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世界最大のダイヤモンド原石取引・研磨市場のベルギー・アントワープが、「黒いダイヤ」疑惑に揺れている。今月発表された国連安全保障理事会報告で、アンゴラ反政府ゲリラが武器資金作りのため同市場でダイヤを密売していることが分かったためだ。ベルギー当局は対策に躍起だが、欧州連合(EU)域内で国境検問廃止が進み、業界からは「もはや一国での密輸防止は不可能」との指摘もある。
(アントワープで 三井 美奈)
ダイヤ市場のあるアントワープ中央駅西側は、黒い帽子のユダヤ人やターバン姿のインド人が行き交う国際地区。「フランダースの犬」の舞台として日本人観光客も多い。この一画で取引されるダイヤ原石は、年間五十億ドル(約五千三百億円)に上る。
安保理報告によると、アンゴラ全面独立民族同盟(UNITA)は、ダイヤ取引禁止の国連制裁に密売で対抗した。特にアントワープは密売の格好の舞台となり、「四―五千の業者が絡むダイヤやみ市場で、UNITAは楽々取引している」(同報告)状態だった。
実際現地では、密売の存在を示す証言が多い。
中央駅近くのダイヤ研磨・小売店では昨年冬、黒人男性が店頭で突然、上着のポケットから合計四十カラット相当のダイヤ原石数個を取り出し商談を持ちかけた。同店店員は、「工業用がやっとの品質なのに、高値をふっかけたので追い返した」と回想する。別の店の店員も、「黒人のダイヤ行商はよく来る」と証言する。
ベルギー政府は、「黒いダイヤ」流入防止のため、輸出入業者の登録制度を設けて監視しているが、アントワープ地検のエル・ヌイツ報道官は「EU域内での国境検問廃止に乗じて、ロシア人らの外国人組織が市場に入り込んだ。密輸ダイヤや密売人の追跡は非常に難しい」と言う。
アントワープは、十六世紀以降、イベリア半島や東欧からのユダヤ人避難先となり、一九三〇年代にはナチス迫害を逃れるユダヤ人のダイヤ職人を受け入れて世界有数のダイヤ市場の地位を確立した。密売事件は、同市の伝統である国際性と開放性につけこんだもので、市場関係者はイメージダウンに頭を抱えている。
(3月29日20:25)
★デ(ビル)アス、永遠の輝き。