公安調査庁文書コレクション

 
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投稿者 林 一彦 日時 2000 年 2 月 25 日 01:32:26:

  現下の諸情勢にかんがみ、当庁業務を充実・強化するために考慮すべき事項
1  調査第一部業務の円滑な推進
   機構改革後の一年間は、第一線の現場においては混迷が目立ったといえよう。これは改革の意義が十分浸透せず、新規業務に対する戸惑いや不慣れなどからきているものと思われるが、これらの問題点と対応状況は次のとおりである。
 (1)  オウム調査
    ア  オウム調査は、昨年度当初から全局・事務所を挙げて取り組んだ。同調査においては、全職員がその緊急性、重要性を理解し真剣になって取り組んだため、部課の壁を取り払い、好ましい形の協力体制を作ることができた。昨年末頃からは他の業務調査を考慮して全局体制を緩め、主たる作業は、調査第一部第二課で進めることになり、更に新年度になって同課にオウム専従班(6人)を設置して処理してきた。
    イ  当局においては、新年度になって管内オウム調査の現状について分析・討議した結果、再度、全局・事務所体制を強化して調査を推進することにした。この討議をもとに5月21日に全事務所の担当を集め、公安局研修を実施して同調査の徹底を図るとともに、当面、次のような調査を実施している。
      (ア)  構成員掌握調査
         @  構成員掌握調査を合理的・効果的に実施するために「教団構成員掌握調査の指針」を作成し、信者を活動状況によりA類・B類・C類・D類に分類し、面接調査を実施している。この面接調査は、信者の現段階における活動状況をより正確に把握しておき、「構成員性認定基準」が作成された時に迅速に適用できるようにしておくためである。
         A  具体的には、管内事務所を含めて約1740人の信者について、より活動性の高いとみられるA・B類(約460人)から面接調査を実施している。
      (イ)  拠点事務所の監視・追尾作業
         @  大阪支部(現在は常駐者数約30人を含め出入者総数約40人)に対しては、平成7年12月から監視アジトを設定し、ビデオ・肉眼による監視作業を実施してきたが、本年5月13日から追尾班(12人)を編成し、同支部から出る信者の追尾作業を実施している。同調査は、信者の氏名・勤務先・活動実態把握のほか居住アジトの発見等を行うためであり、信者がアルバイトなどに出勤する午前6時から同9時の時間帯や教団活動に従事するとみられる日中や夕方に実施している。
             これまでの作業では、常駐者・出入りする在家信者の面割りができたほか全員の写真撮影を行った。
             また、氏名や勤務先について27名を解明した。更に信者の追尾によって居住アジト(1件)を発見し、また拘置中の信者への面会などの動向把握に一定の成果がみられた。ただ、最近では、信者は過激派活動家のようなキリの行動を取るようになり、以前に比べ態度が非常に硬化してきている。
         A  京都連絡所(平成7年11月開設)に対しては、監視・追尾作業や廃(マルハイ)作業を実施しており、オウムを離脱していた学生信者が再び活動していた事実や、教団の組織・活動状況を窺い知ることができる断片的資料を多数入手したなどの成果がでている。
      (ウ)  実働調査
           居住アジト発見調査は信者の追尾や住民票異動の追跡調査等によって行っており、現在約16箇所のアジトと推定されるアパートを把握した。これらアジトは、信者が住んでいる所5箇所、物置を兼ね複数の信者の住民票のみを置いている所3箇所、不明8箇所であるが、引き続きその実態について調査している。
 (2)  国内公安動向調査
    ア  国内公安動向調査については、選挙関係など特定の分野では情報の質・量の向上が見られるものの、全体として調査が緒についた段階である。同調査推進上の問題点としては、オウム調査で取組が弱かったことのほか、次のようなことがあるといえる。
     (ア)  同調査の意義、つまり国内公安動向調査における調査課題の解明が我が国の治安とどう結びつくのか、その重要性がどの程度のものなのかなどについての理解や認識が不足している。
     (イ)  高度情報を入手するためには広範・多岐にわたる分野の知識を必要とするが、調査官は従来業務の専門知識に片寄っており、新規業務に対しては取組が弱い。
     (ウ)  同調査を展開していくためには、広範囲に大衆協力者網を設置する必要があるが、調査官の多くはこのような情報ネットワークを作ることに慣れていない。
