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【ベルリン17日=三好範英】
ドイツの週刊誌「シュピーゲル」(十七日号)は、旧ソ連が一九五九年に数か月間ながら旧東独領内に中距離核ミサイルSS3を配備していた、と伝えた。これまで旧ソ連の海外への中距離核ミサイル配備は六二年のキューバ危機が最初とされており、事実とすれば三年早いことになる。
同誌によると、旧東独にあるマルチン・ルター大学の研究者が、関係者の証言や公開された旧ソ連の文書を調査した結果判明した。
当時のフルシチョフソ連共産党第一書記は、五五年三月の秘密命令で東独へのミサイル配備を指令。五九年四月、ベルリンの北方約八十キロのブランデンブルク州フュルステンベルクの軍事基地や、その南のフォーゲルザング基地に計十二基が空路で搬入、配備された。同五月には当時の東独駐留ソ連軍司令官から、フルシチョフ第一書記あてに配備完了が報告されたという。同ミサイルは千二百キロの射程を持ち、核弾頭は広島に投下された原爆の二十倍の破壊力があり、英国、フランスや、欧州に配備された米国の戦略施設を攻撃することが可能だった。
このミサイルの配備・管理は全てソ連党中央委員会直轄の第七十二工兵旅団が行い、八五年から八九年まで東独国防相だったハインツ・ケスラー氏ですら、配備の事実を知らなかったと証言している。
同誌はフルシチョフ第一書記が配備した理由は、当時の東西陣営間の緊張の焦点だったベルリン問題で、優位に立とうとしたことがあると指摘している。
しかし、ミサイルは数か月後に突然、撤去されてロシアのカリーニングラードに運ばれた。背景には、射程二千キロの核ミサイルが開発され、ソ連領内から同じ攻撃目標に届くようになり、前方配備の必要がなくなったため、と同誌は指摘している。
(1月17日19:42)