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■桶川事件処分、警察組織の病巣浮き彫り
埼玉県桶川市で起きた女子大生刺殺事件に絡み、埼玉県警が六
日公表した調査結果は、必死の思いで女子大生が託した告訴状の
取り下げを求め、被害者調書の改ざんにまで手を染めるという上尾署
のずさんな対応をあぶり出し、警察組織の病巣を浮き彫りにした。そ
の動機を、県警は「告訴事件捜査の業務負担を回避しようという意識
によるもの」としたが、救いを求めていた女子大生は、告訴取り下げ
要請から一か月後に凶刃に倒れた。「被害者の訴えに耳を傾けない
など言語道断でした」。埼玉県警の幹部はそう言って深々と頭を下
げた。
調査結果を明らかにする記者会見が県警本部で始まったのはこの
日午前十時半過ぎ。西村浩司本部長、横内泉刑事部長ら県警幹部
五人が県庁第二庁舎五階の県警記者クラブに顔をそろえ、冒頭に一
礼。この後、西村本部長が「被害者の猪野詩織さんのごめい福をお
祈りするとともに、ご家族には心からおわび申し上げたい。名誉棄損
の捜査を全うしていれば事件は避けられた可能性が高く、痛恨の極
み」と約五分間、陳謝の弁を述べ、再度、五人が起立して深々と頭を
下げた。
配付された調査報告書の正式タイトルは「埼玉県桶川市における
女子大生殺人事件をめぐる調査報告書」。A4判で計十一ページ。
そして、同県警刑事部の茅野勝参事官が、読み上げる形で内容を
明らかにしていった。
◆被害者・家族への対応◆
懲戒免職となった同署刑事二課巡査長の本多剛容疑者(40)(虚
偽公文書作成などで書類送検)が、告訴前に、猪野さんからの聞き
取りに基づいて作成した調書の中にあった「告訴」の二文字を「届
出」と勝手に書き換えるなどしていたのは昨年八月三日ごろ。また、
本多容疑者の上司で当時、同二課長だった片桐敏男容疑者(同)ら
は、この際、「こういう場合は告訴でなく被害届でよかった」と言って
巡査長に調書改ざんを指示していた。
これを受けて、本多容疑者は「告訴はいったんなかったことにしてく
れませんか」「告訴状は犯人が捕まってからでも間に合います」など
と猪野さん側に伝え、事実上告訴取り下げを求めていた。
◆改ざんはなぜ?◆
告訴状を受理した場合、捜査状況について、県警本部への報告を
する必要があり、関係書類を検察庁に送る義務が生じる。
今回の調書改ざんについて報告は、「当時の片桐刑事二課長が、
告訴の受理件数を少なく装うことを目的に巡査長に指示した」と断
定、さらに、「被害者からの告訴を当初から受理していないことにしよ
うとしたことが認められる」と断罪した。
(4月6日12:08)