺諸国から輸入した飼料用のわらが感染源との見方もあるが、はっきりしていない。
生物兵器によるバイオテロを研究している専門家の間では「わらなど飼料の流通過程で人為的にウイルスを混入した疑いも否定できない」との見方がある。「ヒトにも被害を及ぼす本格的なバイオテロのために、口蹄疫を使って行政サイドなどの対応をみていると考えることもできる」(防衛庁筋)との指摘もある。
「一般的に行政サイドのバイオテロに対する認識は低い」(防衛庁筋)こともあり、防衛庁では五月下旬に防衛庁長官の私的懇談会として部外有識者八人程度で構成する「生物兵器対処懇談会」(仮称)を発足させ、意識の喚起を図っていくことを検討。平成十三年度からの「中期防衛力整備計画」(次期防)の柱の一つになるNBC(核・生物・化学兵器)対策の確立を急ぐ方針だ。

  ■口蹄疫

口蹄疫(こうていえき) ウシ、ヒツジ、ブタなど偶てい類のウイルス性急性伝染病。発熱や流涎(よだれ)に始まり、口や鼻などに水泡が発生する。発育障害が残り、死に至る場合もあり、畜産業への影響が極めて大きい。予防法はなく、感染したウシなどの迅速な焼却処分が頼り。一般的にはヒトには感染せず、口蹄疫にかかった家畜の肉を食べても人体への影響はない。農水省によると、最後に国内で発生したのは明治四十一年。明治三十三年から四十一年にかけて、東京都を含む首都圏、石川、岐阜、兵庫、福島各県などで、約四千頭のウシなどが感染した。一九九七年には台湾でブタの間に大流行し、ウイルスが潜在しているとされる中国から密輸された家畜が原因との見方もあったが、感染経路は 判明していない。
 
       (Ψ空耳の丘6Ψ投稿NO: 2000/5/10 15:46:58
          投稿者: FP親衛隊国家保安本部)
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●大阪ではオウム騒動が一段落したあとに病原性大腸菌O-157の大規模なアウトブレイクが起き、今年は雪印の“再生牛乳”が汚染源となった(と考えておこうか)。
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       遺伝子解析で原因解明へ
          雪印乳業の健康被害

