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■《天声人語》2000.7.2
中尾栄一元建設相が、公共事業の入札にからんで建設業者から金をもらった
疑いで逮捕された。もし、と考えてみる。もし、逮捕が総選挙投票日よりも前
だったら、選挙結果にどんな影響を及ぼしただろうか、と。
選挙期間中、青木幹雄官房長官、自民党の野中広務幹事長、亀井静香政調会
長の3人が、同じ日にそろって故竹下登元首相の弟、亘氏(島根2区)の応援
に参じた。青木氏は「公共事業批判など気にしない。選挙後、5000億円の
予備費をつぎ込む。官房長官として約束する」とぶった。
亀井氏も「島根県は(1人当たりの)公共事業が日本一だ。(私の地元の)
広島県に来るゼニまで来ている。竹下先生が引退するというのでチャンスが来
たと思ったが、亘さんではチャンスがない」と候補者を持ち上げたそうだ。公
共事業と政治家・官僚は、深くかかわっている。
政治家・官僚と建設業者も、ときに深くかかわっている。こんども中尾容疑
者だけでなく、派閥の親分クラスを含む自民党の2人の代議士側にも金が渡っ
た、といわれる。もし、逮捕が応援そろい踏みの前だったら、あんなふうに手
放しで公共事業を礼賛する演説ができたかどうか。
ずさんな経営で左前になった「そごう」への「税金救済」策が決まった。こ
れも、もし投票日前に発表されていたら、と考えてみる。なにしろ責任者の金
融再生委員長みずからが「最善の判断とはいえない」と述べた内容だ。投票日
前に決定されたら、連立与党にとってかなりの痛手になったに違いない。
一方で、経済企画庁は選挙の真っ最中に「景気底入れ」を宣言した。昨年4
月が景気の「谷」で、その後は回復局面に入った、といった中身。ならば先行
きは明るい、という気分にもさせられる。景気回復宣言に似た印象を与え、与
党への追い風効果を狙った、との観測も飛んだシロモノだった。
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それにしても「派閥の領袖クラス」が「亀井」の実名に代わるのはいつなんだろう?