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今月三十一日(日本時間二月一日)に打ち上げられる米スペースシャトル「エンデバー」に搭乗する日本人宇宙飛行士、毛利衛さん(51)がたずさわる地球の立体地図作製について、米航空宇宙局(NASA)のホームページが、科学研究、民生用に加え、軍事面での利用価値を強調していることが二十一日までにわかった。「平和の目的に限り」宇宙開発に取り組むとうたった日本の宇宙開発事業団法や宇宙開発政策大綱との整合性をめぐり微妙な問題をはらんでいるが、政府は「公開データの多様な利用形態の一つにたまたま軍事利用があるだけ」(科学技術庁)と問題視しない構えだ。
今回のミッションを主導するNASAジェット推進研究所のホームページは、データの使い道として、地震・火山研究や安全な航空路決定などと並べて軍事面の用途を掲げ、具体例として兵站(へいたん)、ミサイル誘導システム、戦場運営、戦術などへの応用を列挙している。
予算削減に苦しむNASAにとって、軍事上の有用性を宣伝することで、連邦議会や国民から支持を得たいという事情が背景にあるようだ。実際に、打ち上げ費用の一部を国防総省傘下の国立画像地図局が負担しており、国防総省は地域紛争への対策などで立体地図データを役立てる予定だ。
エンデバーは、十一日間にわたって地球を約百七十周する間、特殊レーダーを使って、水平方向に三十メートル、高さ方向に十六メートルの精度で全陸地の80%を覆う立体地図を作製。毛利さんはマストの全長が六十メートルにも及ぶ観測装置の動作監視などに従事するが、データはいずれ全面公開される。
毛利さんが、結果的に米国の“軍事活動”に関与することになったのは、宇宙の平和利用と軍事利用の線引きがもともとはっきりしないことも背景にある。衛星写真の販売を行っている米スペースイメージング社が最近公表した北朝鮮の弾道ミサイル「テポドン」発射基地の画像は、軍事情報源としても立派に通用する商業衛星の実力を証明したばかりだ。
(1月21日14:40)