    イ  国内公安動向調査は、調査第一部全体の業務として取り組むが、特に本局に担当班(8人)、各事務所に担当者を置き、テーマの検討、情報の整理などガイド的な役割を持たせることによって同調査の円滑な推進を図り、全調査官に関心を持たせることにしている。
       また、同調査の早期立ち上がりを図るため4月に管内補佐・統括研修を実施し、また、5月の管内首席調査官会議において、国内公安動向調査の現状や今後の進め方を協議した。特に本局においては、同調査を充実するためには、まず本局が明確な方針を持ち、具体的作業を展開して着実に実績を積み重ねていくことが先決との方針の下に、当面の具体的な取組として次のような方策を講じている。
     ○  国内公安動向調査については、従来業務以上のきめ細かな指導をしていく必要から、部長、担当首席、同統括が常時協議し、調査の方針等を検討する。
     ○  管内に存在する調査すべき反核・平和団体、人権・市民団体等約110団体・組織を8分野に分け、これを国内公安動向班が分担し、同班に集約した関連情報の整理・分析をする。
     ○  調査の重要度・緊急度の高い団体等から大衆協力者網を拡充し、調査を深めていく。
    ウ  同調査において、現場での抗議事案が発生した場合の対応については、必ず日共や過激派等の調査に関連づけて説明できるよう訓練させている。
    エ  調査官の個人評価に際しては、有力な国内公安情報が入手できる大衆協力者獲得も重視していく方針である。
       また、長期的には各分野のエキスパートを育成していくために、一定の部署に長期間在籍、昇格させていく専門家養成を意識した人事方策を確立する必要があろう。
 (3)  従来業務調査
    ア  機構改革の流れの中で、従来業務調査の重要性の認識が薄らぎ、同調査を深化させる努力に欠ける傾向がみられる。特に、過激派調査について、過去に革共同中核派に対する規制請求が見送られたことから、規制を念頭に置いた立証的調査の観点が薄らぎ、公安動向的情報の収集に流れる傾向がみられる。
        日共については、調査の合理化の掛け声の中で同党に対する危険性の認識が薄らいできていることは否めないが、引き続き重要調査課題として取り組んで いる。
    イ  過激派調査については、日常業務の中で革共同中核派及び革労協解放派調査の重要性を認識させ、立証的視点に立った協力者からの情報の吸い上げ、調査書の作成等について指導を強化している。
        特に、革共同中核派調査においては、昨年来より既存協力者3本の格上げ工作を実施し、うち2本は格上げに成功、1本は現在進行中である。この格上げによって協力者の提報内容が一段と良くなり、中でも1本については、最近、全国で初めて中央の極秘資料を入手したほか、中央の主要会議や内ゲバの動向などを迅速かつ的確に提報するようになり、また同派関西地方委員会の組織・活動の状況を詳細に解明できるようになった。
        日共については、最近勢力が増勢に転じたことや政界での動向、官官接待や住専問題等に対する暴露戦術などその影響力が大きくなっていることなど同党調査の重要性を職員に再認識させるとともに、高位協力者の獲得、既存協力者の効果的活用、特に低位協力者の国内公安動向調査への転用などについての指導を徹底している。
 (4)  その他
    ア  専門職制度
       オウム調査においては、部課の壁を乗り越えた全局的な調査体制を敷き、一応の機動的、効果的な調査ができたが、これは同調査の重要性、緊急性を全調査官が実感していたからと思う。専門職制度は、調査官の従来型の部課制意識が強い現状からみるとその運営は容易ではないが、今後、オウム調査や国内公安動向調査のような従来の部課を越えた取組が要求される分野の調査を通じて軌道に乗せていく方針である。
    イ  職員の士気
       ここ数年来の規制官庁としての当庁をとりまく厳しい情勢の中で、多くの職員が当庁業務の将来について漠然とした不安を抱いてきたが、今回の機構改革において情報機能を重視する当庁の将来像が示されたことやオウム調査の行動実績によって明るい展望を持つようになったと思う。しかし、機構改革は緒についたばかりであり、また、従来業務調査の在り方、特に過激派諸団体等の行動力の低下によって規制官庁としての将来などについての不安が完全に払拭されたとはいえない。
       このような不安を解消し、確固たる自信と信念を持たせることが公安調査官によって何よりも大事なことである。このため職場研修等においてだけでなく日常業務の中で機構改革の意義を周知徹底し、今回の機構改革によって目指そうとしている将来の当庁業務の展望と重要性を繰り返し説明し、その基礎を築く当面の業務が如何に大事であるかを認識させるなど士気高揚に努めている。


