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北陸中日新聞開催の3市長座談会 地方紙の妨害で中止に
<抜粋>
地方紙の加賀市内の幹部が市長に座談会への出席意思を尋ね、市長が「出る」と答えると「次の選挙はないものと思え」などと言った
<全文>
開催前日 一部市長へ威圧的言辞
北陸中日新聞(中日新聞北陸本社)が十二日に石川県小松市で、西村徹同市長、大幸甚加賀市長、角光雄松任市長ら四氏を招いた座談会開催を予定していたところ、十一日夜に小松市側から「出席できない」と突然通告があり、開催当日、小松、松任両市長は欠席、加賀市長も最終的に出席を見合わせ中止になった。小松市側の話では、同県の地方紙幹部が十日、一部の市長に接触、威圧的言辞で出席を妨害したことが原因としている。
座談会は、北陸中日新聞連載の「地域とともに 南加賀シリーズ」の締めくくり。「南加賀活性化へ自治体と住民が今できること、すべきこと」がテーマ。北陸中日新聞は三月中旬、三市長から出席の返事を得ていた。各市長らの話を総合すると、十一日午後、地方紙の加賀市内の幹部が市長に座談会への出席意思を尋ね、市長が「出る」と答えると「次の選挙はないものと思え」などと言ったとされる。松任市長も同紙の地元幹部から出席の意思を問われたことを認めている。
小松市長が松任市長に電話で連絡を取るなどした結果、延期を求めることにした。小松市の秘書課長はその旨を北陸中日新聞小松支局に電話で連絡した際に「総選挙を前に森喜朗首相の地元の市長が集まると、余計なせんさくを受ける。三市長が話し合い、一−二週間延期してもらうことにした」などと説明した。
北陸中日新聞は「延期すべき理由は見当たらない」として重ねて出席を要請。十二日昼、予定通り座談会への出席を待ったが、小松、松任両市長は欠席。加賀市長も、三市長そろっての出席が見込めないとして来場しなかった。もう一人の予定者のマーケティングプランナーは出席した。
同日午後、西村小松市長は「(当初、秘書課長が説明した)選挙前だからという理由は間違い。加賀、松任両市で(地方紙から)接触があったことを聞き、冷却期間を置こうと判断した。座談会は地域にとって極めて意義のあるテーマであり、本来こちらからお願いしてでも開いてほしい内容。迷惑をかけたことをおわびする」と陳謝した。
加賀市長に対する威圧的言辞があったとされる地方紙の加賀地域幹部は、北陸中日新聞の取材に対し事実の確認も含め「本社で聞いてほしい」と語った。地方紙本社は十二日夜現在、コメントしていない。
あってならないこと
藤田博司・上智大新聞学科教授(メディア論)の話 同じジャーナリズムの仕事に携わる者が他社の取材の妨害をしたというケースは、他の地域で聞いた事がないし、あってはならないことだ。公的な人間を対象とした取材をメディアの影響力を背景に、圧力をかけて妨害するのは、ジャーナリズムのあり方として反対の極に位置する。
新聞人として憤り
小宮寛治・北陸中日新聞編集局長の話 地域の担い手とともに、地域のあるべき姿を模索する本シリーズが、このような前代未聞の理由で中止のやむなきに至ったことは誠に残念だ。報道の自由を危機に陥れる“外圧”に同じ新聞人として強い憤りを覚えるとともに、それに屈した行政の責任も厳しく問うていかねばならない。