 雪印乳業の低脂肪乳問題で、大阪工場のバルブから黄色ブドウ球菌が検出されたのを受け、同社は二日、毒素の検出とともに、遺伝子レベルでも検査を進め、原因解明に努める。
 和歌山市衛生研究所が六月三十日、被害者の飲み残しなどから黄色ブドウ球菌の毒素をつくる際に働くエンテロトキシンA遺伝子を検出。同社はバルブから検出された黄色ブドウ球菌を検査のため埼玉県川越市にある同社の分析部門へ送り、バルブで見つかった菌にこれと同じ遺伝子があるかどうか調べる。
 毒素をつくる遺伝子が合致すればバルブに付着した黄色ブドウ球菌が低脂肪乳にも混在していたことの裏付けとなる。 
 低脂肪乳の原料の脱脂粉乳、バターなどの毒素検査の結果は、二日にも判明するという。
 毒素の検出は同社のほか和歌山市などで行われているが、大阪市や兵庫県の検査では出ていない。
 黄色ブドウ球菌は常在菌でひろく存在するため、菌だけでは原因とはいえず、産出された毒素の検出が中毒と断定するための決め手とされる。 
          (共同通信、07/02 08:01)
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●それにしても大阪は、アウトブレイクがどうして集中的に多発するのだろうか? 大阪といえば。かつて「梅田奇病」という不思議な伝染病がアウトブレイクを起こしたこともあった。これは阪大の周辺で、731部隊が生物兵器にしようと目論んでいた高麗出血熱が、なぜか突発的に流行したというものだった。
 ちなみに731部隊の膨大な実験データは米国陸軍の生物戦研究拠点があるメリーランド州フォートデトリックに送られた。そのなかには高麗出出血熱の研究データも含まれていただろう。 
 オウム騒動が起きる直前の時期に米国中西部の先住民居留地で空気伝染して急死するという全く未知の感染症が突発出現したことがある。当時は「ナヴァホ奇病」などと呼ばれ、全米科学者連盟はユタ州の生物戦実験場からウイルス兵器を搭載したミサイルをこの土地に着弾させた攻撃実験の結果だと警告していた。ほどなく「ナヴァホ奇病」の病原体が高麗出血熱と同種の――だが“新型”の――ハンタウイルスだと判明した。そういえばユーゴ内戦でもハンタウイルスによる死者が少なからず出ている。
●そういや病原性大腸菌O-157が日本で最初に社会的注目を集める事件を起こしたのは10年ほど前に埼玉県の保育園でアウトブレイクが起き、園児が死亡したからだったが、汚染経路については不可解なことが多かった。
 公式には、飲用に使用していた井戸水が、近くの下水に汚染されていたという説明が行なわれたが、井戸からは注射器が発見されていた……。地理的には防衛医大からさほど離れていない場所でおきた怪事件であった。
●しかし病原性大腸菌O-157の日本におけるアウトブレイクは、埼玉の保育園が最初ではない。私の記憶では、たしか第一例は80年代の半ばに大阪のファーストフード店で起きていたはずだ。ここでも「大阪」が出てくる……。
●もうひとつ、ついでに言うと、病原性大腸菌O-157がユニークなのは、大腸菌なのに(赤痢菌に特有だった)「志賀毒素」を生産する能力を持っている点に他ならない。どうしてそういう芸当ができるかといえば、「志賀毒素」産生能を有する遺伝子を含んだ環状DNAを、大腸菌が外部環境から取り込んで、すっかり性質を変えてしまうからだ。  (多くの病原菌――特に生物戦用に配備されてきた“定番”病原細菌の大部分――は、こうした“毒素遺伝子を外部から受け入れる”というメカニズムで、無害な細菌が猛毒病原菌に変身する。)
  しかし実は、80年代の初めに、米国陸軍が大腸菌に「志賀毒素」遺伝子を注入する実験を計画し、当時大きな科学論争が起きているという事実があるのだ。 このころはまだ実験規制が厳格で、毒素遺伝子を菌体に導入する遺伝子組換え実験は禁じられていた。米国陸軍はそのタブーを破ろうとして実験規制当局であった国立保健研究所・遺伝子組換え諮問委員会に実施申請を出したのだが、むろん計画が事前公開されて非難の大合唱が起きたというわけ。 
 米国陸軍は、大腸菌に「志賀毒素」――「赤痢様毒素」とも呼ばれていたが――の産生遺伝子を導入する実験を結局実施することができた。 これ以降、「赤痢菌の毒素を作る大腸菌」すなわち“病原性大腸菌O-157”のアウトブレイクが世界各地で頻発するようになった。
 公正のために申し添えておくが、この“公式的”な遺伝子組換えが行なわれる以前から、同様の病原性大腸菌による症例がいくつも報告されてはいた。 だから陸軍として、その「対策」を研究するという大義も立ったであろう。 しかし、この時期に米国を中心に実施されていた「遺伝子組換え実験安全指針」はさほど決定的な強制力を持ってはいなかったし、民間企業を縛ることは難しかった。 だから、「赤痢菌の毒素を作る大腸菌」が遺伝子操作で作り出された疑いは消せない。