平成8年度業務計画(国内公安動向関係)
近畿公安調査局
1  調査関係
対象:(1)  政治・選挙関係
解明目標:本庁指定のとおり
備考:衆院小選挙区で日共が議席を獲得する可能性を秘めている選挙区の情勢把握に努める

(2)  経済・労働関係
本庁指定のとおり
労組については府段階における連合、全労連、全労協の組織と活動の実態把握に努める

(3)  大衆・市民運動関係
本庁指定のとおり
反核・平和運動並びに農民、婦人運動の解明に重点的に取り組む

(4)  法曹・救援、文化、教育関係
本庁指定のとおり
「オウム真理教」の解明(法曹)

2  獲得工作
政治・選挙関係
労組事務局関係者1人
政局関連情報の入手、及び衆院小選挙区における各種団体の取組の実態解明

経済・労働関係
労組事務局関係者1人
大阪府における労働、雇用問題、春闘・秋季年末闘争に対する労働団体の取組状況等の把握

大衆・市民運動関係
大衆・市民運動関係者2人
母親連絡会、全借連の組織と活動の解明
反代々木グループ1人
平和と社会主義全国委の組織と活動の解明

法曹・救援、文化、教育関係
大衆・市民運動経験者1人
国民救援会の組織と活動の実態
法曹関係者1人
「オウム真理教」の解明

別紙
局・事務所別重点解明目標
近畿公安調査局
注  ○印は、当該局・事務所が特に業務の推進を図るべき重点解明目標
1  国内公安動向
 (1) 政治・選挙関係
     次期衆議院議員総選挙(比例代表・小選挙区)及び衆参両議院補欠選挙の情勢並びに各種団体の取組の実態把握○

     政局関連情報の把握。特に、重要法案、政界再編、外交問題などをめぐる政党・諸団体の動向把握○

     各種世論調査結果や行政要求行動などにみられる有権者(特に無党派層)の政治意識、政治的関心事項及びこれに関連する諸動向の把握○

     各種地方選挙の情勢把握(首長選挙は県庁所在地の市長以上、議員選挙は都道府県議会以上、原発、基地問題などが争点となり注目される各種選挙)○

     都道府県議会における会派別勢力及び地方政界(議会・自治体)をめぐる諸動向の把握○

     地域政党(ローカル・パーティー)、ローカル・ネットワークの結成状況及びその活動の実態把握

     その他、過激な政治的主張を掲げたミニ政党の結成など公安動向に影響を与える可能性があるとみられる諸動向の把握

 (2) 経済・労働関係
     失業、就職難、雇用調整など雇用問題に対する連合、全労連、全労協及び傘下労組の動向把握○

     中間管理職、パート・派遣労働者、外国人労働者など未組織労働者の組織化をめぐる労働団体等の動向把握○

     国鉄闘争など各種労働争議の実態と支援団体の動向把握○

     春闘並びに秋季年末闘争に対する労働団体の取組状況の把握○

     消防職員の団結権をめぐる諸動向と消防職員組織化の実態把握。特に、連合、全労連、自治労、自治労連、全消協、消防職員懇談会の動向○

     地域労組の組織化の実態と活動の把握。特に、連合、全労連、旧総評地方組織、コミュニティユニオン全国ネットワークの動向○

     労働委員会をはじめ各種委員会、審議会等の委員の獲得に向けた労働団体の動向把握

     特殊法人の整理・統廃合をめぐる動向把握。特に、特殊法人労連、政労連の動向

     JR内労働組合の動向把握○

     銀行産業労働組合(銀産労)などをはじめとする銀行関係労組の住専問題や金融不安をめぐる特異動向の把握○

     地域における企業のリストラの実態と地域経済への影響並びに地元諸団体の対応状況等の把握

 (3) 大衆・市民運動関係
     沖縄米軍基地をめぐる反対運動及びその他の基地反対運動の動向把握。特に、地方自治体における日米地位協定見直しの意見書・決議の採択状況、沖縄県知事代理署名拒否訴訟への支援状況、沖縄米軍基地の本土への移転反対闘争、基地調査の状況など○

