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04/15 11:01 安吾の幻のエッセー発見 敗戦直後に特攻隊を擁護 GHQ検閲
共同
「堕落論」で知られる作家坂口安吾(一九○六―五五年)が、戦
後間もなく発表しようとして連合国軍総司令部(GHQ)の検閲で
全文削除になった、特攻隊を擁護する幻のエッセーが十五日までに
見つかった。戦争についても率直な感想がつづられており、安吾像
に新たな光を当てる貴重な資料だ。
エッセーは、四七年二月に雑誌「ホープ」に掲載予定だった「特
攻隊に捧ぐ」という、四百字詰め原稿用紙にして八枚ほどの文章。
GHQの膨大な検閲資料を集めた米国の「プランゲ文庫」に残され
ていた。
安吾はこのエッセーで「近頃では殉国の特攻隊員など一向にはや
らなくなつてしまつたが、かう一方的にかたよるのは、いつの世に
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も排すべき」とした上で、特攻隊員の心情に思いをはせ、その「無
償の行為」が人間の「至高の姿」であることを強調している。
特攻隊の「愛国殉国の情熱」を認めて「私は戦争を最も呪ふ。だ
が、特攻隊を永遠に讃美する」と擁護し、戦争と「軍の積悪」を否
定するが、それとは別として特攻隊を肯定している。
文中には「人は特攻隊を残酷だといふが、残酷なのは戦争自体」
「日本軍の作戦の幼稚さは言語道断」「所詮兵隊は人間ではなく人
形なのだ」の言葉もある。
GHQの削除理由は「Militaristic(軍国主義的)
」で、見開きの全面に大きな×印と「Suppress(発禁)」
の文字が書かれている。
執筆は四六年四月の「堕落論」発表前後と推定される。安吾は「
堕落論」の「生きよ堕ちよ」という有名な一節で、戦前的な価値観
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を否定した作家と見られているが、そうした一般的な安吾像を塗り
替える内容だ。
「坂口安吾全集」(筑摩書房)の編者の一人、関井光男近畿大教
授は「戦争の中での個人をどう考えるか。安吾の発想をうかがえる
貴重な資料」と話す。このエッセーは、二十五日発売の同全集第十
六巻に収録される。
[2000-04-15-11:01]
04/15 12:27 軍国主義が標的 あらゆる印刷物を検閲
GHQが日本で行った出版物の検閲は、広範で徹底していた。
GHQは一九四五年、民間検閲局を設置。多数の日本人を採用し
て全国で刊行される書籍と雑誌、さらにパンフレット類など、あら
ゆる印刷物を事前検閲か事後検閲にかけた。
目的は、米国の占領政策を円滑に進めること。初めは戦前流の軍
国主義思想が標的となったが、その後左翼思想へと変わった。
坂口安吾のエッセーが全文削除された四七年は、まだ軍国主義を
封じ込めることに重点が置かれていた時期。事前検閲で引っ掛かる
ことが当然予想されながら、安吾はなぜ作品を発表しようとしたの
だろうか。
戦後メディア史に詳しい成城大の有山輝雄教授は「戦時中の言論
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統制が敗戦で終わり、さまざまな文学作品、言論が噴出した。そこ
でGHQが民主主義化の名分の下に表現を制限するという矛盾した
構図があり、作家、記者たちも矛盾を抱えていた」と指摘する。
[2000-04-15-12:27]
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