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ワヒド大統領がテレビの討論番組で14日、国軍内部に政府転覆を企てるグループがいると発言し、波紋を呼んでいる。大統領はこのほか、1965年の9月に起きたクーデター未遂事件の調査再開に同意を表明し、国民の協力を求めた。また、国軍の将来などについて幅広く語り、改革が順調に進んでいることを強調した。ワヒド大統領が国軍のクーデター説を披露したのは、今回が初めてではない。外遊先のオランダで先月、「複数の国軍将校が秘密会議を開催し、反政府行動を計画している」と発言、情報の出処をめぐり議論を呼んだ。大統領が帰国後、国会は秘書官ら大統領側近を喚問し、「不正確な情報を大統領に伝えているのではないか」とただした。
これらの質問に対し、側近らは「大統領は公的な機関を通じてではなく、個人的な人脈を頼りに情報を得ることが多い」と説明、大統領にわい曲している事実を伝えたとの疑惑を否定した。また一部新聞は、クーデターの情報を大統領に伝えたのは外遊などに同行している大統領の四女の可能性が高いと報道した。
この件に関し、大統領は14日のテレビインタビューで、「メディアは大変無責任な報道をしている」と批判。「ジャーナリストが無思慮になっているのではないか」と疑問を提示した。
今回の大統領のクーデター発言の要旨は、陸軍の軍管区指令官の中に、反政府活動のため住民を扇動している動きがあるというもの。しかし、具体的な司令官や軍管区の名前は明らかにされなかった。
軍事評論家のサリム・サイド氏は「もしこれが事実ならば、テレビで暴露するよりも具体的な阻止行動をとるべき。このような情報源のはっきりしない大統領の言葉は国民に混乱を与えるだけ」と、大統領に自重を求めた。
国会のアクバル議長は「もしクーデター計画が事実ならば、重大問題だ。大統領に発言の真意についてただす必要がある」と説明した。また、国軍のグライト報道官は、「大統領から何の指示も問い合わせも来ていない。もし、11ある軍管区の司令官の中に政府転覆を企てる者がいるのなら、調査する必要がある」との考えを示した。
■9月30日事件の調査再開
番組の中で大統領は、1965年9月に起きた共産党(PKI)がかかわったとされるクーデター事件(9月30日事件)についても言及。「事件の真相について再び調査を行うことはいいことだと思う。これまで、PKIのメンバーが犯人のように言われているが、ほとんどはクーデターに無関係ではないか」との見解を表明した。
しかし調査の再開については、政府が主導権を握るのではなく、国民の中からその要求が自然に出てくることが望ましいとの考えを示し、当面政府は具体的な行動をとらないと説明した。
■文民統制への意欲
また急速に進んでいると言われている文民統制について大統領は、「国民だけの努力で実現されるものではない。国軍自らがその重要性を理解してはじめて可能になるもの」と述べ、国軍の自覚を促した。
国軍機構改革については、地方組織の解散などの案が一部専門家から提案されているが、「時間をかけて議論する必要がある」と述べるにとどまった。また、東ティモールやアチェ特別州などの人権侵害に関し、「国軍組織そのものと、国軍の兵士や司令官という個人をはっきりと分けて考えなければならない」と、これまでの考えを繰り返し強調した。
[NNA 2000年3月17日]