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http://gendai.net/contents.asp?c=031&id=305
2000年2月2日 掲載
ほとんど不良債権といわれる
対インドネシア融資5兆円の怪
戦後賠償から始まるルーツ
「その件については“見ざる、聞かざる、言わざる”なんです
よ。なにしろ長い歴史がありますから。これまでの当行のトップた
ちもこの話については触れたくないというのが本音でして……」
こう語るのは大手銀行の元頭取。先週このコラムで対中国への邦
銀の焦げ付き融資について書いたが、対外債権の不良貸し付けは中
国ばかりではない。
「総額は10兆円とも15兆円ともいわれているのです。正確な数
字がつかめないのは銀行が日銀や大蔵省、金融監督庁に報告してい
ないからです。なかでも問題なのはインドネシアへの融資です。戦
後のインドネシアへの賠償問題も絡んで政治問題にもなったという
経緯があって、今日までそのことが尾を引いているんです」(元頭
取)
冒頭の“見ざる、聞かざる、言わざる”とはインドネシアに対す
る邦銀の融資のことなのだ。いったい邦銀はどんな融資をインドネ
シアに行って「約5兆円の不良債権を残した」(銀行関係者)の
か。
最大の原因はインドネシアの国営石油公社「プルタミナ」への融
資である。石油資源のない日本はこのプルタミナへの積極的な融資
の見返りに石油の輸入量を大幅に高めようと考えたのだ。
前出の元頭取が言う。
「プルタミナへの投融資はいわば国策だったのです。岸信介元首相
と当時のスカルノ大統領との間で話し合って、日本の銀行に対して
ほとんど強制的にプルタミナへ融資をしろということになったので
す。しかも、レートはフィックスレートでした。固定金利ですよ。
当時はフローティングの金利が主流なのに安い金利でしばられてい
ましたから、金利が上昇すればどんどん赤字になってしまう。大蔵
省に何とかしてくれないかと言っても、大蔵省は“この件は政界上
層部とインドネシアとの間での話になっているのだから大蔵省は立
ち入ることはできない”だった。それが今日まで続いているという
ことです」
約5兆円ともいわれる対インドネシアへの邦銀の融資はいったい
どうなるのか。対中国への融資の比ではない。こうしたケースが、
大手銀行の“地下”に埋まっていると思うと恐ろしい気がする。