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▼インフルエンザ脳症、解熱剤が誘発論(読売)
インフルエンザに伴う子供の脳症が問題になっているが、一部の解熱剤を使うと脳症による死亡率が高まると厚生省研究班が報告したことから、解熱剤の使用を巡り医療現場が揺れている。日本小児感染症学会が、解熱剤の使用を容認する見解を出したのに対し、一線の医師たちが「使用を中止すべきだ」と公開質問状を提出した。解熱剤は広く使われており、波紋を呼びそうだ。
インフルエンザにかかると、意識障害などを起こす脳症になることがあり、昨年一〜三月に二百十七人が発症、うち六十一人が死亡した。患者の八割は五歳以下の幼児だった。
脳症が多発している国は他になく、事態を重視した厚生省は、研究班を設置し、これらの患者を調査した。メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウムという解熱剤を使用していた患者は、薬を使っていなかった場合に比べ、死亡の危険度がそれぞれ四・六倍、三・一倍高かった。これら二剤は非ステロイド系抗炎症剤と呼ばれる。
ところが、同学会は最近、医学専門誌で「脳症と解熱剤の関連に懸念が広がっているが、幼児の場合、高熱が続くので非ステロイド系抗炎症剤を使用せざるを得ないことも多い」とする見解を公表した。
これに対し、大阪赤十字病院小児科の山本英彦医師ら十四人の専門医は「解熱剤と脳症には強い関連がある。危険性が疑われる薬は使わないのが原則。研究班調査を否定するような見解で、放置できない」と、学会に公開質問状を提出。詳細な調査と、非ステロイド系抗炎症剤を小児に解熱剤として使わないよう勧告することを求めた。
今月十日、学会が出した回答書では、解熱剤の使用の是非に触れておらず、山本医師らは「回答になっていない」と反発している。
「正しい治療と薬の情報」誌編集長の別府宏圀・東京都立府中療育センター副院長は「この種の薬を小児に多用しているのは日本くらい。薬の害を示唆するデータがある以上、学会は調査する責務があるのに、放棄している」と指摘する。
同学会運営委員長の牛島広治・東大教授は「公開質問状は問題提起と受け止めている。今後、委員会に諮りたい」と話している。
(3月17日3:03)