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富山県内の保育所、小・中学校でアタマジラミの感染が増勢傾向にある。今年度の調査 で保育所で三人、小学校で三十人、中学校で十一人と、計四十四人の感染が確認された。 七月に最初の感染の報告があり、周辺の保育所、小・中学校を調査して把握された数字で ある。
増勢の要因の一つに、「戦後の副産物」だったアタマジラミを知らない世代の親が増え ていることが指摘されている。であれば、感染の早期発見、早期対応も必要だが、それよ りも先に家庭にアタマジラミについての知識と有効薬剤の紹介など事前啓発が求められる 。県と県教委に、保護者家庭に向けた常日ごろからの啓発を促したい。
富山県教委によると、保育所、小・中学校でのアタマジラミの感染発生は、平成六年に 八十一人を記録したあと、八年にはゼロとほぼ沈静化していた。ところが、昨年四十七人 を数えて増勢に転じた。
そもそも、アタマジラミは戦中、戦後のまだ衛生状態が十分でなかったころに子供たち にまん延したが、有機塩素剤(DDT、BHC)の体や服への散布により、ほとんど消え たと思われていた。その後、DDT、BHCに有害性が認められ使用が禁止されたため” 復活”、昭和五十五年当時、大流行したものの、昭和五十六年に有効な薬剤「スミスリン 」が市販されるようになり、以降、急激に減ってきていた。
ここに来ての増勢について、富山県教委は親の世代がアタマジラミを知らず、発見が遅 れることも原因ではと推測している。親が昭和四十年前後の生まれなら、アタマジラミが ”消えた”と思われた時代だろう。頭髪の根元に付着している卵に驚いたり、かゆみを訴 える子供を病院に連れていってようやく感染に気づくというケースが多いのもうなずける 。
教育現場だけに、子供から子供へ集団感染が懸念され、早期発見、早期対応が求められ るのはもちろんである。放置すれば皮膚炎になったり、脱毛の原因にもなる。事後対応の 学校の更衣室など施設消毒ももちろん必要だが、まずアタマジラミについての予備知識、 有効な薬剤などについて常日ごろから親の側に知らせておく必要がある。
1999年12月12日/北國新聞 社説