インターネットがらみの知的所有権をめぐる2つの動き

 
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投稿者 佐藤雅彦 日時 2000 年 5 月 13 日 01:40:11:

●韓国ではビジネスモデル特許の乱用に規制、米国ではMSが知的所有権乱用まがいの恫喝[どうかつ]……。
 
以下は、インターネット特許紛争の“二都物語”。

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韓国公取委はインターネットビジネスモデル特許を乱用する企業を
   “不公正行為”で取り締まるとを発表

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朝鮮日報2000年5月9日17時13分

公取委「デジタル経済の方向」発表
   http://japan.chosun.com/site/data/html_dir/2000/05/09/20000509000003.html

 公正取引委員会(公取委)は、最近新しい事業手段として関心を集めているインターネットビジネスモデル(BM)特許を乱用する企業を不公正行為で取り締まるとを発表した。
 また、電子商取引(オンライン業者)の詐欺販売を防止するため24時間インターネット監視体制を構築し、オフライン業者の電子商取引妨害行為も取り締まる。

 公取委は「インターネット技術、情報通信技術と事業アイディアを結合させたインターネットビジネスモデル特許を乱用することが多く、競争事業者が新たに参入できず消費者被害を招く憂慮が大きい」とし、これを積極的に取り締まるという。

 取り締まりの対象には、特許保有者がライセンスを与える際、営業区域を制限したり、排他的な条件付き取引を強要する行為、特定事業には必要不可欠で広い範囲にわたり利用することができる特許を保有した企業が他の事業者にライセンス附与を原則的に拒否する行為が含まれる。

 また電子商取引定着のため、公取委は直ちにオフライン業者がオンライン業者の事業を妨害する行為に対する実態調査に着手する。これとは別に情報化支援資金24億ウォンで電子商取引サイトの誇大広告など不当行為を監視・摘発する検索エンジン‘人工知能型監視ロボット’を来年下半期から稼動する。

 また‘ショッピングモール評価サイト’を構築し、インターネットショッピングモール法違反の実態や優秀ショッピングモールなど、各種情報を提供する。

 公取委は6月中旬にはサイバー消費者団体とネチズン同好会で構成された電子商取引監視団を発足する。

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・オープンソースの掲示を検閲しようとするマイクロソフト
■ http://japan.cnet.com/News/2000/Item/000512-5.html?mn
米マイクロソフトは、オープンソースのニュースサイト『Slashdot.org』に
  対して、同社の著作権を侵害しているとマイクロソフトが主張している読者
  コメントを削除することを強制しようとしている。

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CNETニュース日本版
   http://japan.cnet.com/News/2000/Item/000512-5.html?mn

オープンソースの掲示を検閲しようとするマイクロソフト
By Ian Fried and Jim Hu/日本語版 喜多智栄子
Thu 11 May 2000 12:35 PT
 米マイクロソフトは、オープンソースのニュースサイト『Slashdot.org』に対して、同社の著作権を侵害しているとマイクロソフトが主張している読者コメントを削除することを強制しようとしている。

 ソフトウェア大手のマイクロソフトは、スラッシュドットの親会社である米アンドーバー・ネットに、「著作権抵触に関する通告」を送付し、デジタル・ミレニアム著作権法(DMCA)の遵守を要求した。連邦法の下でインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)は、他者が掲示したデータが著作権を侵害していると著作権保有者によって通告を受けた場合には、他者が掲示したデータを取り除く義務を持っている。

 スラッシュドット( http://www.slashdot.org/ )の読者が、『Windows 2000』オペレーティング・システム(OS)と同社が使用しているウェブセキュリティー技術『Kerberos』(ケルベロス)の仕様を不適切に掲示したとマイクロソフトは主張している。ソフトウェア最大手のマイクロソフトは最近、自社のウェブサイトでこの情報をダウンロードして入手できるようにしたが、ダウンロードの際にはこのようなデータが「機密」であり「企業秘密」であることに同意するよう要求している。

 マイクロソフトがスラッシュドットから情報を削除することに成功するかどうかにかかわらず、インターネットに流出したデータはもはや企業秘密の保護が適用されないのではないか、と法律アナリストたちは述べている。ただしこういった案件も、より制約が少ない著作権法によって保護される可能性は高いという。

 「最も可能性が高いのは、企業秘密という扱いを受けなくなることだ」と、米グラハム&ジェームズ(本社カリフォルニア州パロアルト)のパートナー、ロン・レミューは述べた。「マイクロソフトが現在行なっている行為をさして、削除を働きかけるべきだと言っているのではない」

 Kerberosは、マサチューセッツ工科大学(MIT)が開発した認証と暗号化のソフトウェアだ。Windows、UNIX、Macintosh版がオープンソースの形式でMITから入手することができ、マイクロソフト、米オラクル、米クアルコムその他の企業が商用ソフトウェアに利用している。ところが他のソフトウェア企業とは異なり、自由に入手できるKerberos形式にマイクロソフトは同社独自の拡張を付け足している。

 マイクロソフトのウェブサイトから拡張をダウンロードするには、まず最初に「この仕様は機密情報であり、マイクロソフトの企業秘密である。従って、この仕様を何人にも公開してはならない」と述べる箇所がある断わり書きに同意しなければならない。

 「DMCAの条項の下でアンドーバーは、甚だしい著作権の侵害という今回の件で正式通告を受けて、問題のコメントを自社のサービスから取り除いてくれると期待している」とマイクロソフトの担当者、J・K・ウェストンはアンドーバー・ネットへの書簡で述べている。