     自衛隊の海外派遣反対運動をめぐる動向把握。特に、防衛庁や出先機関等への要請行 動、日本平和大会、日米合同軍事演習反対闘争など○

     「核廃絶」及び「核実験全面禁止条約」の締結に向けた運動の実態把握。特に、条約締結に向けた国内外での働き掛けの状況、1996年原水禁世界大会など○

     原発反対運動の実態把握。特に、原発の新増設中止・既存原発の総点検実施要請行動、核燃料輸送反対闘争、原発建設の賛否を問う住民投票をめぐる動向など

     消費税率引き上げ反対運動の実態把握。特に、行政に対する抗議・要請行動、消費税反対署名活動など○

     市民オンブズマンの行政に対する告発運動の実態把握。特に、各都道府県オンブズマンの活動・自治体の対応、市民オンブズマンの今後の運動課題など○

     部落、婦人問題など人権擁護運動の実態把握。特に、部落問題基本法の制定運動、部落問題アピール署名運動、女性の地位向上を目指した活動など○

     生協、農民、公害・環境、宗教などの運動の実態把握。特に、産直運動、食品の安全行政の充実強化を求める運動、世界貿易機構(WTO)協定の改正・見直し問題、米の自給率向上運動、大気汚染・リゾート開発・ゴミ問題等への取組、社会的に問題となっている宗教団体・危険な主義を掲げるカルト集団の動向など○

下記団体の中央組織の解明(一部団体でも可)○
・  原水爆禁止日本協議会
・  原水爆禁止日本国民会議
・  安保破棄・諸要求貫徹中央実行委員会
・  基地対策全国連絡会
・  原発問題住民運動全国連絡センター
・  反原発運動全国連絡会
・  日本婦人団体連合会
・  日本生活協同組合連合会
・  生活クラブ事業連合生活協同組合連合会
・  みどりといのちの市民・農民連合
・  産直運動全国協議会
・  全国公害患者の会連合会
・  公害・地球環境問題懇談会
・  住民運動全国センター
・  市民活動を支える制度をつくる会
・  全国市民オンブズマン連絡会議
・  情報公開法を求める市民運動

 (4) 法曹・救援、文化、教育関係
     左翼法曹団体、弁護士会による司法改革や破防法反対の取組の実態把握○

     各種裁判支援闘争をめぐる国救、左翼法曹団体及び左翼系弁護士の動向把握○

     労働弁護団による労働争議や労働者の解雇・配転問題の取組の実態把握

     諸団体による死刑廃止や人権擁護の取組の実態把握○

     日共系文化諸団体による文教政策などに対する反対活動の実態把握○

     日本ジャーナリスト会議による言論・出版の自由などを求める活動の実態把握

     教育運動をめぐる日教組、全教など教職員団体の動向把握○

     いじめ・不登校問題、日の丸・君が代反対などに対する諸団体の動向○

下記団体の中央及び地方・支部組織の解明(一部団体でも可)○
・  自由法曹団
・  青年法律家協会
・  日本民主法律家協会
・  日本労働弁護団
・  社会文化法律センター
・  民主法律協会
・  日本国際法律家協会
・  日本反核法律家協会
・  日本国民救援会
・  治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟
・  アムネスティー・インターナショナル日本支部
・  文化団体連絡会議及び傘下団体
・  日本民主文学同盟
・  「葦牙」
・  日本科学者会議
・  日共学者・研究者後援会
・  日本ジャーナリスト会議
・  日本ペンクラブ
・  日本教職員組合
・  全日本教職員組合
・  日本高等学校教職員組合(日高教<左派>)
・  全国私立学校教職員組合連合(全国私教連)
・  教職員組合共同闘争推進連絡会(教組共闘)



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