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【北京27日=藤野彰】
中国吉林省の松花江流域で一九六〇〜七〇年代に、化学工場などから大量排出された有機水銀により、「少数の水俣病患者」が発生していたことが、北京でこのほど開かれた「日本・中国水俣病経験の普及啓発セミナー」(環境庁、中国国家環境保護総局主催)での中国側報告で公式に確認された。
松花江流域の水銀汚染による健康被害は一部専門家の間では以前から知られていたが、これまで一般向けにはその実態はほとんど明らかにされていなかった。国際セミナーで中国側が「松花江水俣病」を公式確認したことは、水銀汚染対策の重要性を認識しているものと言えそうだ。
報告を行ったのは、吉林省環境保護局の元副局長、唐雲梯氏。唐氏によると、問題が発生したのは松花江支流の第二松花江で、流域は化学工場や金鉱から排出された水銀により、六〇年代末から七〇年代初めにかけ汚染が深刻化した。
このため、地元医科大学が、汚染された川魚を常食していた流域漁民約千人を対象に、七四―八二年の間に七回にわたって健康調査を実施。その結果、漁民の体内に相当量の有機水銀が蓄積されていることがわかった。少数の漁民には知覚障害、聴力低下、視野狭さくなどの症状が見られ、「慢性の有機水銀中毒」と診断された。
唐氏は「慢性有機水銀中毒すなわち水俣病」との表現で同病の発生を認め、「初期段階で対策を講じたので被害のまん延を避けられた。新たな患者の発生はない」と指摘している。
水俣病に詳しい原田正純・熊本学園大教授(神経精神医学)の話「第二松花江では汚染のため、サンプルが取れないぐらい魚がいなくなり、漁業が壊滅した。中国当局は当初、患者の症状が軽かったことから、水俣病かどうかの診断に慎重で、延々と議論してきた。公開の場で水俣病の存在を正式に認めたことの意味は大きい」
(3月28日2:06)