吉本隆明氏に聞く(4)死を説くオウムに魅かれた若者たち

 
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投稿者 おっと 日時 2000 年 3 月 16 日 04:34:39:

回答先: 吉本隆明氏に聞く(3)家族解体の時代 投稿者 おっと 日時 2000 年 3 月 16 日 04:33:59:

【宗教・こころ】吉本隆明氏に聞く(4)死を説くオウムに魅かれた若者たち
[1995年09月12日 東京夕刊]


 弓山氏「オウム信者の体験談を読んでおりますと、死をも修行で体験できるのが
大変魅力らしいですね。彼らのイニシエーション(秘密の儀式)の中には、ほとんど
臨死体験に近い状態が訪れるものもあるという。今の若者、現代人は、死に対する
あこがれが非常に強いと思います。先生は現代人の死に対するあこがれと、オウム
真理教が死を強調し体験できるということに、何か関係を感じますでしょうか」

 吉本氏「死というのは他人の死だけが体験できるのですけれど、若い人たちには、
何となく未知で神秘で、おっかなかったりする死の問題を自分で触ってみたい、幻覚
でもいいから、自分で死に触ってみたいという欲求が同時代的にあると思います。オ
ウム真理教は習練によってある程度、そこまで行けると言っていますし、麻原さん自
身が明らかにそこまで行ったと思えるようなことを、著書『生死を超える』で体験に基
づいて記述をしています。だから、若者がひかれていく。死にひかれるようにオウム
真理教にひかれていくといいましょうか、死を説いているオウム真理教にひかれるん
じゃないかと思います」

 弓山氏「天理教など江戸から明治の移行期にできた宗教は『この世の極楽』とか
『生き神』ということを説くんですね。どちらかというと来世よりも現世が中心です。し
かし、ここ五、六年だと思うんですが、死に対する関心が高まってきた。それはなぜ
なのか。その背景をどのようにお考えですか」

 吉本氏「社会的に敷延(ふえん)すれば、いろんなことがあるわけで、こういうふう
に高度な社会になって来ると、何が真なのか全くわからなく、見当がつかなくなって
います。僕らの時代には社会学的次元とか、政治学的次元とかの障壁を設けれ
ば、そこで、死の問題や社会的事件の問題など、いろんな考え方の判断ができると
いう状況がまだありました。けれども、今は障壁がなくて、直にあらゆる問題が自分
の身体のところに切実に引っ掛かってきます。だから、自分の身体が最後の障壁と
なるところまで、だいたい行ってしまうんじゃないでしょうか。身体の好調、不調で受
け止めるより、仕様が無くなってしまっていることが、身体の不調の極限への関心、
死への関心を深くしていると思います」

 弓山氏「イデオロギーがなくなってしまい、判断基準を失ってしまった世代は、自分
のからだで受け止める快、不快といいますか、『これは生理的にいやなんだ』『こっち
はすごく気持ちいいんだ』といったところにまで、判断の次元が降ろされてしまってい
る。そういう中で身体に対する関心が高まっている。それで身体とは何かをとらえる
には、逆に死から映し出していかなければならないところにまで、現代人は追い詰め
られているんでしょうね」

 吉本氏「快、不快以外によりどころがないし、その快、不快も自分で工夫して、ひそ
かに不快なるものを避けるところまで、きているわけですから、いきおい身体性をも
とに死への関心が前面に出てきてしまった。これは高度消費社会の特徴なのではな
いでしょうか」

 弓山氏「麻原は、イデオロギーが死滅してしまった今、極限の状態である死を座標
軸にして、初めて自分の位置や身体的意義を獲得できるということを説いた。未知
で神秘である死を説くことで、若者をひきつけたように思います」

 吉本氏「そうでしょうね。そうだと思います。しかし、僕の死に関する考えは若干違
います。僕は死は突き詰めれば、突き詰められるはずだ、と思っています。僕らが
死や臨終だと言っているものは、一点であるかのように言っているけれども、本当に
厳密に言ったらそうじゃないと思います。親鸞なんかは、歴然と“あの世”とは言って
いないんです。あの世とこの世の中間のところ、生と死の間のところにある、あるひ
とつの場所が死なんだ、と親鸞は言っているのです。そこからこっちへ帰ってくると、
つまり、もし人間が、その視線を作れるとなると、今までこちらから、つまり、死のほ
うに向かってだけしか見えなかった事件とか事物が、違うようにみえるぜ、と言って
いると思います。僕もやはり、それに近いことを言いたいわけです。人の死を観察し
て死を思いはかるのではなく、身体的死をきちんと詰めれば、死とはこうだ、といえ
るようになると思います。しかし、なぜ、僕が死に関心を持つかといわれれば、きっ
と、若い人たちと同じだし、オウム真理教みたいなものがはやってしまう根拠とも同
じだと思います。なかなかちゃんとした解決がないから、死を超えようと主張する新
新宗教が一つの解決策として、提起されるんじゃないでしょうか。そういう意味で、僕
は麻原さんをとても重く評価します。人が考えているよりも、あの人はそんなにちゃち
なものじゃないぜ、負けられないぜ、と思うのです」

 =おわり




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