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【テヘラン16日=佐藤秀憲】
イランで、ユダヤ系イラン人がスパイ容疑に問われている裁判で、十六日までに十三人の被告のうち八人がイランと敵対関係にあるイスラエルへの情報提供などを認めた。数週間以内にも下される判決で、有罪は免れないと見られる。だが、自供偏重の非公開裁判には、欧米諸国などから批判の声が上がっており、判決は、イランと欧米諸国の関係悪化の新たな火種となる可能性もある。
裁判は四月末に始まり、これまで、九被告に対して罪状認否が行われた。
被告の一人の教師は、イスラエルの情報機関・モサドに対し、イランの軍事・宗教施設や病院、架橋などの情報を提供していたことを認めた。別の被告(国営会社職員)は、「ユダヤ系イラン人をスパイ要員として勧誘する役を務めていた」と自供した。
だが、裁判は、治安維持を理由に非公開とされ、被告の自供以外、容疑を裏付ける具体的証拠も不明だ。このため、欧米諸国や国際人権団体などは、裁判の公正さに疑問を表明。ゴア米副大統領が、「(裁判)手続きの正当性に疑問を抱かざるを得ない」と述べるなど、人権尊重を求める国際的圧力が強まっている。
欧米諸国との関係改善を進めるハタミ政権としては、公正な裁判を実現し、裁判が対外関係へ与える影響を最小限に食い止めたいところ。しかし、スパイ裁判を扱っている革命裁判所は保守派の牙城(がじょう)で、改革派のハタミ政権の意向が判決にどれだけ反映されるかは疑問だ。体制転覆を意図したスパイ行為と認定された場合、死刑を含む重罪が言い渡される可能性もあり、同政権が対応に苦慮する事態も予想される。
(5月17日01:00)