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12/24 17:28 MI: Y2Kシフトは完了だが・・・ 「その日」待つ通信事業者
毎日インターネット情報
コンピューターの西暦2000年問題の危険日である12月31日から1月1日の「年越し」
まであと10日。事故発生時に影響が大きいとして政府が十分な対策をとるべき民間重
要5分野の1つに指定した情報通信業界は、これまでどんな準備をし、「その日」をど
う迎えようとしているのか。大手各社の対応態勢を報告する。
■■「大きな問題はない」
NTTグループや日本テレコム、第二電電(DDI)、KDDなど主要通信業者は数年前か
ら2000年問題に取り組み始めた。いずれも「重要な経営上の問題」として、社長、役
員などを責任者として指名。今年の9月末ごろまでには、業務の中心となる通信設備
と、利用者への課金システムなどを含む社内基幹システムに関し、ソフトウエアの修
正やハードウエアの入れ替えなどの対応を終えたとしている。
また、各社とも、年末年始をはさんだ時期を対象に「危機管理計画」を策定。さま
ざまなシナリオを想定して、現場からの情報収集や、発生した不具合が2000年問題か
どうかの切り分け、顧客への情報提供や政府への報告に関するシミュレーションを、
秋ごろから今月にかけ、場合によっては複数回実施している。いずれもさして大きな
問題もなく終了しているという。
通信事業者148社が加盟する電気通信事業者協会(TCA、会長:奥山雄材DDI社長)
も、6月から9月にかけ、電話、ISDN、データ通信用の専用線サービスに関し、加盟65
社(専用線は16社)間の相互接続試験を行った。日付が2001年1月1日に変わる時点で
問題なく通信が行えることを確認した、としている。
こうした準備を終えた現在、主要通信事業者の中では「国内の通信に関する限り、
大きな問題は起こらないのではないか」(日本テレコムの2000年問題対策プロジェク
ト担当、大野泰典課長代理)といった見方が大勢を占めている。NTT移動通信網(ドコ
モ)の廣上誠情報システム部基盤企画担当主幹技師は、「早く来
い来い2000年、というところです」との"強気"も見せる。
■■オフィスで年越し9500人
とはいえ、100%何も起こらないと断言することも無理だ。不測の事態に対応するた
め、各社とも通常時の2倍から3倍程度のスタッフを動員、年越し時のシステム監視や
通信テストの実施、顧客からの問い合わせに対応させる計画だ。社内での連絡網も、
電話、ファクス、携帯電話から電子メール、衛星携帯電話まで2重、3重の経路を準
備。ドコモでは31日の夜から1日の夕方まで、本社と各支店、NTTグループ会社などを
結んで電話会議を継続して実施。リアルタイムでの情報収集にあたるという。TCAによ
れば、加盟社の1日午前0時時点での会社待機者は約9500人。1日から3日までの延べ人
数は2万7400人に上る。
NTTグループでは、持ち株会社、東西地域会社とNTTコミュニケーションズ(NTTコ
ム)の4社で、約4400人が年越しする。この他、通信ネットワークなどの制御ソフトウ
エアを担当するNTTコミニュケーションウェア(コムウェア)、電話局舎の維持管理な
どを受け持つNTTファシリティーズでも約3600人を動員。持ち株会社の宮津純一郎社長
を本部長とする「2000年問題特別対策本部」の指揮の下で対応する。
ユーザー向けには、フリーダイヤル(0120-755666)を開設。29日、30日の午前9
時〜午後6時までと、31日の午前9時〜午後7時まで問い合わせに答える。これ以外の時
間帯は、通常の故障受け付け電話番号である「113」の利用を呼び掛けている。事故発
生時は、ホームページで状況を報告するほか、報道機関にも随時リリースを出し、所
管官庁の郵政省への報告や国際電気通信連合(ITU)への情報提供なども行うという。
また、日付が変った時点で通信接続の確認試験も実施する。
動員規模に差はあれ、他の大手も同様の対応策で「その日」に臨む。準備万端整っ
た、といったところだが、それでも何が起こるのかわからないのが2000年問題。で
は、通信事業者にとっていま、何が一番心配なのか。
■■2000年問題以外が問題?
