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【ニューヨーク28日=越中秀史】
著名投資家のジョージ・ソロス氏が率いる米最大のヘッジファンド、ソロス・ファンド・マネジメントは二十八日、主力ファンドの運用担当者二人が辞任することを明らかにした。米店頭株式市場(ナスダック)の急落で主力ファンドの運用成績が大幅に悪化した責任をとったもので、ファンドが閉鎖に追い込まれる公算もある。先月末には大手のタイガー・マネジメントが昨年末までのハイテク株の急騰劇に乗り遅れて廃業したばかりで、金融市場の動向を左右した巨大ヘッジファンドも相場の乱高下に属した格好だ。
辞任するのは主力のクォンタム・ファンドを運用するスタンレー・ドラッケンミラー氏とクォータ・ファンドを担当するニコラス・ロディティ氏。
ナスダックの急落で両ファンドが保有するハイテク株が大幅に下落、運用成績が急速に悪化していた。
クォンタムが今年に入ってから約二二%の損失を計上、クォータも約三三%のマイナスを記録した。クォンタムの場合、昨年は三五%の運用利回りを確保したが、今年三月以降のナスダックの急落で損失が加速度的に膨らんだとみられる。
同社のスポークスマンは「両氏の辞任は二十八日午前にも明らかにする組織の再編成の一環」と説明するにとどめ、ファンドの閉鎖の可能性を明らかにしなかった。
両ファンドの運用資産は九十億j強と、同社全体の約百四十億jの資産の三分の二を占めるとみられる。このため閉鎖に追い込まれた場合はファンド運営が一気に行き詰まるとの見方が強い。
ソロス・ファンド・マネジメントは業界の草分け的な存在。一九九二年に大量のポンド売りで十億j以上を稼いだといわれ、ソロス氏は「イングランド銀行を打ち負かした男」といわれた。その後も相場が大きく変動するとソロス氏の存在がささやかれるなど相場に対する強い影響力を保持した。ただ最近ではソロス氏は慈善家としての活動が目立っており、「事実上引退している」(ヘッジファン業界に詳しい弁護士)との声もあった。
ヘッジファンド業界では九八年九月にロングターム・キャピタル・マネジメント(LICM)が事実上破たんに追い込まれたのに続き、先月末にはジュリン・ロバートソン氏が率いるタイガー・マネジメントが廃業に追い込まれた。マネーの膨張で世界的に相場の変動が激しくなり、各市場で巨額の資金を動かす巨大ファンドの行詰りが鮮明になっている。
◎米ドル資産離れ起こらず〜ジョン・ロンスキー氏(ムーディーズ・インベスターズ・サービスのチーフエコノミスト)
ソロス氏のヘヅジファンドでは昨年末あたりから利回りが低下しており、問題を抱えていたというのは市場では周知の事実となっていた。
(タイガー・マネジメントを率いていた)ジュリアン・ロバートソン氏が廃業に追い込まれたのも、最近の株式相場の乱高下や一部の株への投資資金の偏りが原因だ。
しかし、今回有力ヘッジファンドが相次ぎ苦境に陥ったことが米金融市場に動揺を与え、外国から流入してきた資本の流出に至るような事態には発展しないだろう。(米州総局)