遺伝子診断〜国内生保の半数以上が加入審査に反映を検討(毎日新聞)

 
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投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2000 年 4 月 27 日 09:41:33:

発病前や出生前の遺伝子の異常を調べて将来の病気の可能性を診る遺伝子診断について、国内の主な生命保険会社の半数以上が、診断結果を保険加入の審査に反映させることを将来的に検討していることが26日、毎日新聞の調べでわかった。生涯変わることがなく「究極のプライバシー」とされる遺伝子情報を、保険審査に反映させることについては「生まれながらの平等に反する」として、諸外国では法律などで禁止している地域もある。だが国内には、生命保険と遺伝子診断をめぐる明確なルールはなく、今後、早急な対策が求められることになりそうだ。遺伝子情報に関する生保各社の対応が明らかになったのは初めて。 
毎日新聞が国内の主要生保26社を対象に、(1)保険加入の際に遺伝子診断の結果を保険会社に告知する義務があるか(2)結果によっては保険加入を拒否することがあるか(3)掛け金などに格差をつけることはあるか――などの項目についてアンケート調査。「答えられない」などとした社を除く19社から回答を得た。
保険審査に反映させるべきでないと明確に答えた会社はわずか4社で、残りの15社が何らかの形で反映させることについて検討の可能性を示した。
15社のうち、9社は「遺伝子診断が一般的医療行為となった段階で検討したい」「社会通念上妥当とされる時代には(審査への反映が)あり得る」などと条件を付けたが、残りの6社は「告知事項だ」「(診断結果次第で被保険者の)掛け金に格差をつけることは現実性がある」など、より前向きな姿勢を示した。
遺伝子診断と生命保険をめぐっては、オーストリアなどで保険会社が遺伝子情報を利用することを制限する法律がある。米国でも一部の州で保険の加入の際などに遺伝子情報による差別を禁止する州法が制定されている。一方、日本国内では、生命倫理問題を検討している科学技術会議(首相の諮問機関)の小委員会が今月、「遺伝的情報を理由に差別されてはならない」とした原則案をまとめるなどしているが、具体的なルール作りは進んでいない。
今回の調査結果について、生命保険協会広報部は「保険の契約加入の審査は各社の判断でやっており、遺伝子診断の問題もその一環と考えている。今の段階で協会として何らかの方向を示すことはない」としている。
【亀井正明、森野茂生】

▽遺伝子診療に詳しい武部啓・近畿大原子力研究所教授(放射線生物学)の話

遺伝子診断の結果は生まれもってのものでそれぞれの人に責任はなく、保険会社は対等に扱うべきだ。各社の対応を見ても、見解が統一されておらず、意思統一する努力もなされていないようだ。一部の社が先走りすることのないよう、国は、厚生省だけでなく関係する省庁が十分に連携して法整備を含めた検討を急ぐ必要がある。

▽解説

「あなたは将来、がんになります」――遺伝子を調べてこんな予測をすることが、不可能でなくなってきた。まさに究極の健康診断だが、こうした遺伝子診断の結果を第三者が利用することの是非について、国内では十分な議論が行われていない。今回の生保会社へのアンケート調査では、過半数が加入時の審査に遺伝子診断を将来的に利用することに肯定的姿勢を示したが、生命保険だけでなく、企業が社員採用時に遺伝子診断を義務付けるようなケースも想定される。生命科学の急速な進歩に対し、法的・倫理的問題が遅れたままでは混乱は必至で、早急に一定の枠組みを設けることが必要だろう。
遺伝子診断は、遺伝子の本体であるDNAの塩基配列に通常と異なる部分があるかどうかを調べ、発病の可能性を調べる技術。DNAの採取は、採血や口の粘膜を綿棒でぬぐうといった簡単な方法でも可能になった。今のところ、遺伝子診断で確実に調べることができるのは、原因遺伝子が特定されている一部の遺伝性疾患だけだが、人間の全遺伝子の構造と機能を解析する国際的なヒトゲノム計画の進ちょくもあって、将来的にはもっと広範囲の病気や体質なども診断できるとされる。
一方で遺伝子診断の結果は、場合によっては家族にまで影響が及ぶ深刻な「遺伝子差別」を引き起こす可能性もある。約20州で就職や保険加入の際の遺伝子差別を禁じる法律がある米国では、クリントン大統領が今年、連邦職員の採用や昇進に関して遺伝子診断の結果を利用することを禁じる大統領令に署名した。
国内では、首相の諮問機関の科学技術委員会が今月、「ヒトゲノム研究に関する基本原則案」をまとめたが、研究活動が対象で、医療行為である遺伝子診断については、今後にゆだねられている。
今回のアンケート調査で、過半数の生保会社が遺伝子診断の利用を肯定的にとらえている背景には、遺伝子に異常のある人ばかりが生命保険に加入すれば、結果的に保険金の支払い額が急増して、収支が悪化するという懸念がある。しかし、なし崩し的な第三者利用は、就職、入学、婚姻などに際しても遺伝子診断が使われることにつながりかねない。「遺伝的特徴を理由にした差別」とは何なのか、どう防ぐのか、幅広い議論を経た指針づくりが求められる。
【森野 茂生】[毎日新聞4月27日] ( 2000-04-27-03:52 )



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