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アンケート
所属 調2−2
氏名 藤田和彦
1 派遣された国・所属・役職
イスラエル国/テルアビブ大学ジャッフィ戦略研究所(JCSS)客員研究員
2 派遣先における職務(できるだけ具体的に)
@ イスラエル機関との連絡(毎週1回、機関本部へ出頭し、先方分析官よりダイレクトに国際テロリズム情勢等に関するブリーフィングを受け、適宜報告書を作成して、これを本庁へ送付すること)
A 出張等で来訪した当庁職員に対するアテンド(機関本部・研究所表敬、機関本部分析官との協議会実施等)
B 研究所における実績作り(ジャッフィ戦略研究所をはじめとするテルアビブ大学附設の研究施設郡が有する中東を中心とした膨大かつ最新の「公然」資料のコレクションを読み込み、機関本部が作成している「非公然」資料と照らし合わせるなどして、公然資料の有用性と限界を理解し、もって分析能力の向上を図ること)
3 同職務と当庁との関連性(帰庁後を含む)
標記2で述べた@連絡、Aアテンドの同業務はいずれも、調2−2が所掌する国際渉外事務そのもであり、帰庁後の業務(推進)に直結している。また、標記Bの業務は「渉外=単なる通訳」的パラダイムからの脱却を目指す新制調2−2の現下の方向性に今後資するものと思料。
4 在外勤務に対する自己採点
この点については、当庁が自分に期待したものが何であったかによると考える。
@ 先方機関とのいわゆる「つきあい」を一層深化させるということ
自分より以前に世帯で赴任された諸先輩が先方機関の担当者らを安全な自宅に招き飲食を供にするなどしていろいろ苦労されたのに対し、独身で赴任した自分は物理的にかかるセッティングをすることが困難であったことから、この点を評価する場合には相当カラい点数がつくものと思料。
A 自らのレベルを向上させることにより、今後の当庁業務に資するということ
この点については、とりわけ各国機関の間でポスト冷戦期における共通の脅威主体の一つと考えられているイスラム過激派の国際テロ活動等に関する報告書類を多数作成することができ、自分なりに納得のいく仕事ができた。こうした報告書の殆どは機関本部の分析官から受けたブリーフィングに基づくものであるが、専門家である彼らから引き出せる情報のレベルというものは、こちらのレベル(蓄積量)に驚くほど正確に比例するという(この業界で当然の)ことをイヤというほど思い知らされ、実に貴重な体験をした。
自分は標記Aで努力するに留まったが、@・Aいずれも実施するのが理想的であるのは論を待たないであろう。
5 感想
各国機関が渉外連絡(工作担当官に非ず)を在外へ派遣する場合、一般的に次の3要件を押さえている場合が多いようである。
@ 対象国若しくは周辺国に所在する自国公館内に、なるべく高位の外交官ポストを確保すること(諸々不具合が生じた場合に、各種特権・免除権を行使して相手方機関に迷惑をかけないようにするため、および相手方機関より入手した資料を安全に保管する聖域として公館内の自室を利用するための措置)
A 本国と在外の渉外連絡官との間に、安全な通信手段を外交当局のそれとは別個に構築すること(本国で作成した交換用資料を在外の連絡官へ送り、また在外の連絡官が相手方機関より入手した資料等を本国へ送るための措置)
B 既婚若しくは相当経験豊かな職員を派遣すること(相手方機関の渉外官にやはり経験豊かな職員を充てさせるため、および第三国の機関からのいわゆる「色仕掛け」工作を防止するための措置)
自分の知る限りにおいて、標記Bは必ずしも絶対的な要件ではない。東京に駐在する各国機関の渉外連絡官として独身や若手が派遣された例もあり、なかには日本人女性と東京で知り合い、結婚に至った事例も存在する。しかし、彼らは例外なく外交官としての身分を有しており、在外で相手方機関と真の意味における「連絡」を実施するには、標記@・Aの措置は重要である。とりわけ、Aで挙げた「本国との間に安全な通信手段を確保する」ということは、きわめて重要である。イスラエルに派遣されている当庁職員は歴代、東京へ機微な報告を送る際には、相手方機関が有する通信手段に全面的に依存してきた。しかし、主権国家の機関として相手方の信頼を勝ち得るためには、安全かつリアルタイムで送受信可能な通信手段を独自に確保することはきわめて肝要である。今後、渉外連絡を主たる目的として当庁から外国へ派遣する職員を増やす場合、この問題については是非とも事前に解決しておく必要があろう(例えば、独自開発の暗号ソフトを入力したパソコンを外国へ持参させ、パソコン通信で送受信を行う等)。