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回答先: 一部投稿を削除しました。 投稿者 管理人さん 日時 2000 年 5 月 10 日 04:27:14:
5月3日に発生した西鉄定期高速バスジャック事件で、インターネットが二つ
の意味で注目されています。まず、逮捕された無職少年(17)の未修整写真
や個人情報がインターネット上に流出したことが問題となりました。さらに事
前に“犯行声明”ともとれる正体不明のメッセージがネット掲示板に載り、そ
の真贋(しんがん)をめぐって論議されています。また少年の父親が「パソコ
ンを買ってからおかしくなった」と証言しているという報道なども現れました。
個人生活により密着したメディアに成長したインターネットとどう向き合うか
正面から考える時期がいやおうなしに来ています。
■ネット上に流出した「バスジャック犯」写真
そんな中、5月5日の「ニュースステーション」(テレビ朝日系)では、ネッ
トへの写真や情報の流出を問題視し、匿名性故に「一般社会の卑怯者のパーセ
ンテージよりもひょっとすると(インターネット使用者のほうが)拡大するか
もしれない」と萩谷順・朝日新聞編集委員がコメントを述べました。これを受
けて写真を転載したサイトは自ら「卑怯者呼ばわりされました」と表明してい
ます。しかし、この写真の流出先をたどってみると、なんと当の朝日新聞が海
外の通信社に配信したものと判明しました。朝日新聞が未修整の少年の写真を
外国の通信社AP(米)、AFP(仏)に提供したためです。この写真が「史
上最悪のゴシップマガジン」と自称するホームページに転用されたのです。
朝日新聞社によりますと、「5月4日に海外の通信社に提供した写真ですが、
『インターネット使用不可』の断り書きをAFPが付記し忘れたため、大手の
ニュースサイトに流れたと思われます。提供写真は修整を施していませんでし
た」と話し、5月7日の紙面でも認めています。
この写真以外にも逮捕された無職少年の写真や、事前の“犯行声明”メッセ
ージがインターネット上に転載されています。読売新聞社もネット上で放映し
た映像を取り込んで流されたと認めています。5月5日の紙面では少年の人権に
配慮して修整を施していたが「不十分ではなかったか、早急に見直しを進めた
いと考えています」と述べています。
「犯行声明」がネットに
正体不明のメッセージとは、著名なネット上の掲示板に“ネオむぎ茶”とい
う名前で投稿されていました。投稿日時は3日午後0時18分で、「佐賀県佐
賀市17歳…」の表題で「ヒヒヒヒヒ」とだけ書かれていました。バスジャッ
ク発生の直前であることに加え、メールアドレスから投稿者が佐賀県在住とみ
られることから真偽について論議を呼び、この投稿に関する発言は数多く載っ
ています。 5月9日現在、広島県警では「“ネオむぎ茶”=容疑者とはまだ
発表していない」と答えています。投稿発言の中には、少年に関する個人情報
を暴露したものや「楽しいですから、どんどん公表しちゃってください」や
「こっちのほうがわかりやすいですよ」など興味本位のものが多くなっていま
す。 また、少年が9日間通っていたといわれる高校の同窓会の書き込みページ
にも、誹謗や中傷など様々なことが書き込まれ閉鎖される事態となっています。
事件とインターネットが不可分な時代になってきているということです。
「電話が出来てしまったために可能になった犯罪が沢山あります。だから電
話をやめますか? 草の根メディアであるインターネットが普及してくれば、
犯罪が出てくることもある。だからといってインターネットを規制するのは本
末転倒であるし、“角を矯(た)めて牛を殺す”“豚を焼くために家を焼く”
というものですよ。コストがかからない便利なメディアとしてのインターネッ
トを批判するべきではないと思います」とインターネットに関する法律に詳し
い速水幹由弁護士は語気を強めて話しています。
また、ホームページの著作権に詳しい矢吹公敏弁護士は「表現の自由を重ん
じているアメリカでは(一般メディアが)犯罪者の顔写真を出すのが普通です。
残虐な犯罪には社会制裁が加わります。日本では少年法違反になってしまうの
で少年法が改正されない限りこのネット流出現象がつづくでしょう。もちろん
著作権法違反です」と話しています。1997年の神戸市の児童連続殺傷事件
で逮捕された少年の顔写真がネットに流れて以降、未成年の加害者の個人情報
などがネットで暴露される事態が続出しています。インターネットの場合発信
元を特定するのは難しいと考えられてきたからです。
「ネットユーザーの中に“匿名性幻想”があるのではないでしょうか。ネッ
ト上の痕跡は指紋以上に残ると言えます」と近畿大学と関西大学で講師を務め
る岡村久道氏が述べているように、発信元を特定するのはそれほど難しいこと
ではありません。
そういった誤解がインターネットという媒体を恐ろしいものと考える風潮を
招き、無前提に批判する向きもあります。しかし、来年中にも人口の半分が日
常的に接するようになるという巨大メディアの成長を止めることは誰にも出来
ません。LOVEウィルスも世界的に猛威をふるいましたが、これからはネットと
どう付き合っていくかこそが問題なのです。今回の事件に触発されて、11日か
ら国会審議入りする少年法改正案(3月8日号、15日号の「『実名報道と少
年法』を考える」をご参照ください)を含め、一人一人が考え、発言すべき時
が来ています。また、そのためのインターネットなのではないでしょうか。