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週刊ポスト3/3号
NEWS MAKERS 日本の新聞を読む
警察の「極端な秘密主義」を批判するくせに、一か月もの
「報道協定」の失態を隠した大新聞
同志社大学教授 浅野健一
「グリコ・森永事件」は2月13日午前零時に完全時効を迎えた。2月13日の
朝日新間朝刊は《「かい人21面相」は警察の威信をかけた捜査をかいくぐり、
社会の波間に消えた》と書き、作家の高村薫氏が「企業と犯人グループの間にあ
る個別の事情が引き起こした特殊な事件だと思う」とコメントしている。
一部の被害者は犯人を知っているのではないか。警察と報道機関に144通の挑
戦状や脅迫状と約600点もの慰留品を残しているのに、一人も逮捕できなかっ
たのはおかしい。
84年11月7日に起きたハウス食品工業の事件で、11月14日に滋賀県警の
パトカーが車に乗った犯人グループの一人とみられる男性を職務質問しながら取
り逃がした。
2月13日の毎日新聞社説は「極端な秘密主義」により、「犯人追跡中という情
報は大阪府警の幹部などごく一部が独占し、第一線の警官には何も知らせていな
かったための失態だった」と判断した。
しかし、大阪府警が、金銭受け渡しを犯人逮捕のチャンスにしようと、報道機関
に報道自粛を要請して、11月2日報道協定が結ばれたため、滋賀県審の警官
は、ハウス事件の展開も、報道協定の存在も知らなかったのだ。
この報道協定は何と、犯人逃走の後も続けられ、『噂の真相』が85年1月号
(84年12月11日発売)ですっぱ抜いて、やっと解除された。
報道協定の内容を同誌に流した犯人探しが行なわれ、当時共同通信記者で岡留安
則編集長と親しかった私も疑われた。
新聞各紙は時効記事で、書察が犯人グループに「けいさつのアホどもえ……」と
からかわれたことを指摘、讐奈の無念さを強調したが、新聞社が中心となって1
か月もの間、守り続けた「報道協定」という失態についてふれた記事は全くな
かった。