 マイクロソフトの広報担当者、アダム・ソーンはこの書簡がマイクロソフトが送付したものだと認めた。「私たちはスラッシュドットのウェブサイトで違法行為が行な われている可能性を知らせるために手紙を送った」とソーンは語った。

 スラッシュドットの編集者ロビン・ミラーによるマイクロソフトに対する応対が、スラッシュドットのサイトに掲載された。このコメントでミラーは同組織が、ミラーによれば「読者コメントの検閲要求」に関して読者と法律家からアドバイスを求めていると述べた。

 「私は言論の自由が、米国の法律の下では技術革新を行う自由という権利と少なくとも同じくらい重要な原則だということに誰もが同意すると思う。そこで一般の人は個人として、マイクロソフトは企業として、私たちが検閲行為に携わることに対して躊躇していることを理解できるだろう」とミラー。「実際のところ、自由ということの本質をほんの少し考えてみれば、この要求を撤回したいと考えるようになるかもしれない」

 ミラーは、掲示を削除するのは「マイクロソフト自身が全部を、あるいはその一部を所有しているものを含めて、他のニュースサイトおよびオンライン・サービス企業にとって悪い先例になるかもしれない」と付け足した。

 ソーンは、マイクロソフトの唯一の意図は、これらの仕様が条件に従って取り出され、配布されるのを保証することだと述べた。「私たちが要求しているのは、マイクロソフト版Kerberosの仕様をダウンロードしたり評価したい人たちは、著作権法およびDMCAに準拠する方法で行なうべきだということだけだ」とソーン。

 「スラッシュドットや他のどこであっても、人がコメントするのを止めさせようという意図はない」とソーンは付け足した。「これは言論の自由の問題ではない」

 電子プライバシー情報センター総合顧問、デビッド・ソベルは、この件に著作権法がどう適用されるかは明確ではないが、直接的な影響については予測がつくと述べた。

 「法的問題に対応するだけの資金を持たない小規模なウェブサイトに対して、威嚇の方法として著作権法を引き合いに出すこともできる」とソベル。「これは今日の著作権法制度が持っている深刻な問題で、簡単に濫用が行われてしまう」

 「解決されていない法律上の問題が数多くあり、小さなサイトはマイクロソフトの弁護士から手紙を受け取ると、大抵の場合、そのサイトはテストケースにされるのを望まない」

 弁護士たちは、マイクロソフトがデータの削除を勝ち取ることはできるかもしれないが、Kerberosのコードを企業秘密だと主張することによって、おそらくマイクロソフトが追求していた重要な保護については失ってしまったのと同じかもしれないと述べている。

 グラハム&ジェームズのレミューは、1990年代半ばのサイエントロジー教会に関するある裁判で連邦裁判官が、一度インターネットに乗ってしまった情報は、企業秘密とは言えないという判決を下したことを指摘している。

 この判決に基づいてマイクロソフトが取れるおもな行動としては、その情報を掲示した人たちを企業秘密の不正流用、契約違反、あるいは「データ変換」(他人の所有物を盗むことを表わすにしては凝った言い方だが)を理由に追求することだとレミューは述べた。

 ところが別の裁判所命令では、Linux OSを使用しているコンピューターなど、許可されていない再生装置でDVDを動かすことができるソフトウェアをインターネット経由で配布することを禁じる命令が下されている。それでも米ブロベック・フィレグル&ハリソンの知的所有権専門の弁護士、ダニエル・R・ハリスは、機密扱いにすることに匿名で同意することを条件として人に渡したデータに関して、企業秘密の保護を獲得するのは、マイクロソフトにとって大変な苦労になるだろうと語った。

 「このような方法で掲示をするのは、機密性を守るためには妥当な方法とは言えない」とハリスは述べた。「実際、もしそれが本当の企業秘密だというなら、同社はもっといい予防措置を採るべきだったのだ。別の見方をしてみよう、マイクロソフトは決してWindowsのソースコードを同じ方法で公開したりしないはずだ」

 マイクロソフトがKerberosのコードの利用を管理する能力について、裁判所の判決にもかかわらず、DVDのソースコードをプリントしたTシャツが存在するとハリスは述べた。

 「実際に、一度インターネットに流れてしまえば、この魔法使いは壷の外へ飛び出してしまったのであって、元に戻すのはほとんど不可能だ」とハリスは語った。

 セキュリティー・ソフトウェアのメーカー、米リライアブル・ソフトウェア・テクノロジーズの副社長ゲイリー・マグローは、Kerberosのマイクロソフト流のインプリメンテーションの詳細を公開するよう、マイクロソフトが圧力を受けていたと述べている。

 「暗号コミュニティーでは、自分のコードおよびアルゴリズムを公開して、間違いがないことを確かめることが非常に賢いやり方だと考えられている」とマグロー。「暗号で、すべてを正しく作るというのは非常に困難なことだ」

 マイクロソフトは、「抱え込んで拡張する」戦略を取り、オープン方式の標準を取り込んで機能を追加し、同社占有のものにしようとしているようだとマグローは述べた。

 「こうすれば、より多くの人がKerberosを使い始めるだろうというのは良い報せだ。しかし問題は、これがもはやKerberosではなくなってしまうという点だ」とマグローは語った。

日本語版関連記事

・DVDクラッキング裁判に乗り出す言論の自由擁護派弁護士たち

・『Slashdot.org』の成長を見込むアンドーバー・ネット





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