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【ブリュッセル28日森忠彦】
米国が人工衛星を使って各国の通信情報を傍受しているとされる通信傍受システム「エシュロン」について、被害を受けた欧州連合(EU)は28日、本格的な調査に乗り出すことを明らかにした。この問題の発覚時から積極的な姿勢を示してきたEUの議会組織・欧州議会も、近く専門の調査委員会を設置する見通しだ。
EUの執行機関である欧州委員会の報道官は同日、エシュロン疑惑について「欧州でスパイ活動が行われるのは許されることではない」と語り、疑惑の解明に厳しい態度で望む方針を示した。欧州委は30日の議会で欧州委としての見解を表明するが、その中でも加盟国の情報が産業スパイとして傍受され、米国などの利益につながった可能性が指摘される模様だ。加盟国への疑惑解明に向けた協力が促されることになる。
エシュロンは米国・国家安全保障局(NSA)が冷戦時代の対立国の情報入手のために設けたシステムで、英国やカナダ、豪州、ニュージーランドといった英語圏諸国も参加。電話やEメール、FAXなどの通信情報が傍受している。問題は入手した情報が国内産業に渡り、ビジネス界の国際競争に流用された疑惑が高まっていることで、2月には傍受の可能性を指摘した報告書が欧州議会に提出された。
しかし、米国や英国はこの疑惑については否定しており、EU側が明確な証拠を示すには障害も大きい。特に英国に容疑がかかっていることはEU内に亀裂を生む要因ともなりかねず、最も強硬な姿勢を示しているフランスの議員団は「英国からだまされたというショックは大きい」(パスクア議員)と非難する。
今年後半のEU議長国がフランスであることなどから、疑惑がEUの結束に与える波紋はますます広がりそうだ。
[毎日新聞3月29日] ( 2000-03-29-11:44 )