●さて、前置きがすごく長くなったが――すいません……m(_ _)m――大阪で目下、もうひとつのアウトブレイクが問題化している。セラチア菌という比較的ありふれた細菌による院内感染で老人が連続死した事件である。なんでもセラチア菌による院内感染は国内で2例目とか……。
●「セラチア菌」という言葉を聞いて、引っかかったことがある。かつて冷戦まっさかりの頃、米軍がアメリカ国内の数百ヶ所で、実際に細菌兵器が用いた場合に菌体がどのように飛散するか、などを調べるために、市街地でセラチア菌(霊菌)や枯草菌をばらまいていたことが発覚して大問題になったことがあるからだ。 なにぶん古い話だし、その詳細については、手元に十年以上前の調査ジャーナリズムの単行本(米国のものですでに絶版)があるだけだ。
●オウム騒動の頃、いわゆる「亀戸異臭事件」がらみで「オウムが亀戸道場から炭疽菌をばらまいた」という戦慄すべき報道が喧伝されたことがあった。 しかし米ソの生物戦の歴史を少しでも調べれば、それがガセネタの“飛ばし報道”であることは瞬間的にわかる。 実際に細菌を(生物戦実験用に)市街地にばらまくとどうい うことになるか――この疑問については、問題の単行本を読めば多少は理解できる。つまり日本で起きている事態を冷静に分析するためにこの本の出版企画をあちこちに持ちかけたのだが、どの出版社からも「関心がない」と突っ返された。 日本には腐るほど出版社があり、それこそ腐るほどの書籍が世に出ているのだが、出版が啓蒙の役割を果たしておらず、紙資源をいたずらに浪費しているだけというこの国の悲観的な出版状況は、編集者たちの知的感受性の欠落と不勉強が、致命的な“貢献”をしていると感じざるを得ない。 かくして、馬鹿マスコミのインチキ報道を“信仰”して突っ走るバカ国民大衆が大量生産され続けるのである。
●……と、出版業界への愚痴を書いてしまったのは、これから紹介する資料が、不本意ながらボツになった出版企画書だからであります。 それにしても、院内感染が「自然発生した」とは限らない場合だって、ありうることは知っておいたほうがいい。 実際、米国では生物戦研究の一環として市街地でセラチア菌などがばらまかれ、現実に老人などに死者が出ているのだから……。

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 【参考資料】 翻訳出版企画のご案内

   「細菌兵器の黒い霧
    ──米国の市街地散布・生体実験の真相」

●原著――『Clouds of Secrecy :
  The Army's Germ Warfare Tests over Populated Area』
   (1980,1989)

●著者―― Leonald A.Cole


●原著の目次

アラン・クランストンに上院議員による緒言
著者のペーパーバック版への序文
原著序文

第1部:アメリカ細菌兵器開発小史
 1.未だ晴れぬ黒い霧:私はなぜこの本を書いたか?
 2.敵をばい菌で攻め殺せ:アメリカの細菌戦争と生体実験の歩み

第2部:細菌戦争実験の歴史と遺産
 3.スコットランドの幽霊島:グルイナード島で何が起きたか?
 4.フォート・デトリックの迷宮
 5.細菌戦実験で軍部は市街地に何をばらまいたか?
 6.空気伝染、イン・ザ・USA〜♪

第3部:細菌戦実験ついに法廷へ
 7.黒い霧のサンフランシスコ
 8.エドワード・ネーヴィン訴訟の顛末

第4工つ学時代の脅威
 9.危機アジりはアジアから:「黄色い雨」騒動
 10.「遺伝子」の軍事動員:DNA組み換え技術が生物戦を変える
 11.暴かれた生物戦実験秘再開計画
 12.不安は深まるばかり…

付録
1.『連邦議会・議員向け報告書:合衆国の生物戦争計画における合衆国陸軍の諸活動』の抜粋(1977年3月8日)
2.上院・厚生科学小委員会公聴会に提出された陸軍報告書の抜粋(1977年3月8日及び5月23日)
3.人口密集地域における細菌兵器様物質散布実験の安全性を主張する陸軍当局の意見に対する、スティーヴン・ウェイツマン博士とJ・メーセン・ジョセフ博士の反論の報告書抜粋
4.「生物学的防衛活動計画」に基づく現在の野外実験、アメリカ国防総省が提出した報告書の抜粋(1986年5月)

