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2005年日本国際博覧会(愛知万博)関連の新住宅市街地開発(新住)事業をめぐって、昨年11月、博覧会国際事務局(BIE)のフィリプソン議長(当時)らが通産省担当者に環境破壊を警告した極秘メモの会談内容の全文が20日、判明した。フ議長らは「非常に大規模な20世紀型の土地開発」「私が感じる嫌悪感と同じものを世界は感じている」と、極めて厳しい口調で計画を批判した。
フ議長は会談冒頭、「あなた方は地雷の上に乗っている。2〜3年後には爆発するぞ」との言葉で、環境団体との意思疎通を求めた。そして、「跡地利用は環境破壊になるのでは。この不動産開発は良いことか悪いことか」「山を切り崩し木を切り倒し、4〜5階建ての団地を建てる。このような計画こそ開発至上主義の産物。(自然の叡智という)博覧会のテーマの理念の対局にあるのでは」と迫った。極秘メモには、通産省担当者が「口を押さえ天井を見上げながら終始無言」と、苦慮する様子も記されている。
フ議長は「世界は、国際博覧会が環境破壊をしていると見ている。BIEの哲学、モラルに完全に反し、看過できない」と指摘。通産省担当者が「海上の森地域の開発をやめろということは、この博覧会プロジェクトは止まる」と説明すると、フ議長は「愛知博が中止になることはBIEにとって問題ない。2010年に声を挙げている国が多くある。なくなっても、そのうち何カ国は2005年にまわりたがるだろう」と反論した。
フ議長はなおも厳しい言葉で、「WWFのような世界的な環境団体が『愛知博に参加することは環境破壊の手助けをしていることだ』と主張を繰り広げたらどうする。1カ国も博覧会に参加しなくなるぞ。環境団体が愛知万博に資金援助する企業の製品の不買運動をすると言ったらどうするんだ」と警告した。
最後に、通産省などが今年5月末の計画登録を目指す点について、「今の計画で登録申請してきたら、『もう一度、ゆっくり検討し直し、書き直してくれ』と言うことになる。準備が整ってから登録をしなさい。資金計画にも疑問がある」と再考を促した。
BIEと通産省の協議メモを博覧会協会職員が作成していたことについて、協会の黒田真総長は20日、東京事務所で緊急会見し「あくまでの個人の備忘録で、内容を正確に表したものではない。会談内容はブレーンストーミングのようなものだった」と述べた。さらに「(公に)出てはいけないものが出てしまったことは遺憾で、協会責任者として深くおわびしたい」と語った。
[毎日新聞1月20日] ( 2000-01-20-21:43 )