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失敗タブー視せず挑戦的開発を 宇宙開発委報告書案
日本の宇宙開発の立て直しを検討してきた宇宙開発委
員会特別会合の報告書案が固まった。失敗の危険性(リ
スク)を明確にしたうえで挑戦的な宇宙開発を続ける意
義を強調、失敗も視野に入れた開発を求めている。米国
からの技術導入で効率的に進められた日本の宇宙開発で
は、失敗はタブー視されてきた。報告書案は、この発想
の転換を迫った形。16日午後の会合で承認される見通
しだ。
宇宙開発委は国の宇宙開発政策を決め、首相に意見を
述べる機関。特別会合は、宇宙開発事業団の主力である
H2ロケット8号機が昨秋打ち上げに失敗したことをふ
まえて委員長の中曽根弘文・科学技術庁長官の呼びかけ
で始まり、宇宙開発委員や有識者が議論を重ねてきた。
報告書案は、宇宙開発を進める上での基本的視点と改
革策の2章構成。
基本的視点では、宇宙開発は「リスクの高い先進的技
術開発」であり、最大限の努力をしても「一定の失敗は
あり得る」とし、リスクを明確にし、国民に示して理解
を得るよう求めた。その一方で、国の重要なプロジェク
トだとして、先端的で挑戦的な取り組みを続けることが
不可欠であるとしている。
ただ、報告書案は、失敗の可能性を予算にどう反映さ
せるかについて具体的に言及していない。今回の提言が
国民に受け入れられるためには、この問題は避けて通れ
ず、科技庁などは重い課題を突きつけられた形となった。
改革の具体策としては、事業団に対し、1社が責任を
もってシステムをとりまとめる契約方式(プライム契
約)の促進を求めた。8号機のエンジンの故障個所は2
社が開発した部品の接続部分。こういう部分はトラブル
が起こりやすく、製造責任も不明確だった。
開発が終わった技術は速やかに民間へ移転する一方、
開発後に得られた情報であっても事業団が蓄積し、役立
てるよう提言している。また、製造工場に事業団の駐在
員を置くことなどを求め、重要な基礎技術について宇宙
での実証実験の必要性も強調している。(09:59)