●原著の裏表紙に載っている本書の推薦文

「レオナード・コールは細菌戦の研究の実態を徹底的な調査で究明し、その知見をアメリカの国民大衆に知らしめることによって第一級の社会的貢献を成し遂げた。彼が暴き立てた細菌戦研究は、アメリカの一般国民を、何も知らせずに、同意さえ取らぬままにモルモット代わりに使っていたのだ。これは、まさに暴露が待たれていた現実なのだ。」──ノーマン・カズンズ

「これは陸軍が20年間にもわたって秘密裏に続けてきた生物戦実験を、徹底的に追及した記録である。……陸軍の官僚たちは、米国各地の239カ所で子供や老人、あるいは体力の“弱った”人々を感染症の危険にさらし続けてきた。本書を読めば、この連中がそれを知っていながら行なっていたことがよくわかるし、“知らなかった”では到底済まされない事態の重大さが理解できよう。」──ニューヨーク・タイムズ・ブックレヴュー

「本書の中の、ニューヨークの地下鉄内やサンフランシスコのベイエリアで行われた(細菌兵器様物質散布)事件のくだりは、すべての良識ある市民が読むべきものである。コール氏の成し遂げた貢献は、市民のみならず医学や生物学に携わる科学者たちにとっても途方もなく重大である。」──ジョナサン・キング(マサチューセッツ工科大学・分子生物学教授)

「生物兵器は現代戦で公然と用いられることは決してない。だから、一般市民には、核兵器ほどの認識は行き渡っていない。しかし、この兵器の怖さをわれわれは十分に認識しておく必要がある。コール博士が入念な調査で書き上げた本書は、この重大な問題を考えるうえでの、考えうる限りの最善の入門書である。」──ニコラス・ウェイド(ニューヨークタイムズ紙論説委員、科学ジャーナリスト)

「コール氏の本は、アメリカの夫婦立憲民主政が抱えている深刻な問題を取り扱っている。読めばただちに判ることだが……国防どころかそれ以前に一般市民を軍部の魔手から守らねばならぬような状況なのであり、議会の行政監督能力が問われているのである。」──サイエンス誌

「コール博士が徹底的調査の末に書き上げた本書は、合衆国政府が自国の一般大衆をモルモットがわりに使って生物戦争生物の実験を行っていたという事実を、よくわかる形で世に示した。……ここでひとつ根本的な疑問が生じる。つまり、わが国の安全を脅かしているのはソ連の生物兵器開発計画よりも、むしろ自国の生物兵器開発計画ではないのか、という疑問である。」──ポール・C・ウォーンケ(SALTU[第二次戦略兵器制限交渉]交渉団代表夫婦間)


