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【ジュネーブ28日福原直樹】
世界保健機関(WHO、本部ジュネーブ)が進めているたばこ追放キャンペーンに対し、大手たばこ会社がWHOなどに職員を送り込み情報収集やロビー活動を行っている可能性が強いため、WHOなど国連機関は独立調査委員会を発足させた。これらの職員はたばこ関連の内部会議に自由に出入りし、WHOの反たばこ政策に影響が出た可能性もある。委員会は6月にも報告書を出すが、国連を舞台にしたたばこ会社の「工作」が解明されれば、国際的に批判されそうだ。
WHOのデレク・ヤッホたばこ追放対策部長(南アフリカ)が毎日新聞に明らかにした。
同部の調査によると、米たばこ会社と契約し、たばこ産業支援活動に参加していた専門家が現在、WHO内の「環境と健康」関連の研究プログラムにコンサルタントとして参加していることが判明。この職員はたばこ関係の内部会議に積極的に出席しており、会議の内容を批判するような発言も行った、という。
また、「殺虫剤」「食料」などWHOの他のプログラムや、たばこ産業への融資の是非を議論してきた世界銀行でも、たばこ会社関係者が参加し、内部情報を業界に流し、政策などに影響を与えた可能性がある。だが、「たばこと直接関係ない企画にコンサルタントとして働く場合、たばこ会社との関係の有無は問われない。何の手も打てない状況だ」(同部長)という。
このためWHOと世銀は、汚職捜査や公衆衛生などドイツ、スイス、米、南アの専門家約10人で構成する独立調査委員会を設置した。今後、WHOなど国連諸機関内部でのたばこ会社の活動実態▽これらの活動がWHOなどのたばこ関係政策や決議、予算にどう影響したか――などを調べ、ブルントラントWHO事務局長に報告する。
ヤッホ部長は「一般企業がオープンな形でWHO政策に関与するなら問題ない。だが、たばこ産業は極秘裏に動き、キャンペーンを中止させようとしている」と批判している。WHOは98年から本格的にたばこ追放キャンペーンを開始し、昨年は神戸で国際会議を開き、たばこの害を訴えた。
[毎日新聞4月30日] ( 2000-04-30-01:22 )