Tweet |
週刊ポスト2/25号
新潟「少女監禁事件」の解決を遅らせた「犯人は北朝鮮」の思い込み
新潟県柏崎市でSに監禁されていた少女が、9年ぶりに発見されたことを知った
新潟県警のある刑事の感想だ。「すっかり〃拉致〃だと思いこんでいた。県警全
体がそうだったのではないか」
この場合の〃拉致〃とは、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)による日本人拉致
事件を指している。この思い込みこそ、A子さんが自宅のある三条市から50キ
ロしか離れていない柏崎市に監禁されながら、まったく発見されずにきた原因と
考えられるのである。
新潟県では77年以後、横田めぐみちゃんをはじめ3人が北朝鮮に拉致されてお
り、「失踪事件というと、どうしても北朝鮮の関与を考えてしまう」(前出の刑
事)という土地柄なのである。実際、A子さんが誘拐された後、三条市の住人
が、「横田めぐみさん等被拉致日本人救出新潟の会」に対し、A子さんが北朝鮮
によって拉致された可能性について問い合わせていたことも分かった。
あるいは警察は、A子さんの両親や関係者に対し、「北朝鮮による拉致」と説明
していたのではなかったか。新潟県警に質すと、
「そうした取材についてはいっさいお答えできない」
というのみ。警察庁筋としかいえないが、こう語る。
「新潟県警が拉致事件と捉えていたなら、警察庁に報告されているはずだ。さら
に、捜査方法も通常の誘拐とは異なり、警備局があたることになる。具体的には
新潟港から北朝鮮に出港する万景峰号の過去の搭乗者名簿を調べるなどで、事件
発生当初はともかく、その後は周辺の捜索よりも、そうした捜査に力点が置かれ
た可能性がある」
警察庁は、本誌に対して「問題があったとすれば、事件の全容を解明した後にき
ちんと検証していきたい」と微妙な言い回しでコメントしている。
前述した「救出新潟の会」代表の小島晴則氏が語る。
「今回の事件は過去に性犯罪を犯した不審者への定期的な訪問を行なうなどして
いれば、もっと早く解決していたはずだ。仮に警察内部に『どうせ北朝鮮だから
解決は無理』などという気持ちがあったとすれば、怠慢というほかない。何でも
北朝鮮のせいにするのは、拉致問題の本質を見誤らせることにもなる」