●本書の内容について

 米国の1970年代後半は、絶対王制の伏魔殿のごとき様相を呈していた。ホワイトハウスからR・M・ニクソンを追放し、傷だらけの状態でインドシナ戦争の泥沼からもようやく這い出して、200年前の建国当時の初心に帰って国家的再出発を期すべく、議会もジャーナリズムも、行政の闇の“犯罪”を究明するのに全力を注いでいた時期だったといえる。実際、上院の政府秘密活動小委員会は、マインド・コントロールや超能力研究からカストロ暗殺計画の失敗談の数々まで、まったくに仰天するようなCIAの秘密活動の実態を明るみに出した。
 本章が論じている問題──米国軍部による全米各地の人口密集地の国民大衆をモルモット代わりに用いた細菌戦争実験──も、そもそもはこの時期に議会で明らかになった陸軍の活動報告が出発点となっている。それによればアメリカ陸軍は1949〜69年の20年間にアラスカやハワイをも含む全米2 39カ所の市街地で霊菌(Serratia marcescens :水・土壌・牛乳・食物・蚕その他の昆虫などの中に生み出されるセラチア属の標準種の細菌で、免疫不全患者への病院内感染も報告されている)や枯草菌(Bacillus globigii)や蛍光性のある硫化カドミウム亜鉛などを秘密裏にばらまき、その拡散の仕方を観察していたのである。硫化カドミウム亜鉛は有害の重金属であるし、霊菌や枯草菌は老人や子供や免疫力が低下した人々を容赦なく襲う潜在的な病原体である。アメリカ軍部は生物戦の防衛研究の一環としてこうした微生物や微粒子をたとえばサンフランシスコのベイエリアやニューヨークの地下鉄内て人知れずばらまき、その結果、市民の間に病者や死者を生み出してきた。
 本書は、アメリカ陸軍が生物戦研究に手を出し、自国民を相手に市街地で極秘生体実験を行うに至った経緯──これは石井部隊幹部とのヤミ取引を通じて日本の戦後処理問題とも分かちがたく結びついている──を概観し、77年の議会報告以降、明らかになった市街地での細菌戦実験の実態を暴露し、さらに、サンフランシスコでの秘密実験で祖父を失ったエドワード・ネーヴィン氏が国を相手に起こした訴訟の顛末についても詳細な報告を行っている。ネーヴィン氏の訴えは結局、連邦地裁にも高裁にも最高裁にも門前払いにされた。しかし訴訟手続きの中でこの実験の危険性や政府当局の秘密主義的な体質が明らかになった。そして80年代……レーガン政権の時代が訪れ、アメリカ軍部の生物戦研究は再び活発化する。84年には、一般設備の補修費という偽装的な名目で、陸軍がユタ州ダグウェイの生物化学兵器実験場──ここは1968年に神経ガスの野外散布実験で周辺農家の羊6,300匹が事故死し大騒動になったといういわく付きの場所である──にP4レベル(エボラ出血熱や天然痘などの最も危険な病原ウイルスに対応)の最高厳戒実験施設を建設しようと企てた秘密計画が発覚し、全米規模の論争にまで発展していくことになる。生物戦研究に再び拍車がかかったのは、内外ふたつの要因が効いている。内因は、1973年に技術が確立し76年に本格的な実験が可能になったDNA組み換え技術の登場であった。生物兵器は1度使用すれば勝手に増殖して敵も味方もなく伝播するので兵器として制御しにくい、という難点を抱えていたが、遺伝子工学の登場によって、この点を“工学的”に克服する望みが出てきたのだ。しかしこうした内輪の都合だけでは予算獲得はおぼつかない。なにしろ米国はニクソン政権の時に、生物兵器の装備や開発を一方的に放置した経緯があるからだ。そこでソ連の脅威をあおる怪しげなデマゴギーが喧伝されることになった。要するに外因である。盛んに言い振らされたのは、「70年代にソ連がアジアで使った生物兵器」という決めつけが行われているいわゆる「黄色い雨」と、「生物兵器の漏出事故」だと決めつけられて喧伝されたソヴィエト・ロシアのスヴェルドロフスクの炭疽の集団発生事件であった。「黄色い雨」の正体は大量のハチの糞であったが、米国政府はこれを「巧妙に偽装されたソ連の毒素兵器である」と言いはった。スヴェルドロフスクの一件について、ロシア政府当局は食肉汚染で起こった中毒事故と言い張っているが、真相は10数年たった今なお不明である。(これを生物兵器の漏出事故と決めつけるのであれば、例えば大阪堺市の病原性大腸菌O-157株による異常に大規模な中毒事件や、数年前の新型コレラ菌によるインドや南米での大規模な突発的流行も“秘密生物戦の成果”と決めつけてよいことになるだろう。余談になるが、「黄色い雨」や「炭疽菌兵器漏出」説が喧伝されていたのと同じ時期に、アメリカ空軍情報部は「ソ連がセミパラチンスクに粒子ビーム兵器を保有している」というニセ情報を流し、これがSDI計画浮上の有力なきっかけになった。) 本書は、遺伝子工学時代の生物兵器開発ブームを支えたこの内外ふたつの要因についても、しっかりと目配りをきかせている。そして、このブームの中で再び一般市民を巻き込んだ秘密の生物戦実験が行われる可能性に、警告を発している。
 生物兵器は、本質的に、秘密戦争用の兵器であり、地域紛争などのLIW(低強度戦争)には絶好の手段である。その意味では、「冷戦」体制が崩壊した昨今、ますます(潜在的な)“出番”が増えた兵器といえよう。しかし、この兵器の問題点を論じた書物は──日本の出版物はもちろんであるが英語で書かれたものも──意外なほど少ない。日本の出版物としては、今はもう大きな図書館の書庫でしかお目にかかれぬ『生物化学兵器』(スティーヴン・ローズ著、みすず書房)と、和気朗著の中公新書から出ている同名の書物があるくらいだが、これらは本質的に60年代の作品であって、その後の生物学の発展にまったく対応できていない。このほかSIPRI年鑑の最近数年間のものが邦訳されているし、731部隊についても少なからず書籍が出ているが、いずれも遺伝子工学自体の生物兵器の脅威を見据えているとは言いがたい。私は遺伝子工学の軍事利用の危険性について70年代末から関心を持ち続け、その方面の文献の探求を続けてきたが、通読する価値のある英語圏の書籍は本書をあわせて3冊しかない。(ちなみにあとの2冊は『Gene Wars:Military Bontrol over the New Genetic Tecnologies』by C.Piller & K.Yamamoto と『Preventing a Biological Arms Race』by Susan Wright)である。いずれも日本で邦訳出版されるべき意義を有しているし、私自身に機会が与えられるならばぜひ翻訳したい本でもあるのだが、こうした分野のはかなりボリュームのある書物が濃い訳出版の日の目を見る可能性は、残念ながら目下の日本では極めて低いと判断せざるを得ない。) この3冊のうち、アメリカの対市民向けの細菌戦極秘実験の実態を詳細に暴露したものは本書だけである。本書はジャーナリスティックなアプローチで、生物戦研究の──その起源において大いに旧日本軍と関係がある──最近50年間の展開と将来の危険性を追及しているという特徴を有しており、しかも全188ページ・本文195ページと、翻訳出版の本を読むとしては最適の分量である。


