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“振り出し”京都小2殺害捜査迷走の裏
ビデオ店の顧客リスト1万人も…
不祥事を連発しているうちに、日本の警察は捜査能力まで失ってしまったらしい。京都市伏見区の市立日野小2年、中村俊希君(7)=写真右=殺害事件。当初は大量の遺留品や目撃証言から、犯人逮捕は時間の問題とみられていたが、犯人像が二転三転しているうちに、いつのまにか迷路に入り込んでしまった。「こんなはずじゃなかった」。漏れ伝わる捜査幹部のボヤキに、住民らは「第2、第3の事件が起こらなければいいが…」と不安を募らせるばかりだ。
「犯人は小学生高学年から中学生くらいの男児。捜査のターゲットは絞りつつある」
昨年12月21日の事件発生直後、会見に臨んだ京都府警の捜査幹部は自信たっぷりにこう発言していた。
しかし、年が明けてからは「すぐに逮捕できると思っていたのに…」と漏らし、捜査状況については口を固く閉ざすようになっている。
理由はある。府警は犯行を目撃していた児童らの「お兄ちゃんぐらいの年」という証言をもとに、早い段階で、現場近くに住む“犯人らしき”少年を割り出していたのだ。
「聞き込み捜査の結果、行動不審な少年が浮かび、幹部のゴーサインのもと、身辺捜査が集中的に続けられました。マスコミも捜査の動きに感づいて、少年の小学校時代の作文を集めるなど一時緊迫しました」と捜査関係者。
年末にはこの少年の事情聴取に踏みきったものの、遺留品との関連や当日のアリバイなどを総合的に検討した結果、最終的に年明けに「シロ」と判断。正月返上で行われた捜査は一転、振り出しに戻ってしまった。
別の捜査関係者が内情を明かす。「捜査が少年に集中していたので、遺留品の捜査はそれほど進んでいなかった。少年の件がスベったこともあって、捜査幹部の怒りの矛先は、遺留品捜査担当の捜査員に向かいましたが、当然ながら捜査員もおもしろくない。このころから捜査本部がぎくしゃくし始め、捜査も迷走を始めたんです」
早い段階での思い込み捜査がそもそもの迷走の原因。そして、これに追い打ちをかけたのが、その後の遺留品の捜査で浮上した「防犯ビデオの男」や「自転車を購入した男」の存在だ。
犯人は犯行現場の校庭や近くの児童公園に11点にも及ぶ遺留品を残していたが、同種のナイフと園芸用殺虫剤、手袋の3点は京都府宇治市内のホームセンター、逃走用の自転車は大阪府枚方市内の自転車店で、それぞれ購入していた。
ところが、ホームセンターの防犯ビデオに写っていた男は「成人にも見える男」、自転車の男も「大学生ふうの男」で、当初の犯人像からは大幅な食い違いをみせたのだ。
地元記者もいう。「その後、金づちと缶入り塗料は京都府城陽市のホームセンターで購入されたこともわかり、犯人の行動範囲や購入先の分散、犯行声明文を準備した周到さから、府警は犯人像を20歳前後まで軌道修正しています。捜査範囲も府南部から大阪府枚方市まで広げていますが、遺留品の大半は大量生産品で、犯人に直結できるのは極めて困難な情勢です」
そんな状況の中、府警が注目を寄せるのが、自転車が購入した男が防犯登録の際、宇治市内のビデオレンタル店を住所を記入した点だ。
「男は記入の際、いったん自転車店を出ていますが、捜査員の間では、所持していたビデオ店の会員証を参考にして書いた可能性が強いとの見方が出ています。このため、府警はビデオ店の顧客リストの分析を進めています。ですが、こちらの数もざっと1万人。先が思いやられます」(別の地元記者)
犯人が未成年の可能性もあるため、ビデオの公開に踏みきれないこともあって、いまだ突破口を見いだせない状況。こうなったら、「後で手紙をかきます」と“約束”した「てるくはのる」の声明文を信じるしかなさそうだ。
★“てるくはのる”の意味、韓国のHPに関係か
京都の小2男児刺殺事件で犯行声明に残された謎の言葉“てるくはのる”。その解釈を巡り、犯行直後から、日本中でさまざまな推理が行われてきた。
最近もインターネット上で、韓国のホームページ(HP)に関係があるという“新説”が流布されるなどしたが、結局、いまだ決定的な“暗号解読”はなされていない。
犯人が“私を識別する記号”として残した“てるくはのる”の6文字。
犯行直後、単純に言葉を並びかえ、くのてるはる、と読んだ人からの電話が京都市内の久野さん宅に殺到。マンガ「金田一少年の事件簿」に登場する暗号解読法から、キーボードをひらがな読みで押すとW.hfk.となるため、犯人のW(頭文字)が日野、伏見区、京都にいると解釈する声もあった。
このほか、ローマ字表記したアルファベットを並びかえたり、50音を1から50の数字に置き換えて、電話番号とする見方など多くの方法が試された。
最近では、ネット上で「てるくはのる.com」というHPがあるという怪しい噂が広まった。“はのる”が、韓国語では「一つの魂」といった意味を持ち「hanol.com」というHPに注目が集まったが、“てるく”には韓国語の意味がなく、HPの内容からも事件との接点が浮かび上がることはなかった。