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「株式市場のリード役」ともてはやされたインターネット関連株が、このところさえない。将来性への期待を背景に、ひところはネット株であれば株価は上昇し、平均株価が一時2万円を突破する原動力となった。ところが、最近はネット株の迷走が「相場の波乱要因」となり、「ネット株バブルは崩壊した」という不気味な指摘さえ聞かれるほどだ。ネット株に何が起きたのだろうか。(三浦恒郎、高原秀己)
《私財投入に波紋》
ネット株が迷走するきっかけとなったのは、二月末の“CSKショック”だったと株式市場関係者の多くが口をそろえる。
二月二十八日。セガ・エンタープライゼスは今三月期の業績下方修正と、第三者割当増資を含めた経営改善策を発表した。この増資には親会社のCSKにとどまらず、大川功CSK会長も個人で五百億円超の私財を投じ、市場には「優良IT(情報技術)会社といっても、オーナーが自ら投資して支えなければならないのが実情なのか」といった見方が広がったという。
ネット株の代表とされるソフトバンクが一九万八〇〇〇円、光通信が二四万一〇〇〇円の取引時間中の最高値を記録したのは二月半ば。二月下旬にはインターキューが九万八〇〇〇円まで上昇するなど、この時点ではネット株全体が迷走する状態ではなかった。
しかし、CSKショック以降、ソフトバンク、光通信は最高値の半値以下まで落ち込んだ。
《荒っぽい値動き》
もっとも、そのソフトバンクや光通信は、ここ数日は一方的な上昇に転じるめまぐるしい展開となっている。
ネット株三十銘柄で構成する「産経ブルームバーグ インターネット株価」をみても、その値動きは年初来、荒っぽい。
インターネット株価(終値ベース)は一月四日の七万七三九八円八〇銭が、一月二十日には五万九二八二円一〇銭に下落。その後は二月二十一日の九万三二一三円五〇銭までほぼ一本調子で上昇して反落、三月十四日には五万八六一〇円六〇銭という年初来安値をつけた。
一方、東京市場の平均株価(225種)は一月初旬に一万八一〇〇円台まで下落する波乱があったものの、二月からは一万九〇〇〇−二万円で推移し、東証株価指数(TOPIX)もほぼ同様の値動きをたどっている。この結果、一月四日を一〇〇として換算したインターネット株価の値動きは一二〇・四−七五・七。平均株価の一〇五・七−九五・六、TOPIXの一〇二・二−九〇・七に比べて、ネット株がいかに上下のブレが大きいか改めて確認できる。
《「異常人気」に幕》
インターネット株価が九万三〇〇〇円台の高値をつけてから、五万八〇〇〇円台の安値まで落ち込むまでにかかった日数はわずか十六営業日にすぎず、「ネット株バブルが崩壊した」という警戒感が一気に高まったのも、ある意味では当然のことだ。
しかし、野村証券投資情報部の黒川達夫次長は、「ネット株の中でも、ようやく選別物色が始まった」と分析する。
例えば年初に一時五〇〇〇円台に達した富士通は、下げ局面が続いて十七日終値は三一五〇円。一方、「富士通に比べて評価が低すぎた」(市場関係者)とされるNECは上げ基調に乗せ、十七日は二九八〇円と富士通にほぼ肩を並べる水準にきた。
二月末に今三月期決算予想を下方修正したDDIが年初から下がり続けているのに対し、予想を上方修正した日本テレコムは上げ続けるなど、業績の明暗も株価に反映され出した。
ネット関連でさえあれば、どんな銘柄でも買われたネット株の「異常人気」に、ようやく市場も気付き始めたといえそうだ。
《「近視眼的すぎる」一方で意識変化も》
「インターネット株の高値を『バブル』の一言ですます人は、その段階で、思考回路を閉ざしている」−。孫正義ソフトバンク社長は、最近の高まる一方のネットバブル論にこう反論する。ネット株は、「将来への期待が株価のベース」(ソフトバンクの北尾吉孝常務)なのに、あまりにも近視眼的に見ていることに、我慢できないらしい。
また、銘柄数も、市場に出回る株式数も少ないネット株は、ある銘柄を買いたくても買えずに類似銘柄が対象となることも多いため、特定銘柄の値動きに全体が引きずられやすい。
最近、CSKショックや、光通信をめぐるさまざまなうわさが飛び交ってネット株全体の水準を引き下げた実例があるだけに、「ネット株は業績面の裏付けが薄いから、特殊要因やうわさに大きく影響される」(北尾常務)との不満も募る。
しかし、「東証のマザーズ、ナスダック・ジャパンに新規公開する会社が増えれば、銘柄選別は一段と厳しくなる」(ユニバーサル証券研究所の曽根基春アナリスト)との見方も浮上していることには、「ネット企業と言っても赤字経営ではだめ。収益力を高めて、業績面で裏付けのある高株価企業になる」(インターキューの熊谷正寿社長)など、ネット企業側の意識変化も起きている。