●翻訳出版の意義

 本書が詳述しているアメリカの対市民向け細菌戦実験については、日本ではほとんど知られていない。94年末から95年初めにかけて米国の対市民向け放射能投与生体実験の調査ジャーナリズムが日本でも大きく取り上げられた。米国ではこの時に本書の事件についての論及も行われたし、「原因不明」のいわゆる「湾岸戦争症候群」にも、この事件と似た──生物化学戦対策用のワクチンや薬物についての──生体実験が行われた可能性があるという指摘が出たが、日本には伝わってこない。オウム騒動の際にマスコミは亀戸の“宗教施設”からオウム教団が炭疽菌をばらまいたというインチキ報道を行なったが、本書にも言及されているグルイナード島実験の顛末を知っていれば、そういうナンセンスな“飛ばし報 道”は出てこなかったはずだ。私は日本のジャーナリズムの幼稚さを呆れ果てて眺めていたわけだが、生物兵器についての議論が高まりつつある今日、本書は必読書なのである。

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追記――この企画書を書いたのはオウム騒動さなかのことだった。 どの出版社からも無視されたので、放置しておいたのだが、先日来の大阪のセラチア菌院内感染事件に引っかかるところがあり、恥ずかしながら公表させていただく。 (商売の舞台裏をさらすので、ホントウに恥ずかしいのです……。) それにしても私には、日本第二の巨大都市である大阪が、生物戦の演習現場にされているように見えてしまうなぁ〜。



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