各社の担当者が口にするのが「おめでとうコール」や通信網が機能しているかどう
かをチェックするための「確認コール」などによって通話量が一時的に増加すること
で、電話がかかりにくくなり、これを「2000年問題」と取り違えられること。
「おめでとうコール」関しては、郵政省がホームページで不急不要の通話について
は自粛を呼びかけているが、「年末年始に通話が増えるのは万国共通」(KDDネット
ワーク統括本部ネットワーク企画室交換網企画グループの木暮恒夫課長)。傘下に携
帯電話のセルラーグループ、PHSのDDIポケットなどを持つDDIの情報システム部課長
代理、津嶋一弘氏も「移動体通信では、年末年始のイベントなどで人が集まる場所で
の通話の輻そうは例年起こっているが、Y2K問題と間違われるかもしれないのが心配」
と言う。
ドコモの佐藤信行通信システム部災害対策部門企画調整担当課長によれば、同社の
場合、おめでとうコールにより通信量は通常の数倍に増加、ネットワークの容量を越
えてしまうという。ただ、1年に1度だけ、1月1日の午前0時前後から30分ほど起こる現
象でもあり、平時の容量過剰を避ける意味でも、ばく大な費用のかかるピーク対応の
ための施設増強は特に行っていないとのこと。
通話の集中以外では、2000年問題とは直接関連のない「事故」が、たまたま年越し
のタイミングで起こることによる「逆宣伝効果」にも神経をとがらせているようだ。
「(関係がないと分かっても)結局は2000年問題という扱われ方をしてしまうんで
しょうね」と半ばあきらめ顔の担当者もいた。
問題が発生した場合、全国の注目を浴びている状況下では、できるだけ早く原因の
特定を行うことが求められる。しかし、「2000年問題だと教えてくれるアラームはな
い」(伊藤真一NTTコム技術部担当課長)。問題の切り分けと、2000年問題かどうかの
確定は難しいようだ。「2000年問題かどうかは、故障復旧のプロ
セスで分かるものではないか。起こっている最中に短時間で特定するのは現場でも難
しいだろう。外部にどのように情報提供していくかも難しいところだと思う」(DDI広
報部担当課長の大黒晃氏)。
また、電力各社は太鼓判を押しているとはいえ、通信維持の要となる電力供給の確
保も関心の的のようだ。日本テレ
コムでは、電力を含めた主要インフラに問題はない
だろうとの見通しながらも、「我々のネットワークに問題がなくとも、電力が落ちれ
ばサービス提供はできなくなる」として、自家発電で24時間は持ち
こたえられる体制を整備。他社でも同様の準備を行っている。
あとはただ「本番」を待つだけ、といった感のある通信業界。新ミレニアムの最初
の「大試練」の結末は、果たして吉と凶のどちらと出るか・・・。
<通信各社などのコンピューター西暦2000年問題関連ホームページ>
[NTT]
http://www.ntt.co.jp/y2k/index.html
[NTT東日本]
http://www.ntt-east.co.jp/aboutus/disclosure/y2k/
[NTT西日本]
http://www.ntt-west.co.jp/y2k/index.html
[NTTコミュニケーションズ]
http://www.ntt-c.co.jp/y2k/index.html
[NTTドコモ]
http://www.nttdocomo.co.jp/y2k/index.html
[日本テレコム]
http://www.japan-telecom.co.jp/y2k/ja/y2k_index.html
[DDI]
http://www.ddi.co.jp/y2k/index.html
[KDD]
http://www.kdd.co.jp/y2k/index.html
[郵政省]
http://www.mpt.go.jp/whatsnew/y2000/index.html
[TCA]
http://www.tca.or.jp/japan/y2k/index.html
[首相官邸]
http://www.kantei.go.jp/jp/pc2000/index.html
(和田 浩明)
[Mainichi Daily Mail Internet/ 1999年12月24日]
[1999-12-24-17:28]